◎「ぬま(沼)」

「ぬみは(沼水葉)」。「ぬ(沼)」(その項・下記)であり、水と植物の葉が混在する印象のところ。

「沼(ぬま:奴麻)二つ通は(通ふ)鳥が巣吾(あ)が心(こころ)二(ふた)行くなもとなよもはりそね (奈与母波里曽祢)」(万3526:東国の歌。「なよもはりそね(奈与母波里曽祢)」は、な(勿)、世(よ)も、思はりそ、ね(けして思わないでね)、ということでしょう)。

◎「ぬ(沼)」

「のゐ(野井)」。「ゐ(井)」は水の湧くところを意味しますが(その項)、野にある、そうした印象のところが「のゐ(野井)→ぬ」。「ぬう」という語もありますが、これは「のゐふ(野井生)」の「ふ」の子音退行。

「あぢの棲む須沙(すさ)の入江の隠り沼(こもりぬ:許母理沼)のあな息づかし見ず久にして」(万3547:「須沙(すさ)の入江」は未詳)。

「沼 ………和名奴」(『和名類聚鈔』)。

「沼 ………ヌウ コイケ イケ」(『類聚名義抄』)。

 

◎「ぬま(要点・要地)」

「ねいみは(値い見端)」。「い」は指示代名詞のようなそれ(その項)。「ねいみは(値い見端)→ぬま」は、価値それを見ること・ものたるある限定域。ものごとの要点、活動の要地。「ぬみ(要点・要地)」とほとんど意味は変わらない。ただ「ぬみ(要点・要地)」の具体性が表現されその価値性が強調された表現になっている。

「新羅・安羅兩國(ふたつのくに)の境(さかひ)に大(おほ)きなる江水(かは)有(あ)り、要害(ぬま)の地(ところ)なり」(『日本書紀』:)。

「日本(やまと)の軍將等(いくさのきみたち)に會(あ)ひて、事機(ことはかり)の要(ぬま)とする所(ところ)を相謀(あひはか)る」(『日本書紀』:寛文本版読み)。