「大逆転裁判」シリーズでは初めての、法廷パート後の探偵パートです。
「大逆転裁判1」は、3話以降、探偵パート→法廷パートで各エピソードが終わっていましたからね。

■Investigation, Part 3(探偵【その3】)

Kazuma
Karuma guides me.
I truly believe that.
Ryunosuke
So its name compels its wielder to slice evil in two?
Not that you would need much compelling...

アソウギ
コイツが、オレを支えてくれる。
‥‥そう、信じている。
ナルホド
悪を“一刀両断”する‥‥
オマエらしい心意気だな。


Ryunosukeのセリフが「その名の通り、悪を一刀両断できるのか?」になっているので、「Karuma」が、「日本語だと『悪を一刀両断』という意味なんだろうな」と、海外プレイヤーにもわかるようになっています。
日本語版の場合は「狩魔」という漢字で一目瞭然なので(日本語の漢字は文字のひとつひとつに意味がある表意文字なので)、特に説明をしなくても、龍ノ介の「悪を“一刀両断”」の意味がわかるようになっています。
‥‥ふと気づいたけど、英語版だとぱっと見、「Kazuma」と「Karuma」の字面がそっくりで見間違いをしそうになります。

Ryunosuke
'Buck up, Runo'
...What is this?

ナルホド
『しっかり、なるほどくん』
‥‥なんだこれは。


buck up:(イギリス英語、命令形で)元気を出しなさい、しっかりやりなさい
アイリスの思いつき黒板に書かれていた、来月号のタイトル案。
もうひとつのタイトルは「The Beryl Coronet(緑柱石の宝冠(ティアラ))」、原作ホームズネタですね。

Sholmes
No, what I am researching is skin prints!

ホームズ
今、ボクが研究しているのは。
‥‥たとえば、“指痕”とかね。


指痕検出装置:Skin Print Seeker (gun)
大逆転裁判1の第2話冒頭アニメで使っていたのはこれだった、ということがこのシーンでわかります。ホームズの説明を聞く限り、ハイテクってレベルじゃねーぞっていう技術です。

Sholmes
Personally, I often stumble when there's nothing obvious
to trip over.
Susato
...I think that's something only a great detective would do,
Mr Sholmes.

ホームズ
ボクは、よく、なにもないトコロで
つまづいて転んだりするけどね。
スサト
‥‥それはきっと、ホームズさまが
特殊なのだと思われます。


Susato「‥‥それはきっと、偉大な探偵だけがすることだと思いますよ、Sholmesさま」
寿沙都さんの人を褒めたりおだてたりする能力の高さは見事だなぁ。

Sholmes
If there's one thing I know about this man, it's that he
blows with the wind! As fickle as the weather!
Gregson
Oi! Stop makin' me out to be some kind of nut!

ホームズ
このオトコ。こう見えて、
1秒ごとに気分が変わるからね!
グレグソン
‥‥勝手にヒトを
“情緒不安定”にするな!


blow with the wind:気まぐれに行動する、横道にそれる
Oi!:イギリス英語。コックニー表現。元は「Hoy!」(驚いた時の間投詞)で、コックニーは「h」を発音しないので「Oi!」になった。偶然ながら、日本語の「おい!」と同じような意味になっている。
nut:Gregsonのセリフの最後の「nut」はスラングで「イカレている」「頭の変なヤツ」「オタク」などの意味。

Sholmes「このオトコについてひとつ知っていることがあるとすれば、彼は天気と同じくらい気まぐれだってことだ!」
Gregson「おい! ヒトを変人扱いするな!」

・セルデン:Selden
死刑囚の名前。
ホームズ原作の長編第3作「The hound of the Baskervilles(バスカヴィル家の犬)」に登場する、脱獄囚のSelden(セルデン)から取られたと思われます。

証拠品「死刑囚の新聞記事」のサムネイルが、3DS版から少し変更。
私も今回初めて気づいたのですが、3DS版→スマホ版の時点でサムネイル画像が変わっていたんです。
といっても、新聞の切り抜きの形状がちょこっと変わっただけですが。‥‥変えた目的・理由はいまいちわからない。

3DS版↓



スマホ版(iOS版)↓



本作(PS4版)↓



そうそう、「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」公式サイトのTwitterアイコン配布ページ、最後のオッサンは誰だよ、と思っていた方もいらっしゃるかもしれませんが、このサムネイルでわかるとおり、実はセルデンだったのです。セルデンにもこんなちゃんとしたイラストが設定されていたんですね‥‥w

Ryunosuke
Why don't we call it, um...Wagahai?
You know, like Mr Natsume refers to himself in Japanese.

ナルホド
とりあえず‥‥“ワガハイ”と
いうことにしておきましょうか。


Ryunosuke「とりあえず、“ワガハイ”と呼ぶことにしましょうか。漱石さんは日本語で喋る時に、自分のことを『吾輩』と言いますから。」
と、英語版だと「Wagahai」の意味を教えてくれるようになっています。
順当にプレイすると、「大逆転裁判1」の第5話で唐突に猫の名前が「Wagahai(ワガハイ)」だとわかるようになっていますよね。
日本人なら「吾輩からワガハイか」とすぐに名前の由来がわかりますが、英語版の場合は「日本語らしいけど、Wagahaiってなんだよ」ということになってしまう。英語の一人称は「I」のみで、英語版ではSosekiさんも「I」を使って喋っているからです。
それがようやく、この「大逆転裁判2」第2話で解決するわけです。
2作品が同時収録だから、1の5話の時点でWagahaiの意味を詳しく説明しなくても大丈夫、という判断なのかな?

Susato
Oh, wonderful! Well then, Wagahai...here's something
delicious I bought for you from the cat's meat man!

スサト
では、ワガハイさま。猫肉屋さんで
買ってきた“ごはん”でございます!


私は初プレイの時、この「猫肉屋」なるものを知らなかったので、「えっ、まさか‥‥」とヒヤヒヤしましたが。
猫肉屋 - Wikipedia
>猫肉屋(ねこにくや、英:cat's-meat man)は、家庭でペットとして飼われている猫や犬の餌(ペットフード)として屑肉を巡回販売する小売業。「猫を殺してその肉を売る職業」ではない。18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパや北アメリカの都市部に見られた。
という説明を読んでほっとしたものです。w そしてまたひとつ雑学が増えました。

Soseki
Might I ask, Locum Student Mr Naruhodo Esquire, that
the next time you visit me...
...you bring scores of super-soft soaps!

ソーセキ
とにかく、留学生代理。
今度、面会にくるときは‥‥
うなるほどのセッケンの
“差し入れ”を所望するものであるッ!


英語版は「scores of super-soft soaps」(たくさんのとっても柔らかいセッケン)で韻を踏んでいますね。
四字熟語で韻を踏むSosekiさんにはこの程度たやすいこと‥‥なのかな。

Soseki
The next time someone gives me soap as a present, it's...
   Friendship Finished Firmly Forever!

ソーセキ
これから、お中元でセッケンを
送ってくるような輩がいたら‥‥
   即 刻 絶 縁 ッ!


まあ、上のセリフの後に証拠品の「セッケン」をつきつけるとこんな会話になっちゃうんですけどね。
「Friendship(友情) Finished(終了) Firmly(断固として) Forever(永久に)!」

Garrideb
No, no, not at all. He was a lodger here once.
Duncan Ross was his name.

ガリデブ
いやいや。これは下宿人ですな。
‥‥ダンカン・ロスくん。


Duncan Rossはホームズネタ。短編集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes (シャーロック・ホームズの冒険)」に収録された短編「The Red-Headed League(赤毛連盟)」の登場人物です。
この第2話全体が、いわゆる「赤毛トリック」という、「赤毛連盟」から生まれたトリックが元になっています。
「赤毛トリック」というのは、「犯罪者がある場所に潜入するため、その場所に居る人物を何かしらの方法で外出させ、そのスキに犯罪者が目的の場所に侵入し悪事をはたらく」というトリックのこと。

Shamspeare
Lo, a Shamspeare dance to celebrate!

ペテンシー
‥‥ペテンシーの舞ッ!


Lo:古語。「見よ!」「そら!」といった意味の間投詞。
「見よ! Shamspeare、喜びの舞ッ!」ってところでしょうか。

Sholmes
...Reading personal correspondence can have its merits,
you see, Miss Susato.
Ah ha ha ha hah!

ホームズ
‥‥これだから。ヒトの手紙を
勝手に読むのは、やめられないのさ。
あーっはっはっはっはっはっはっはっ!


Sholmes「‥‥ヒトの手紙を読むという行為には、それなりの価値があるのさ、ミス・スサト。」
そうだね、英国から日本への秘密通信をこっそり読むのとかね。

'Come to The Slug and Salad on Briar Road at 5 p. m. on
17th.'

『17日午後5時、ブライヤーロードの
 パブ《ペパー亭》に来てください』


「ペパー亭」は「The Slug and Salad」。
検索してみたところ、「Slug and Lettuce」というパブのチェーン店が、ロンドンをはじめイギリス南東部に実在するのだそうです。
Slug & Lettuce(公式サイト)
たぶん、このチェーン店の名前をもじったのでしょう。
「Slug and Lettuce」の1号店があるロンドン・イズリントンの建物は19世紀半ばから後半にかけ建設されたそうですが、パブ「Slug and Lettuce」の設立は1985年。19世紀末にはなかったお店です。
Slug and Lettuce, Islington - Wikipedia
それにしても「怠け者(Slug)とレタス(Lettuce)」‥‥謎の店名だ。

Ryunosuke
All that's left is to remain focused and keep fighting for
Mr Natsume's cause until the very end.

ナルホド
あとは‥‥目をそらさずに、
最後まで、闘いぬくだけです。


と、決意を語ったところで探偵パート終了。法廷パートへ続く。

次 法廷【その2】



英語版「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」解説

英語版「大逆転裁判1」解説はこちら

Escapades(番外編 ランドストマガジン)解説へ

■大逆転裁判2

○Episode 1 The Adventure of the Blossoming Attorney(第1話 弁護少女の覚醒と冒險)

1.法廷【その1】
2.法廷【その2】

○Episode 2 The Memoirs of Clouded Kokoro(第2話 吾輩と霧の夜の回想)

1.探偵【その1】~探偵【その2】
2.法廷【その1】
3.探偵【その3】
4.法廷【その2】
5.法廷【その3】

○Episode 3 The Return of the Great Departed Soul(第3話 未来科学と亡霊の帰還)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.法廷【その1】
3.法廷【その2】
4.探偵【その2】(1)
 探偵【その2】(2)
5.法廷【その3】
6.法廷【その4】

○Episode 4 Twisted Karma and His Last Bow(第4話 ねじれた男と最後の挨拶)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.法廷【その1】
3.法廷【その2】
4.探偵【その2】

○Final Chapter The Resolve of Ryunosuke Naruhodo(最終章 成歩堂龍ノ介の覺悟)

1.法廷【その1】
2.探偵【その1】
3.法廷【その2】
4.法廷【その3】
5.終幕