(第7回仙台国際音楽コンクール 審査結果詳細を見ての感想) | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。

本年(2019年)5~6月に開催された、第7回仙台国際音楽コンクール。

 

ピアノ部門の記事はこちらなど

ヴァイオリン部門の記事はこちらなど

 

その詳細な採点結果が、先月(11月)ネット上で公開された。

今回、リクエストをいただいたので、浜コンのときと同様に(リブログ元の記事を参照されたい)、今回も採点結果を見ての感想記事をささやかながら書いてみたい。

 

 

公表された審査結果詳細は、以下の通りである。

 

 

 

 

以上、仙台国際音楽コンクールのページより引用した(公式サイトはこちら)。

 

 

審査委員は、ピアノ部門が

 

野島稔(日本、委員長)

植田克己(日本、副委員長)

マッティ・レカッリオ(フィンランド、副委員長)

アンドレア・ボナッタ(イタリア)

リチャード・ダイヤー(アメリカ)

ヴァディム・ホロデンコ(ウクライナ)

キム・デジン(韓国)

野平一郎(日本)

ジャック・ルヴィエ(フランス)

ミヒャエル・シェーファー(ドイツ)

オクサナ・ヤブロンスカヤ(アメリカ/イスラエル)

 

の11名で、ヴァイオリン部門が

 

堀米ゆず子(日本、委員長)

堀正文(日本、副委員長)

ボリス・ベルキン(ベルギー、副委員長)

オリヴィエ・シャルリエ(フランス)

ロドニー・フレンド(イギリス)

加藤知子(日本)

ヤンウク・キム(アメリカ)

ギドン・クレーメル(ラトビア、予選・セミファイナルのみ)

チョーリャン・リン(アメリカ)

松山冴花(日本、ファイナルのみ)

ジョエル・スミルノフ(アメリカ)

イザベル・ファン・クーレン(オランダ)

 

の12名である。

 

 

上の表はコンテスタントが番号表記のため見づらく、名前表記に作り替えて微修正を加えたのが以下である。

 

 

・ピアノ部門 予選

 

・ピアノ部門 セミファイナル

 

・ピアノ部門 ファイナル

 

・ヴァイオリン部門 予選

 

・ヴァイオリン部門 セミファイナル

 

・ヴァイオリン部門 ファイナル

 

 

もし表が間違っていたら、ご指摘いただけるとありがたい。

ともあれ、上の審査結果詳細を見て感じたことを以下に列挙してみる。

 

 

 

 

 

【公開方法について】

 

採点結果の公表を仙台コンクールがいつから始めたのか私は知らないが、公開自体は大変歓迎すべきことであり、高く評価したい。

ただ、その公開方法にはいくつか問題がある。

リブログ元の記事に書いた2018年浜松国際ピアノコンクール(浜コン)にも問題はあって、

 

・1次予選通過者の点数しか公開しない

・それぞれの採点をした審査委員が誰なのかを伏せている

 

という点において、2015年ショパンコンクールよりも透明性の低い公開方法であった。

今回の仙台コンクールの公開方法には、浜コンと同じ問題に加え、さらに3つほど問題点がある。

 

 

1. 審査員ごとでなく高得点順に並べ替えて公開している

 

これでは、審査員が一人一人どのような採点をしたか、みな揃っていたのか各々バラバラだったのかという傾向が全く分からない。

誰かが妙な採点の仕方をしたとしても、この公開法では分からない。

 

 

2. ファイナルで1回目の投票が過半数に達せず再投票となった場合、再投票結果のみ公開している

 

これでは、1回目でどのように結果が割れたのかが分からず、再投票で票を変えるなど妙な動きをした人がいないかどうかを掴む手掛かりが損なわれてしまう(票の変更例はこちらなど)。

 

 

3. ファイナルで1位該当者なしの経緯が公開されていない

 

これでは、ヴァイオリン部門のファイナルでなぜ1位不在となったのか(無記名投票が過半数を超えたのか、それとも話し合いで決まったのか、はたまた誰かの一存なのか)が全く分からない。

 

 

以上が、今回の公開方法において感じた残念な点である。

 

 

 

 

 

【公開内容について】

 

上述のように情報量は少なくなってしまっているが、それでも今回の公表で分かることもある。

公開内容について、気づいた点をいくつか書いてみたい。

 

 

・二段階評価でなく多段階評価を使用

 

二段階評価(いわゆるYes/No制)と多段階評価(いわゆる得点制)の違いについては、以下の記事を参照されたい。

 

音楽コンクールの最適な審査とは?

 

この記事に書いたように、得点制では点数の配分によって審査員一人当たりの重みが変わってしまい(一票の格差)、審査員間の不平等が生じかねない。

最近のコンクールは、Yes/No制が主流となっているように思われる。

浜コンもショパンコンクールもそう。

そんな中で、仙台コンクールがまだ得点制を用いているのは、いかがなものか。

上の記事に書いたように、もし多項目に細分化して厳密に点数化しているのであれば、妥当性の高い評価体系となる可能性はある(だいたい82点、といった付け方でなく、「音の美しさ」「リズム感」「構成力」など評価項目ごとに点数をつけてそれらを合計するやり方)。

もしそうだとしたら、採点項目ごとの点数を細かく公開すべきだろう。

 

 

・最高位受賞者は予選当初から高位で、まもなく最高位に定着

 

ピアノ部門の最高位チェ・ホンロクは4位→1位→1位、ヴァイオリン部門の最高位シャノン・リーは6位→1位→2位(1位なし)。

2人とも予選から高めの順位で、セミファイナルの時点ではすでに最高位に定まっている。

これは、2018年浜コンや2015年ショパンコンクールでも同様の傾向を認めていた。

おそらく、ある審査委員団の評価の総意というのは予選当初かそのすぐ後くらいまでにだいたい決まってしまい、途中で覆るようなことはめったにないのだろう。

 

 

・最高位受賞者はファイナルで圧倒的票数を獲得

 

ファイナルで、ピアノ部門の最高位チェ・ホンロクは11票中9票、ヴァイオリン部門の最高位シャノン・リーは9票中6票と、2人とも一発で過半数の票を獲得している。

これは、1位と2位が僅差だった2018年浜コンや2015年ショパンコンクールとは対照的である。

今回の仙台コンクールの特徴の一つと言っていいかもしれない。

 

 

 

 

 

以上、思いつくままに書いてみた。

仙台コンクールには、今後もぜひ採点結果公開の継続と改良を期待したい。

 


 

 


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