第3話探偵【その1】後半、「The Great Exhibition Grounds, Foot of the Crystal Tower」(万博実験会場 水晶塔(クリスタルタワー)前)へやってきたところからです。

■Investigation, Part 1(探偵【その1】)

???
You've got a cheeky little mouth on you, young lady!
But a night in the cells will teach you some manners!
???
Just try it, I dare ya! If ya want that bag o'chips rammed
down yer throat!

???
この。クチの減らないコムスメが‥‥
独房にブチこんでやるぞッ!
???
アタシだって! そのアゲモノ、
クチにブチこんでやるからッ!


ここでの名前欄は「???」ですが、言うまでもなくグレグソンとジーナです。

Gregson「この、クチの減らないコムスメが! だが独房で一晩過ごせば、礼儀作法を学べるだろうな!」
Gina「やってみなよ! アゲモノの袋をクチにブチこまれたいのならね!」

独房で何が学べるのだろう‥‥w
ジーナはグレグソンを「ボス」と呼ぶようになりますが、英語版でも「ボス」は「boss」です。

Gina
Tsk. A measly five bob?
Is that all ya got?
Yer a lawyer, ain't ya? Ya could stand to carry a bit more
copper around in yer pockets, Mr Narra-'Oddo!

ジーナ
ちぇー。
たった、5シリングぽっちかー。
ベンゴシのくせに。もうちょっと
カネを入れておきなよナルホドー!


相変わらずコックニー表現がすごいGina。それでも1の5話のあの兄弟と比べればマイルドな方です。
復習になりますが、bobはシリングの俗語。Yerはyouとかyourとかのこと。
copperは「銅」のことですが、転じて「銅貨」のことです。
「Mr Narra-'Oddo」だったり、「'Oddo」だったりしますが、とりあえずどちらも「ナルホドー」のことです。

Ryunosuke
...I've, I've read about situations like this in a magazine
about strange phenomena.
C-Creatures from outer space c-coming in round, flying
objects... t-t-to attack Earth!

ナルホド
‥‥そういえば。
『怪奇雑誌』で読んだことがあるよ。
あ。ああいう、丸いのに乗って、
う。宇宙人が攻めてくる、って‥‥


飛んでいる気球を調べるとこんな話になってしまいます。w
ビビってるけど、龍ノ介はオカルトの造詣がやたらある気がします。この後、蝋人形館に入った時にも怪奇雑誌の話をしますし。
イギリスの作家H・G・ウェルズがSF小説「宇宙戦争」を発表したのが、「大逆転裁判」の舞台に近い1898年だそうです。乗り物に乗って宇宙人が地球に攻めてくるSF小説の元祖とも言える小説ですが、龍ノ介は知っていたのかな。
宇宙戦争 (H・G・ウェルズ) - Wikipedia
こんなパスティーシュものもあります↓
シャーロック・ホームズの宇宙戦争 - Wikipedia

Ryunosuke
Suddenly it's not the Crystal Tower any more, but the
Crystal Glass Shower...

ナルホド
それは、なんというか。
“大損害”だね。《水晶塔(クリスタルタワー)》。


Ryunosuke「突然、《クリスタルタワー》から、《クリスタル・ガラス・シャワー》に変わってしまったわけだね。」
TowerとShowerを引っ掛けています。いや、誰が上手いこと言えと。

科学式捜査班:The Forensic Investigation Team



Iris
I'd present a particularly steely samurai with a present of
one of Hurley's stories I 'd written especially...
...and see if I couldn't get Hurley into a jam against some
bartitsu-master ninjas!

アイリス
“トノサマ”に、ホームズくんの
本を献上してみたり‥‥
“ニンジャ”とホームズくんを
闘わせてみたり!


Iris「あたしが書いたHurleyの物語を、特に気の強いサムライに献上してみたり‥‥
bartitsuを極めたニンジャと、Hurleyと闘わせてみたり!」

上の英語版のテキスト、海外の逆転裁判シリーズファンも、原作ホームズファンもニヤリとできる内容になっています。
まず、「steely samurai」(気の強いサムライ)ですが、日本語版における「トノサマン」は英語版で「Steel Samurai」とローカライズされているので、「steely samurai」という表記で、海外のファンはすぐに「Steel Samuraiだ!」とピンときたはずです。
次に「bartitsu」ですが、これはWikipediaあたりを読んでもらった方がはやいと思います。
バーティツ - Wikipedia
原作「シャーロック・ホームズ」に、「日本の武術」だと称して登場した「バリツ(baritsu)」。
この謎の「バリツ」の正体は「柔道」のことだとか、「武術」がなまったとか、いろいろ説がありますが、中には「バーティツ(bartitsu)」ではないか? という説もあるそうです。

Ryunosuke
All those defendants couldn't just have coincidentally died
if nobody killed them!
Gregson
I know that!
But...I can't explain it.

ナルホド
誰かが手を下さなければ、
被告人たちが亡くなるなんて‥‥
グレグソン
そんなことは、わかっている!
‥‥しかし‥‥わからんのだ。


このあたりのグレグソンの話は、クリアしてからもう一度見るとぞくっとするセリフ。
日本語版だと「わからんのだ。」だけど、英語版は「説明できんのだ。(I can't explain it.)」
日本語版の「わからない、知らない」よりも「説明できない、言えない」の方が怖いんだけど。

蝋人形館の入場券は、下のように、日本語版と英語版で違います。
ローザイクの名前が英語版では異なるからですね。



・マダム・ローザイクの館:Madame Tusspells Museum of Waxworks
英語版では通称「Madame Tusspells」。
モデルになった、実在の「マダム・タッソー館」も「マダム・タッソー(Madame Tussauds)」だけでマダム・タッソー館のことだと通じるからでしょう。

Ryunosuke
I, I read about d-dead bodies and wax once...in a
m-magazine about strange phenomena.
Depending on how c-c-corpses are kept after death,
p-parts of them can turn to wax, apparently.
It's c-called a...adi...adip...
Adipocere!

ナルホド
そ。そういえば‥‥
ムカシ、怪奇雑誌で読んだことがある。
ほ。保存のしかたによって、死体は蝋に
変質して、永久に腐敗しない、って‥‥
し‥‥‥‥‥し。
《屍蝋》というのだそうだよ‥‥


龍ノ介の怪奇雑誌シリーズ。
「屍蝋」の知識のみならず、それを英語で「Adipocere」というと知っているなんて、すごすぎるぞ龍ノ介。

Iris
Yes, Called 'Jane the Ripper'.
All her victims were young women.

アイリス
うん。若い女の子ばかりを狙った
『切り裂きジェーン』だって。


元ネタは1888年にイギリス・ロンドンで実際にあった「Jack the Ripper(切り裂きジャック)」事件。
実際の事件の内容は猟奇的なため、検索して調べる場合はご注意ください。
犯人を名乗る者からの手紙で、犯人が「Jack the Ripper」と名乗ったことで、この名称が広まったそうです。
日本語では名前がわからない人のことを「名無しの権兵衛」と言ったりしますが、英語でこれに当たるのが「John Doe」(男性)、「Jane Doe」(女性)でして、本作の「切り裂きジェーン」はこの「Jane Doe」から取られたと思われます(ついでに、Jackとイニシャルが同じ)。

Iris
Oh! That's a funny place for a little ladder.
Ryunosuke
........
Iris
What is it?
Is something wrong?
Ryunosuke
No, it's just that in Japanese, we have a totally different
word for a ladder that folds in half like that.
Iris
We do in English, too, you know.
It's a stepladder, or just 'steps'.
So be careful of making assumptions about other cultures,
Runo. That's how wars are started.

アイリス
あれ。こんなところに
《ハシゴ》があるよ。
ナルホド
‥‥‥‥‥‥‥‥
アイリス
ん? どうしたの?
ナルホド
いや。ぼくの国では、2つ折りの
ハシゴは《キャタツ》って言うんだ。
アイリス
へー。ニッポン語って、
ミョーなところで細かいよねー。
そういうところから
“争いのタネ”は芽を吹くんだよ。


「はしごと脚立」ネタ。
英語版逆転裁判シリーズでも「はしごと脚立」ネタはきちんとローカライズされて、「ladder vs. stepladder」なんて言われてきました。
でも、英語だとどっちにも「ladder」ってつくから、どっちも「ladder」でいいんじゃね? って気がしなくもない。w
なお英語版を意訳するとこんな感じ(ladderはあえてladderのままにしました)↓

Iris「あれ。こんなところに小さなladderがあるよ。」
Ryunosuke「‥‥‥‥‥‥‥‥」
Iris「ん? どうしたの? 何かおかしい?」
Ryunosuke「いや。ぼくの国では、あんな風に半分に折れるladderのことを、全く違う言葉で表現しているっていうだけだよ。」
Iris「英語でもそうだよね。stepladderとか、単にstepsとかね。だから、よその文化について勝手に決めつけするようなことはダメだよ、Runo。そういうところから“争いのタネ”は芽を吹くんだよ。」

Sholmes
Nevertheless, the most popular area of the museum by
quite some margin is this House of Horrors.

ホームズ
その中でも、圧倒的に人気があるのが、
この《恐怖の間》だ。


temporary waxwork(一日蝋人形)中のホームズ氏による解説。
ロンドンのマダム・タッソー館にも、本作の「House of Horrors(恐怖の間)」の元ネタになった、「Chamber of Horrors(恐怖の部屋)」があったそうです。
また、マダム・タッソー館では、「恐怖の部屋」=「特別展示室」ですが、本作は「恐怖の間」の奥に、別料金の「特別展示室(Special Exhibit)」がある、という設定です。
恐怖の部屋 - Wikipedia
といっても、Wikipediaにもある通りに、2016年4月にロンドンのマダム・タッソー館の「Chamber of Horrors(恐怖の部屋)」は閉鎖されてしまったそうです。
その後に、『「シャーロック・ホームズ・エクスペリエンス」という新しいアトラクションにリニューアルされた。』とあるのがなんともかんとも‥‥w

Ryunosuke
Wha... You...
You're THE Madame Tusspells?
Tusspells
Bien sûr. Though only twenty-six years young, I might
add.
Ryunosuke
...Is that significant somehow?
Tusspells
I'm a 'madame' in name only.
It adds a certain...je ne sais quoi.

ナルホド
え! あ。あなたが‥‥!
“マダム”ローザイク‥‥なのですか?
ローザイク
ええ。じつは、こう見えて私。
当年とって26歳なのですが‥‥
ナルホド
‥‥まあ。
どう見ても、それぐらいですね。
ローザイク
なにやら。“マダム”とつけたほうが
ハクがつくじゃございませんか。


「madam」ではなく「madame」なところにご注目。
これまでも説明してきましたが、英語の「madam」は既婚・未婚を問わず女性に対するていねいな呼びかけになります。
だからホームズをはじめ英国紳士な人々は、寿沙都などを「madam」と呼びます。
一方で「madame」はフランス語、原則として既婚女性に対しての呼びかけ。英国では外国の婦人、特にフランス人に対する呼び掛け。

Ryunosuke「え! あ。あなたが‥‥! あのMadame Tusspellsなのですか?」
Tusspells「もちろん(Bien sûr)。ただ、私、まだ26歳だということを付け加えておきますわ。」
Ryunosuke「では、どういうわけでMadameだと?」
Tusspells「名ばかりのMadameですわ。それがある種の、言い表せぬ魅力(je ne sais quoi)になるのですわ。」

‥‥と、フランス出身のTusspellsはフランス語をたまに混ぜてきます。
フランス語というと「逆転裁判3」の吐麗美庵なあのヒトが「ビアン・シュール(Bien sûr)」とか言っていたのが脳裏をよぎってしまうなぁ。w
フランス語といっても検索すればすぐ出てくるような簡単なフランス語なので、方言やスラングみたいに苦労はしません。

Sholmes
I know him well, in fact.
It's Sergeant John Clay.

ホームズ
ボクは、彼をよく知っている。
ジョン・クレイ巡査部長ですね?


Sholmes
........
The killer policeman, Ottermole.

ホームズ
‥‥‥‥‥‥‥‥
殺人警察官オッターモール。


ジョン・クレイは原作ホームズネタ。短編集第1作「The Adventures of Sherlock Holmes(シャーロック・ホームズの冒険)」に収録された短編「The Red-Headed League(赤毛連盟)」の登場人物のひとりがJohn Clay(ジョン・クレイ)。
ちなみに原作では警察官でも何でもありません。
また、オッターモールはトマス・バーク(Thomas Burke)による小説「オッターモール氏の手(The Hands of Mr Ottermole)」が元ネタ。「切り裂きジャック」を元にしたフィクションで、ホームズが語る「殺人警察官オッターモール」の話は、小説「オッターモール氏の手」とだいたい同内容です。
日本語に訳された「オッターモール氏の手」は、創元推理文庫の「世界短編傑作集 4」内に収録されています。

Sholmes
Thus concludes Herlock Sholmes's great deduction...of
this horrifying puzzle!

ホームズ
以上。シャーロック・ホームズの
《名推理》でした。


いつものシメのセリフ。
今回は「this horrifying puzzle(この恐怖の謎)」と付いています。場所が「恐怖の間」ですからね。

Tusspells
The killer who left a more profound scar on society than
any other, I would say: the Professor.

ローザイク
英国犯罪史に、忘れられぬ爪痕を刻んだ
あの《プロフェッサー》ですから。


Sholmes
The last of the killer's prey was a young noble by the
name of...
...Klint van Zieks.

ホームズ
その、最後の犠牲者となった
青年貴族の名は‥‥
クリムト・バンジークス。


《プロフェッサー》:the Professor
クリムト・バンジークス:Klint van Zieks
ふたつの重要なキーワードが登場したところで、探偵【その1】終了。
‥‥の前に、

Ryunosuke
........
It's just a collapsed man.

ナルホド
‥‥‥‥‥‥
オジサンが落ちている。


やっぱり、この衝撃(笑撃?)のセリフは紹介しておかないと。w
Ryunosuke「ただの倒れているヒトだ。」(It's just a collapsed man.)

次回、法廷パートへ。

次 法廷【その1】



英語版「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-」解説

英語版「大逆転裁判1」解説はこちら

Escapades(番外編 ランドストマガジン)解説へ

■大逆転裁判2

○Episode 1 The Adventure of the Blossoming Attorney(第1話 弁護少女の覚醒と冒險)

1.法廷【その1】
2.法廷【その2】

○Episode 2 The Memoirs of Clouded Kokoro(第2話 吾輩と霧の夜の回想)

1.探偵【その1】~探偵【その2】
2.法廷【その1】
3.探偵【その3】
4.法廷【その2】
5.法廷【その3】

○Episode 3 The Return of the Great Departed Soul(第3話 未来科学と亡霊の帰還)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.法廷【その1】
3.法廷【その2】
4.探偵【その2】(1)
 探偵【その2】(2)
5.法廷【その3】
6.法廷【その4】

○Episode 4 Twisted Karma and His Last Bow(第4話 ねじれた男と最後の挨拶)

1.探偵【その1】(1)
 探偵【その1】(2)
2.法廷【その1】
3.法廷【その2】
4.探偵【その2】

○Final Chapter The Resolve of Ryunosuke Naruhodo(最終章 成歩堂龍ノ介の覺悟)

1.法廷【その1】
2.探偵【その1】
3.法廷【その2】
4.法廷【その3】
5.終幕