◎「まぎれ(紛れ)」(動詞)
「まきききれ(目効き切れ)」。目の効果が連続的に作用せず切断してしまうこと。切断した前後の印象記憶の連続性を識別する負担が生じること、あるいは、識別が困難・不能になること。
「ある時には、こしかた行末もしらず、海にまぎれんとしき」(『竹取物語』:くらもちの皇子と海が識別不能になる)。
「殿の御前も、よその御ありきこそ苦しく思しめされ、(土御門殿は)けぢかければ、まぎれ渡りつつ、見奉らせ給ふ」(『栄花物語』:ことがまぎれれば、他のことで来たかのように会う。環境にまぎれれば、人に気づかれぬよう会う)。
「「さては舞も見たけれども今日は紛るる事の出で来たり。この後は召さずとも常に参りて今様をも歌ひ舞などを舞ふて仏慰めよ」とぞ宣ひける」(『平家物語』:私事と他事が識別できなくなってしまうような事態になる。つまり、今日は避けられない用事ができた。「仏」は白拍子(歌い舞う遊女)の名)。
「Maguire(マギレ),uru(ルル),eta(レタ). ……………Quiôua(キョウワ(今日は)) maguiruru(マギルル) xiſai(シサイ(子細)) atteſanjenanda(アッテサンゼナンダ(あって参ぜなんだ)). ………………¶ Sancanga(サンカンガ(算勘が)) maguirete(マギレテ) auanu(アワヌ)」(『日葡辞書』:「算勘」は、勘定。(算盤などで)数え、計算すること)。
「かへる年の二月二十日よ日 ………「まづそのことをこそは啓せんと思ひてまゐりつるに、物語のことにまぎれて…」」(『枕草子』)。
◎「まぎらはし(紛らはし)」(動詞)
「まぎれははし(紛れ這はし)」。「まぎれ(紛れ)」(その項:目の効果が切断する)の情況にすること。視認しにくく、分別しにくくする。それにより、その影響が及びにくくなる。
「はしらかくれにゐかくれて涙をまきらはし給へるさま…」(『源氏物語』)。
「はかなきことをきこえなくさめ(慰め)、なきみわらひみ(泣きみ笑ひみ)まきらはしつる人さへなくて…」(『源氏物語』)。