こんにちは
ようやく五臓が終わって、ホッと一息。 蔵象のキモは、五臓ですからね。 後は、六腑も奇恒の腑も、五臓とのつながりで成り立ちますから。 一から学ぶ東洋医学シリーズでは五臓を先にまとめましたけど、『新版 東洋医学概論』では、腑も奇恒の腑も、五臓それぞれのところに割り振られています。
六腑を一気に…とも思ったけど、さすがに長くなりすぎるので、分けることにします。 五行順に行けば、胆・小腸と三焦・胃・大腸・膀胱ですが、内容的なまとまりを考えて、胆・胃・小腸と大腸・膀胱・三焦の順に行きま~す。
胆とは?
胆は、肝と表裏関係にあり、五行の木に属す腑とされていますが、実際は奇恒の腑です。
蔵象とは?にあったように、腑は「伝化して蔵せず」と言われる中空器官。 ところが、胆は、形は袋状で、確かに中空だけど、精を蔵していて、しかも水穀(飲食物)の伝化(消化・吸収・排泄)に、直接的には関わってはいない。 胃や小腸・大腸とは、明らかに一線を画しています。
胆は、胆汁を分泌して、水穀の伝化を助けています。 だからこそ、六腑のひとつとされました。 ただし、胆汁は、精を含むので、精汁とも呼ばれます。 で、胆には精汁がつまっているから、「精気を蔵す」とされて、奇恒の腑となるんですね。
胆の生理と病理
(1) 胆汁の貯蔵と分泌
胆汁は、脾胃の運化を助ける物質。 肝で化生されて、胆に貯蔵され、必要に応じて小腸へと分泌されます。 胆汁の化生と分泌が、肝の疏泄によって制御・調節されていることは、すでに肝の生理と病理でお伝えしましたね。
そうそう、そのときに、胆汁は「肝気の余った気の集まり」と書いてました。 『全訳 中医基礎理論』に、そう書かれてたから。 それで、精を含むとされるのは、どうしてなんでしょうね? 考えてみました。
簡単に言えば、気は精から化生するものだからってことでしょうか。 精は精微な物質で、生理物質に変化しますが、消えてしまうワケじゃない。 言ってみれば、形を変えるだけ。 だから、気の集まりならば、精を含んでいると考えられます。
あるいは、肝気は肝に配分された原気だけど、肝に配分された後天の精からも化生する。 生理物質は、One for all, all for one で、互いに化生し合いますからね。 で、肝気が胆汁に変わるときに、後天の精も混入される…なんてこともあるかも?
気の集まりで精を含むとされる理由はともかく、胆汁には精が含まれていて、精汁とも呼ばれ、精汁に満たされている胆は、奇恒の腑なんです。 だいじなのは、そこ。 もうひとつだいじなのは、胆汁の化生と分泌は、肝の疏泄がコントロールしていること。
肝の疏泄失調が胆に及ぶと、胆汁の分泌が悪くなりますから、脾胃の運化に影響して、↓下記のような症状が出ます。
・ 胸脇苦満(きょうきょうくまん: 側胸部が脹満して苦しい)
・ 口苦(胆汁が上逆して口が苦い)、ひどければ黄疸
・ 食欲不振、腹部膨満感、大便溏薄
(2) 決断を主る
胆汁には精が含まれていて、精神活動にも関与していると考えられています。 担当するのは「決断」。
『黄帝内経 素問 霊蘭秘典論篇』には、「肝は将軍の官、謀慮これより出づ。 胆は中正の官、決断これより出づ。」とあります。 肝は将軍だから、考えをめぐらせ、様々な計画を立てる。 胆は中立・公正で、決断を下すことに長けている。 そうして、正常な精神活動が営まれる。
古来、決断力があって落ち着いた人を「キモが太い」とか「キモっ玉がすわっている」とか言うのは、ここから来ているんですね。 キモは、肝とも書きますが、本来は胆なんです。 したがって、胆が弱ると、精神的な落ち着きが失われ、決断力が鈍ります。
胆の病証
胆の機能には肝の疏泄が深く関わっていますし、胆は肝と経脈上の表裏関係にもありますから、胆の病証には、胆単体のものは少なく、肝の病証からの波及、特に肝の熱によるものがほとんどです。
肝胆湿熱証
(a) 病態
湿熱邪が肝胆に阻滞し、肝の疏泄と胆汁分泌が悪化した状態。
(b) 原因
・ 外感湿熱の邪が肝胆に侵入。
・ 脾気虚によって生じた痰湿が化熱して、脾胃湿熱となり、肝胆に波及。
・ 甘いものやあぶらっこいものの過食によって生じた湿熱が、肝胆に波及。
(c) 症状
・ 肝胆の気機阻滞 → 胸脇苦満または脹痛・熱痛
・ 胆汁の上逆 → 口苦、黄疸
・ 湿熱 → 多汗、身熱
・ 脾胃の不調 → 食欲不振、腹部膨満感、大便溏薄、悪心、嘔吐
・ 舌脈所見: 舌質紅、舌苔黄膩、脈弦滑数
一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。
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