◎「うるはし(麗し・美し)」(形シク)
「うるははし(潤葉愛し)」。みずみずしい、生きた美しい自然への感嘆表明。「うるは(潤葉)」は生きた、光が感じられる、水々しい葉ですが、「は(葉)」は時間も意味し(→「はは(母)」の項)、「うるはし(麗し)」は神的な生きた時間(その秩序)への感嘆、畏敬の思いも表明します。
「大和(やまと)は国(くに)のまほろば たたなづく青垣(あをかき)山ごもれる 大和しうるはし」(『古事記』歌謡31)。
「此(こ)の子(みこ:天照大神)、光華(ひかり)明彩(うるは)しくして、六合(くに)の內(うち)に照(て)り徹(とほ)る」(『日本書紀』:「六合」は東・西・南・北・上・下の六が合う、の意。世界を意味し意味発展し国を意味する)。
「仏のいとうるはしき心にて説きおき給へる御法」(『源氏物語』)。
「是(これ)より先、天稚彥(あめわかひこ)葦原中國(あしはらのなかつくに)に在(あ)りしときに、味耜高彥根神(あぢすきたかひこねのかみ)と友善(うるは)しかりし」(『日本書紀』)。
「経文などの紐をゆふに……華厳院の弘舜僧正…『これはこの頃やうのことなり。いとにくし。うるはしくはただくるくると巻きて……』と申されけり」(『徒然草』:ここでは、簡素で自然であることがうるはしい)。
「上達部参らせ給ふ。昨日はうるはしき御よそひなりしに、今日は殿ばら、君達皆直衣(なほし:平常着)にて参り給へり」(『栄花物語』:ここでは公式に整っていることがうるはしい)。
◎「うるひ(潤ひ)」(動詞)
「うる」は「うる(潤)」の項参照(7月28日)。水分を含んだ印象、水を感じる印象を表現する。その「うる」の動詞表現。「うる(潤)」を感じる情況になること。これは「うるほし(潤し)」の影響で生じた動詞でしょう。それが「うるひおほし(潤ひ生ほし)」のように思われた。
◎「うるへ(潤へ)」(動詞)
「うるひ(潤ひ)」の他動表現。「うる(潤)」を感じる情況にすること。水分を含んだ状態にすること。
◎「うるほし(潤し)」(動詞)
「うるおほし(潤生ほし)」。「うる(潤)」はその項。「おほし(生ほし)」は「おひ(生ひ)」の他動表現。「うる(潤)」を生じさせること。水分を含んだ状態にすること。また、それが乾きをなくし生命力を活性化させることから、経済的に富を得た状態にすることも「うるほし」と表現されることがある。
◎「うるほひ(潤ひ)」(動詞)
「うるおひおひ(潤生ひ覆ひ)」。水分を含んだ、それゆえに自然界に生気のある状態が発生しそしてそれが世界を覆う。経済的に富を得た状態になることも表現されることがある。
◎「うるみ(潤み)」(動詞)の語源
「うる(潤)」の動詞化。濡れた(ような)状態になること。事実上、直接間接に、涙に関してしか言わない。「目がうるむ」「声がうるむ」(涙声になる)。
◎「うるみ」(動詞)の語源
「ヱいりうみ(壊入り熟み(膿み))」の音(オン)変化。「ヱい(平仮名で書けば、ゑい)」が「う」になっている。「ヱ」は「壊」の呉音。「ヱいり(壊入り)」は、壊(こは)れが入っていること。組織の破壊があること。「うみ(熟み・膿み)」は構成力が空虚化していること、つまり、崩れそうなこと。これは強い打撃や圧迫により組織崩壊的内出血が生じることを表現する。「八瀬にて義朝に打たれし鞭目、左の頬さきにうるみて」(『平治物語』)。