一から学ぶ東洋医学 No.27 生理物質と神(8) 陰陽の生理と病理 | 春月の『ちょこっと健康術』

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こんにちは ニコニコ

 

まずはご報告。 神の生理と病理に、以前使った図表を再掲しました。 一目瞭然、わかりやすくなったのではないかと思います。 

 

さて、今回は陰陽の生理と病理。 人体の陰陽について、すでに陰陽学説シリーズの医学への応用で取り上げていて、終わってるんじゃないの…? と思いきや、それじゃ情報が足りなかったんです。 しかも、気の病理で、陽虚は取り上げましたけど、陰虚はまだだし…。 ということで、復習も兼ねて、改めてまとめておきますね。

 

1 陰陽の生理

 

人体の生理活動は、臓腑や生理物質などの働きで成り立っていますが、正常に維持されるかどうかは、陰陽のバランスにかかっています。

 

動き過ぎてもNG、静か過ぎてもNG。 熱が高くても、冷え過ぎてもNG。 強過ぎても、逆に弱過ぎてもNG。 人間、生きていますから、多少どちらかにぶれることは日常。 ぶれ過ぎないことが大切なんです。 これぞホメオスタシス、生体の恒常性。

 

陰陽の分類にあった表から、陽の特徴を思い出してください。 陽は、上へ、外へ、活発に、力強く、イケイケドンドン。 一見すると、それで何が悪いの?という感じですが、行きっぱなしじゃ、帰って来れない。 陽だけでは、悪いほうへも行きっぱなしになっちゃうもの。

 

陰は、下へ、内へ、静かに、落ち着いて動かず、ゆったりゆっくり。 でも、動き出さなければ、何も起こらないから、陰だけというのも困る。 陰陽があって、動的平衡が保たれるのがいいんです。

 

余談ですが、成長期の子どもは、陽がやや強め。 それは、身体の成長にエネルギーがたくさん必要だから。 おとなと同じバランスでは、成長が遅れてしまうからです。 ちょっとしたことで、熱を出しやすいのも、そのせいなんですけどね。

 

(1) 陽の生理

人体の生理機能における陽は、陽気(気)による推動作用や温煦作用の現れ

・ 陰が強くなり過ぎないように制御する。

・ 陰液(精・血・津液)を推動する。

・ 身体を温めて、臓腑や生理物質が機能しやすい状態をつくる。

 

(2) 陰の生理

人体の生理機能における陰は、陰液(精・血・津液)による滋潤・滋養・寧静作用の現れ

・ 陽が強くなり過ぎないように制御する。

・ 陽気(気)を滋養する。

・ 身体の熱を冷まし、臓腑や生理物質の機能亢進を抑え、安静を取り戻す。

 

2 陰陽の病理

 

(1) 陽盛(実熱)証 ねつ

 

(a) 病態: 陽の偏盛によって、熱が強くなった状態(実熱)。

 

(b) 原因

・ 暑い居住環境や職場環境などで、炎熱性の外邪(暑邪、火邪)を感受した。

・ 温熱性の飲食物(熱いもの、辛いもの)を過食した。

・ 五志化火(強烈な精神刺激による激しい感情の変化)。

 

(c) 症状

・ 体内の熱が強いため、全身性の発熱(身熱)、顔面紅潮となり、冷たいものを飲みたがる(喜冷飲)。 

・ 津液が損傷され、のどや口が渇き(口渇)、尿の量が減少して色が濃くなり(小便短赤)、便が硬く乾燥して出にくくなる(便秘)。

・ 強い熱が一気に燃え上がって、心神に影響すると、モヤモヤ悶々と煩躁して、多言となる。

・ 舌質紅、舌苔黄、脈数となる。

 

舌質というのは舌本体の色で、正常であれば淡紅。 舌苔は舌表面にくっついている苔のようなもので、正常であれば薄白です。 舌所見については、四診の望診(西洋医学の視診)で詳しくやりますが、舌質紅・舌苔黄とくれば、必ず熱証なので、この際覚えておいてください。

 

脈数の数は「さく」と読み、速い脈のことです。 熱によって脈の推動が亢進するため、通常よりも脈が速くなるんです。 脈診については、四診の切診(西洋医学の触診)で詳しくやりますが、脈数も熱証の特徴なので、これも覚えておきましょう。

 

(2) 陰虚(虚熱)証 きょねつ

 

(a) 病態: 陰液(血・津液・精)が減少して、陰の機能が低下し、虚熱が出た状態(陰の偏衰)。

 

(b) 原因

・ 大病や久病(長患い)、過労などで、陰液が消耗した。

・ 暑い場所に長居したり、温燥の薬剤を飲み過ぎたりして、陰液を損傷した。

・ 高齢で臓腑機能が低下したために、陰液を十分につくれない。

 

(c) 症状

・ 体内の熱はさほど強くないので、熱は身体の上部や体表、四肢末端など部分的に生じ、ほてり、のぼせ、手足心熱(しゅそくしんねつ)、五心煩熱(ごしんはんねつ)、頬部紅潮などがみられる。

・ 1日のうちで、疲れの出やすい夕方以降に、発熱の程度が高まる(夜間潮熱)。

・ 睡眠時の虚熱が強まり、寝汗(盗汗)を生じる。

・ 陰液の不足によって、滋養が低下し、身体が痩せる(消痩)。

・ 舌質紅、舌苔少、脈細数。

 

手足心熱は、手心(手掌)と足心(土踏まず)の熱。 五心煩熱は、手足心熱に、胸部の熱による不快感が加わったもの。 どちらも「心」が入っていますが、これは五臓の心ではなくて、手・足・体幹の中心部という意味です。

 

潮熱は、潮の満ち引きのように、時間帯によって熱が強まったり弱まったりする状態。 潮熱は、陰虚によるもの以外にもありますが、それは四診の問診でお届けします。

 

睡眠時になぜ虚熱が強まるのか? それは、睡眠時には、覚醒時よりも多くの陰液が臓腑におさまって、臓腑を滋養するようになっているからなんです。

 

寝ている間、肉体的な活動はありませんから、骨、関節、筋や肌肉への滋養は、ほとんど必要ありませんよね。 だから、臓腑へと集中する。 その分、全身の陽を抑制する機能は、やや弱まっています。

 

正常な状態でそうですから、陰虚があれば、睡眠時の虚熱は、覚醒時よりもさらに高くなることがわかりますね? それで、寝汗をかく。 東洋医学用語では、盗汗(とうかん)といいます。

 

舌脈所見で、陽盛(実熱)と異なるのは、舌苔が少となっている点と、脈に細がついている点。 陰液の不足は、滋養の不足になるので、苔は少なくなるのです。 また、苔が黄色くなるほど、陰虚の熱は強くないとも言えます。 脈細は、文字通り細くて、脈を打つ幅が小さい脈。 血虚でもみられます。 陰虚では、数もくっついて、細数となるのです。

 

(3) 陽虚(虚寒)証 きょかん

 

(a) 病態: 陽気(気)が減少して、陽の機能が低下し、虚寒が生じた状態(陽の偏衰)。

 

(b) 原因

・ 大病や久病(長患い)、過労などで、気が消耗している。

・ 寒い場所に長居したり、苦寒清涼の薬剤を飲み過ぎたりして、気の温煦作用が低下している。

・ 高齢で腎陽(命門の火)が弱ったために、温煦できない。

 

(c) 症状

・ 気虚が進行したものなので、自汗、易疲労、倦怠感、無力感、易感冒、息切れなどの気虚症状がみられる。

・ 温煦作用が低下しているので、寒がり(畏寒)、四肢の冷え、顔面蒼白、腹痛、大便溏薄(とうはく)、小便清長、脈遅などの寒証症状を伴う。

 

陽虚の冷えはさほど強くないので、全身に感じるとしても、畏寒(いかん)という程度。 厚着すれば何とかなります。 顔面蒼白や腹痛は、みられないこともあるし、あったとしてもそんなに強くありません。

 

大便溏薄は、略して便溏(べんとう)と言うこともあります。 溏は泥状とか、半流動的なものという意味。 なので、大便溏薄は軟便ってこと。 冷えると、便に含まれる水分の吸収が悪くなるので、便が緩くなるんです。 小便清長は、尿の色が薄くて、量が多いこと。

 

脈遅(ち)というのは、文字通り遅い脈のこと。 気の推動作用が低下するため、気虚では脈が弱くなるんですが、冷えが加わると血が凝滞するので、遅くなります。

 

(4) 陰盛(実寒)証 かん

 

(a) 病態: 陰の偏盛によって、寒が強くなった状態。

 

(b) 原因

・ 寒い居住環境や職場環境、長時間水に浸かるなどで、寒涼性の外邪(寒邪)を感受した。

・ 寒涼性の飲食物(冷たいもの、生もの)を過食して、内生の寒邪が生じた。

 

(c) 症状

・ 陽気が損傷されるため、悪寒、四肢の冷え、顔面蒼白、大便溏薄、小便清長などが起こる。

・ 外感(外邪の感受)にしろ、内生にしろ、寒邪によって生理物質の循環が妨げられ、滞りが生じた場所に疼痛が起こる。

・ 脈緊または脈遅となる。

 

陽虚(虚寒)では、畏寒、つまり寒がるという程度でしたが、陰盛(実寒)では、厚着したくらいではすまないくらい、冷えが強くなります。 当然、四肢の冷えや顔面蒼白など、他の冷え症状も強いものとなるのは明白ですね。

 

血脈中の血の凝滞なら、陽虚と同様に、脈遅(ち)となりますが、寒邪には、ものを凝滞させる性質のほかに、収縮させる性質もあって、血脈が収縮すると、硬く緊張したものになります。

 

寒熱の病的な状態を、目で見える形にするとすれば、陰陽のバランスが取れているときは陰陽バランスとして、陽の偏盛による実熱は陽の偏盛、陰の偏衰による虚熱は陰の偏衰、陽の偏衰による虚寒は陽の偏衰、陰の偏盛による実寒は陰の偏盛となります。 あくまでもイメージであって、実際にはこういう単純なものじゃありませんけどね。

 

一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。

 

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