ペテンシー登場の法廷パート開始です。

■Trial, Part 1(法廷【その1】)

Juror No. 3
Oh...well I rather like how you're wearing your hat.
I think the ruthless look is very fetching, actually...

3ゴウ
おお‥‥ボクは、そんな貴方の
カカトでコロされてみたい‥‥


お隣の2ゴウさんのセリフ「帽子の角度が決まらない日はよりザンコクですのよ!」の後、3ゴウ氏が上のように、何故かマゾい発言をするのですが、英語版は、
Juror No. 3「ああ‥‥貴方の帽子をかぶっている姿は素敵だ。
非情な表情がとても魅力的だと思うんだけどな‥‥」
と、違う方向で危険な発言をしています。

Gregson
Mr Shamspeare collapsed in his room as a result of
poisonin' by strychnine.

グレグソン
被害者は、猛毒・ストリキニーネによる
中毒を起こし、自室に倒れました。


ストリキニーネ:strychnine
実在のストリキニーネ(strychnine)の綴りそのままです。英語だと「ストリックニン」みたいな発音です。
「ストリキニーネ」という表記・発音は、オランダ語からだそうです。
ストリキニーネ - Wikipedia

Soseki
Argh! NO! We weren't friends!
Not at all! NOT AT ALL!
Never...ever!

ソーセキ
親しくはないッ! ええ、もう。
決して、親しくはないですぞッ!
Never, and everッ!


漱石先生に学ぶ、英語での否定の仕方。
日本語版の「Never, and everッ!」は、英語版でもほぼそのままです。

Soseki
So we battled it out! In a Greco-Roman style, naturally.

ソーセキ
戦ってみたのである。‥‥もちろん、
グレコローマンの試合形式(スタイル)でッ!


ツッコミどころしかない、ペテンシーと漱石さんのレスリング。
グレコローマンスタイル(Greco-Roman style)とは - コトバンク
グレコローマンスタイル - 語源由来辞典
グレコローマンスタイルのレスリングはちょうど、19世紀のヨーロッパで人気のスポーツだったそうです。

Soseki
In my great homeland — the Empire of Japan — we have a
saying:
'Drink tea while it's hot!'

ソーセキ
我が祖国・日本には、
こんなコトワザがあるんです。
『茶はアツいうちに飲め』!


大切なことなのでメモ。

Van Zieks
'There is nothing more refreshing than cold tea.'

バンジークス
『冷えたお茶にこそ、女神は微笑む』


『茶はアツいうちに飲め』に対して、Van Zieks『冷えたお茶ほど爽やかなものはない』
英語圏のことわざなのか? これ。w
(検索しても出てこないから、バンジークスの創作かな‥‥)

Shamspeare
William Shamspeare, My Lord. Alas, 'twas I, undone by
these bitter events. I...am the victim!

ペテンシー
‥‥ウイリアム・ペテンシー。
この事件の《被害者》でござい。


ペテンシーこと、Shamspeare登場。
前に書きましたが、ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)の作品は16世紀から17世紀の、古い英語で書かれています。
英語版ではShamspeareが、この古い英語を混ぜて喋ることがあり、解読が大変‥‥w
上だと、「Alas」は古語で悲嘆の「ああ」、「'twas」は古語でit wasの短縮形、「undone」は堅めの表現で「破滅した、没落した」のこと。

Metermann
Oh, um...the name's Metermann.
Adron B. Metermann.
I work for the Altamont Gas Company, East End branch
office.

ミターマン
ええ‥‥あっしは、その。
デカーゴ・ミターマンと言います。
職業は《アルタモント瓦斯(ガス)会社》
イーストエンド営業所に勤務しとります。


デカーゴ・ミターマンことAdron B. Metermannも登場。
こっちはコックニーで喋りますが、さほど頻繁ではない(Gregsonと同じくらいかな?)ようで、ingがin'になる程度です。
「Altamont(アルタモント)」は原作ホームズから。短編集第4作「His Last Bow(シャーロック・ホームズ最後の挨拶)」に収録された短編「His Last Bow(最後の挨拶)」の登場人物の名前です。

Shamspeare
Behold, you have only to rearrange the letter of my
name to see that 'me's a seraph'! An angel, indeed!

ペテンシー
ペテンシーの“テンシー”は、
『天使』が宿る、そのあかし。


英語版ではどうなるのかな? と思っていた「ぺ天使」ネタですが、
Shamspeare「おお見よ、我が名前の文字を並べ替えるだけで、『我は天使』となるのです!」
と言っています。

Shamspeare
↓アルファベットを入れ替える
meSaseraph

me's a seraph(私は天使だ)
※seraphは熾天使のこと 熾天使 - Wikipedia

アナグラムで「天使」にしちゃいました。w
ローカライズ担当の方、すごいなぁ‥‥

Ryunosuke
(They're actually taking this 'seraph' anagram idea
seriously...?)

ナルホド
(‥‥陪審は、あの“天使”の
 味方、というワケか‥‥)


Ryunosuke(‥‥陪審はみんな、あの“天使”のアナグラムをホンキにしているのか?)
そりゃ、Ryunosukeとしてはそうツッコミたくもなりますよね。

Van Zieks
How many other short little round-backed Nipponese
with a moustache do you think there are in London?!

バンジークス
背が低く猫背でヒゲの東洋人だぞ。
ほぼ断言しているではないかッ!


Van Zieks「背が低く猫背でヒゲの日本人が倫敦に何人居ると思っているッ!」
日系イギリス人 - Wikipedia
>最初の移住は、19世紀後半に教育を受けた自費留学の日本人教授や生徒、その召使いの到着とともに始まった。1884年には約264人がイギリスに住み、その大半は官吏と学生であった。
1884年というと「大逆転裁判」の舞台である19世紀末。264人も日本人が居たら、『背が低く猫背でヒゲ』はその中に10人くらいは居そうな気もしますが‥‥ここでVan Zieks卿が言いたいのは、そういう屁理屈じゃないから。w

Juror No. 4
I'm the wife of Augustus Altamont, owner of the Altamont
Gas Company.

4ゴウ
ワタクシの夫は、バルブ・アルタモント。
《アルタモント瓦斯(ガス)会社》の社長ですの。


バルブ・アルタモント:Augustus Altamont
日本語版での「バルブ」は配管のバルブ(valve)から取ったネーミングだと思いますが、英語版では「Augustus」に変更されました。valveという人名はないだろ、ということなのか、奥さんの「Quinby」と釣り合わないということでの変更かな。
Augustusはローマ帝国初代皇帝アウグストゥス、のちに「尊厳」の意を持つローマ皇帝の尊称ですが、現在では人名として普通に使われています。奥さんのQuinby(Queen bee)とも対になっている感じがします。
ダジャレネーミング的な意味では、「Ah! Gas」ってことじゃないのかな。瓦斯(ガス)会社だけに。

Juror No. 5
...Finnish Lass, that's what it's about.

5ゴウ
‥‥《ビリー・ノローマ》‥‥


5ゴウが競馬で賭けた馬の名前。
「Finnish Lass」は、そのままだと「Finnish(フィンランドの) Lass(少女)」なのですが、「finish last(最後に到着)」からのダジャレでもあるようです。まっとうな馬の名前っぽく見えて実はダジャレという、日本語版と似たようなネタ。言うまでもありませんが、フィンランドに対しての悪口では決してありません。

Ryunosuke
No wonder they call you Metermann...

ナルホド
持ち歩いているんですか!


ミターマンが「Gas Meter(瓦斯(ガス)計量器(メーター))」を持っていると聞いた時の龍ノ介の反応。
Ryunosuke「(メーターを持ち歩いているなんて)メーター男(Metermann)と呼ばれるのも納得ですね‥‥」

Ryunosuke
Oh...?
Look at this bar of soap.
There's a circular depression on this side.
About two centimetres across.
Susato
Or...three-quarters of an inch—
Ah! Do you think...?

ナルホド
おや‥‥?
この、セッケン‥‥見てください。
ここに、丸い“くぼみ”があります。
直径‥‥ちょうど、2(センチ)ぐらいの‥‥
スサト
直径、2(センチ)ぐらい‥‥
あ! それは、もしかして‥‥


Altamont
About three-quarters of an inch across.

アルタモント
‥‥直径2(センチ)ほど、ですわね。


日本語版ではひたすら「2センチ」と述べられていた3ペンス硬貨の直径ですが、英語版では一部、「three-quarters of an inch」、つまり「4分の3インチ」に変更されています。
海外版は、アメリカなど今でもヤード・ポンド法が主流な地域でも販売されていますので、そちらに配慮したのかな?
といっても、19世紀はイギリスとアメリカでヤードの長さがちょっぴり違い、統一されたのは1958年だそうです。
現在では1インチ=2.54センチメートル(「≒」ではない)のですが、19世紀の頃は1インチ≒2.539センチメートル‥‥
そんなに変わらないや。w
ヤード - Wikipedia
ということで、4分の3インチは当時でもだいたい、1.905センチメートルです。

Judge
...that the man was eating the soap, was he?
Van Zieks
Pardon me for disagreeing with Your Lordship, but...
...certainly not.
Susato
He didn't beat about the bush there, did he?

サイバンチョ
“食べようとした”とか‥‥?
バンジークス
閣下にこんなコトを言うのは
恐れおおいが‥‥
それはない。
スサト
‥‥一刀両断でございます。


beat about the bush:獲物を狩り立てる、遠回しに探る
※aboutを使う場合は主にイギリス英語。アメリカ英語だとaroundを使うことが多い
Susato「まったく遠慮せずにおっしゃいましたね、Van Zieks卿は‥‥」

Van Zieks
I was throwing my hand up in despair...
...and happened to catch my hallowed bottle on the way.
Pray, forgive my maladroit mistake.

バンジークス
投げるべき“さじ”が
手近に見当たらなかったゆえ‥‥
《神の瓶》に手を伸ばした暴挙。
‥‥どうか、お許し願いたい。


Van Zieks「絶望のあまり手を挙げたところ‥‥
偶然にも《神の瓶》を手にとった暴挙。
どうか、お許し願いたい。」

throw one's hands up:お手上げだと諦める、降参だと手を挙げる
ここまでの法廷の流れが脱線していたことに対して(あまりにくだらなくて)絶望した。という意味でしょうね。
と絶望したところで、石鹸から新たな証拠を発見。
次回、探偵パートへ続く。

次 探偵【その3】



英語版「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」解説

英語版「大逆転裁判1」解説はこちら

Escapades(番外編 ランドストマガジン)解説へ

■大逆転裁判2

○Episode 1 The Adventure of the Blossoming Attorney(第1話 弁護少女の覚醒と冒險)

1.法廷【その1】
2.法廷【その2】

○Episode 2 The Memoirs of Clouded Kokoro(第2話 吾輩と霧の夜の回想)

1.探偵【その1】~探偵【その2】
2.法廷【その1】
3.探偵【その3】
4.法廷【その2】
5.法廷【その3】

○Episode 3 The Return of the Great Departed Soul(第3話 未来科学と亡霊の帰還)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.法廷【その1】
3.法廷【その2】
4.探偵【その2】(1)
 探偵【その2】(2)
5.法廷【その3】
6.法廷【その4】

○Episode 4 Twisted Karma and His Last Bow(第4話 ねじれた男と最後の挨拶)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.法廷【その1】
3.法廷【その2】
4.探偵【その2】

○Final Chapter The Resolve of Ryunosuke Naruhodo(最終章 成歩堂龍ノ介の覺悟)

1.法廷【その1】
2.探偵【その1】
3.法廷【その2】
4.法廷【その3】
5.終幕