宮城県の仙台市で開催された、第8回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)が、終わった。
これまで、ネット配信を聴いて(こちらのサイト)、感想を書いてきた。
とりわけ印象深かったピアニストについて、改めて備忘録的に記載しておきたい。
ちなみに、第8回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。
15 キム・セヒョン KIM Saehyun 韓国 2007-
セミファイナルで選出されなかった外国人から一人選ぶなら彼か。
また、私の中での個人的な今大会のMVP。
14~15歳にしてすでに技巧・音楽ともに洗練されているという点で、チョ・ソンジンを思わせる。
“第二のチョ・ソンジン”にまでなるかは分からないが、その素質はあり、今後間違いなく著名コンクールに出てくるであろう逸材。
音楽的には、チョ・ソンジンのロマン性と、藤田真央の天真爛漫さとの、ちょうど間くらいか。
08 岩井 亜咲 IWAI Asaki 日本 2000-
予選で選出されなかった日本人から一人選ぶなら彼女か。
ショパンのよく似合う、ロマンティックな演奏家。
01 ヨナス・アウミラー Jonas AUMILLER ドイツ 1998-
今大会の第2位。
直線的な音楽性を持つ力強いピアニスト。
テクニック的にも(最高度とは言わないが)かなりのもので、ドイツの名手のめっきり減った昨今においては貴重な存在。
03 テオティム・ジロー Théotime GILLOT フランス 2002-
予選で選出されなかった外国人から一人選ぶなら彼か。
技巧はそれなりだが詩情があり、ペヌティエやヴォロンダのようなフォーレが弾ける(というと少しほめすぎかもしれないが)。
29 太田 糸音 OTA Shion 日本 2000-
今大会の第3位。
外連味のないストレートな演奏をする。
技巧的なパッセージでも丁寧に歌い、それも“よく歌う”というよりは“適度に歌う”といった感じ。
音色のカラフルさや局所的な華やかさを追い求めない、真っ向勝負といった風の演奏スタイルで、ベートーヴェンなどよく合っている。
06 ジョージ・ハリオノ George HARLIONO イギリス 2001-
今大会の第6位。
みずみずしい音色、端正なピアニズムを持つ。
技巧面も優れており、音の粒がよく揃っている。
今回は少し焦りやミスもあったが、それを克服すればモーツァルトやベートーヴェンを得意とするアンスネスのような正統派ピアニストになりそう。
14 ジョンファン・キム Jeonghwan KIM ドイツ 2000-
今大会の第4位。
韓国のスマート系技巧派ピアニスト。
最高度に洗練されたテクニックを持つ。
キレ味鋭いクールな音楽性の中に、ロマン的な気質がところどころ品よく顔をのぞかせる。
22 ルゥォ・ジャチン LUO Jiaqing 中国 1999-
今大会の優勝者。
しっかりしたテクニックを持ち、演奏に安定感がある。
あと何かもうワンポイント、アグレッシブな高速テンポだとか、ドラマティックな音楽づくりだとか、歌に溢れた表現だとか、何かしらの個性があるとなお良かったが、それでも大きな穴がないのは強みだろう。
12 神原 雅治 KAMBARA Masaharu 日本 2003-
セミファイナルで選出されなかった日本人から一人選ぶなら彼か。
優れたモーツァルト弾き。
モーツァルトの協奏曲第19番など、タッチの洗練度は上記のジョンファン・キムに敵わないが、ノンレガートも駆使したくっきり明瞭な音作りや、音階の歌わせ方など、モーツァルトらしさではむしろ上。
16 キム・ソンヒョン KIM Songhyeon 韓国 2002-
今大会の第5位。
韓国のスマート系技巧派ピアニスト。
2018年浜コンでは、技巧と音楽性とのバランスが前者に傾いているような印象を受けたが、今回は歌も感じられるようになった。
以上のようなピアニストが、印象に残った。
全体に、レベルの高い大会だったように思う。
特に、審査委員長の野平一郎のスピーチにもあったように、予選がかなりハイレベルだった。
キム・セヒョンを筆頭に、知らなかった名手もたくさんいて、個人的には同時期開催のクライバーンコンクール(その記事はこちらなど)以上にワクワクしながら聴いた。
彼らの活躍には今後も注目していきたい。
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