宮城県の仙台市で開催されている、第7回仙台国際音楽コンクールのヴァイオリン部門(公式サイトはこちら)。
6月27~29日は、ファイナルの第1~3日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、第7回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者一覧発表)
(第7回仙台国際音楽コンクール(ヴァイオリン部門) 出場者一覧)
(edy classic 【第7回仙台国際音楽コンクール】新進気鋭のピアニストたち)
(アルベルト・カーノ・スミットが第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門)への出場を辞退)
なお、以下はいずれも高関健指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演である。
1.
11 北田 千尋 KITADA Chihiro 1996- 日本
モーツァルト / ヴァイオリン協奏曲 イ長調 K219 (第2日)
メンデルスゾーン / ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64 (第3日)
よく通るのびやかな音が魅力。
華やかさがあって、協奏曲向きのタイプかもしれない。
そのためか、予選では細部の表現が少し大味に感じたけれど、その後だんだん印象が良くなってきた。
モーツァルト、音程が安定しないけれど、レガートとスタッカートがよく対比され、歯切れ良い。
メンデルスゾーン、かなりゆっくりめのテンポということもあってか、音程がわりあい安定していて見事。
下手に速く弾いて崩れるよりも良いと思うが、評価は分かれるかも。
2.
12 コー・ドンフィ KO Donghwi 1997- 韓国
モーツァルト / ヴァイオリン協奏曲 イ長調 K219 (第2日)
シベリウス / ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47 (第3日)
こちらも協奏曲向きの印象。
音がのびやかで、オーケストラをバックに演奏してもよく映える。
アーティキュレーションも明瞭。
ただ、激しい表現を目指しているのか、フレーズの開始音の出し方が雑というか、雑音が混じって聴こえることが多い。
また、長めの音にアクセントをつけるとき、ヴィブラートが引き締まらず「ぶわん」という感じになる。
音程面でもいまいち。
あまりデリカシーを重視するタイプではなさそう。
3.
01 荒井 里桜 ARAI Rio 1999- 日本
モーツァルト / ヴァイオリン協奏曲 イ長調 K219 (第1日)
ブラームス / ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 (第2日)
こちらはどちらかというとソロ向きか。
予選のイザイでは表現に繊細さを感じたが、協奏曲になると音がやや地味かもしれない。
もちろん、優美な演奏は健在で、高音が浮つかずヴィヴィッドに響いて美しいのではあるのだけれど。
また、音程の正確さやヴィブラートのかけ方などにおいて、不安定な箇所がちょこちょこある。
協奏曲だとソロのときよりも音量をしっかり出そうとするために、繊細で完成度の高い演奏がしにくいのだろうか。
4.
15 シャノン・リー Shannon LEE 1992- アメリカ/カナダ
モーツァルト / ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 K218 (第3日)
チャイコフスキー / ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35 (第1日)
細身のすっきりした音を持つ。
その意味では、私の好きな五嶋みどりやアリーナ・イブラギモヴァあたりと同タイプといえるかも。
ただ、音が細身な分ごまかしがききにくいのか、音程のずれが目立ってしまっている。
チャイコフスキー、冒頭の低音域の半音上昇と下降、ここからしてすでに音程が良くないし、第1主題もカデンツァも安定しない。
終楽章のエピソード主題部のオクターヴ重音もかなりずれている。
また、音色の面では、弱音はよく通り美しいのだが、強音は少し詰まったような感じであまり美しくない。
5.
36 友滝 真由 TOMOTAKI Mayu 1995- 日本
モーツァルト / ヴァイオリン協奏曲 イ長調 K219 (第3日)
ブラームス / ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 (第1日)
ずっしりと安定感のある、分厚めの音が魅力。
ブラームスに合っている。
風格のようなものが出ている、とも言えるかもしれない。
ただ、第1楽章第2主題の重音など、音程はところどころいまいち。
また、冒頭のアインガングでは雑音が混じってしまっている。
モーツァルトも安定感があって良いが、終楽章のトルコ風の中間部でフレーズの終わりが崩れがちなことなど、瑕もある。
6.
22 イリアス・ダビッド・モンカド Elias David MONCADO 2000- ドイツ
モーツァルト / ヴァイオリン協奏曲 ト長調 K216 (第1日)
チャイコフスキー / ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35 (第2日)
音にヨーロッパ的な味がある。
もっというと、ドイツ的と言ってもいいかもしれない。
ドイツ的といっても、アンネ・ゾフィー・ムターのように濃厚ではなく、もっとすっきりしている。
その意味では、私の好きなユリア・フィッシャーに通じるところがある。
ただ、やはり音程がいまいち。
音程がいまいち、いまいちと全員に書いていて気がひけるのだが、感じたことをそのまま書いているのでどうにも仕方がない。
そんなわけで、ファイナル第1~3日をまとめて、私の中で勝手に順位をつけるとすると
1. 11 北田 千尋 KITADA Chihiro 1996- 日本
2. 36 友滝 真由 TOMOTAKI Mayu 1995- 日本
3. 22 イリアス・ダビッド・モンカド Elias David MONCADO 2000- ドイツ
4. 15 シャノン・リー Shannon LEE 1992- アメリカ/カナダ
5. 12 コー・ドンフィ KO Donghwi 1997- 韓国
6. 01 荒井 里桜 ARAI Rio 1999- 日本
というような感じになる。
ただ、一応順位をつけてはみたものの、実力としては皆だいたい横並びに近いように思う。
どこがどうひっくり返っても、あまり不思議ではない。
さて、ファイナルの実際の結果は以下のようになった。
【ファイナル結果】
1位: なし
2位: シャノン・リー Shannon LEE 1992- アメリカ/カナダ
3位: 友滝 真由 TOMOTAKI Mayu 1995- 日本
4位: 北田 千尋 KITADA Chihiro 1996- 日本
5位: イリアス・ダビッド・モンカド Elias David MONCADO 2000- ドイツ
6位: 荒井 里桜 ARAI Rio 1999- 日本
コー・ドンフィ KO Donghwi 1997- 韓国
審査委員特別賞: なし
聴衆賞: 古澤 香理(6月21日)、シャノン・リー(6月22日)、アンドレア・オビソ(6月23日)
私の予想とは少し違っているが、大まかには共通している。
妥当な結果だと思う。
北田千尋のあのゆっくりだが安定したメンコンは、あまり高くは評価されなかったということか。
シャノン・リーは、私は低めに予想してしまったが、私の好きなタイプの音を持つだけに、逆に要求が高くなってしまうのかもしれない。
ピアノ以外の楽器のコンクールを全部聴いたのは久しぶりで、楽しかったし、勉強になった。
コンテスタントの皆様、お疲れ様でした。
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