第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門) 予選 第2日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

宮城県の仙台市で開催されている、第7回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

5月26日は、予選の第2日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第7回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

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予選 第1日 (実演)

 

 

1.

35 佐藤 元洋 SATO Motohiro 1993- 日本

 

スクリャービン/ ピアノ・ソナタ 第9番 op.68 「黒ミサ」

J.S.バッハ/ パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825

フランク/ 前奏曲、コラールとフーガ

 

ピアノはカワイ。

技巧的にスムーズで安定しており、安心して聴ける。

一方で、表現が少し生硬というか、「柔らかな歌心に満ちた」というのとは違う印象を受ける場合もある。

とはいえ、バッハのジーグなどなかなか見事だし(痛いミスは少しあったけれど)、フランクは情熱的で良い。

 

 

2.

29 パク・キョンソン PARK Kyoungsun 1992- 韓国

 

ハイドン/ ピアノ・ソナタ へ長調 Hob.XVI:23

クライスラー (ラフマニノフ編曲)/ 愛の悲しみ

プロコフィエフ/ ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 op.83

 

ピアノはスタインウェイ。

くっきりと明瞭な音作りをする。

プロコフィエフも、怜悧で緻密というよりはやや爆演寄りの解釈ではあるものの、タッチ・コントロールはなかなかしっかりしている。

 

 

3.

21 スタニスラフ・ウラジミロヴィチ・コルチャギン Stanislav Vladimirovich KORCHAGIN 1993- ロシア

 

ショパン/ 幻想曲 ヘ短調 op.49

リスト/ シェイクスピアのセレナーデ S558-9 (シューベルトの歌曲によるトランスクリプション)

リスト/ 戦士の予感 S560-14 (シューベルトの歌曲によるトランスクリプション)

ラヴェル/ ラ・ヴァルス

ラフマニノフ/ V.R.のポルカ

 

ピアノはカワイ。

ロシアの剛腕ピアニストといった印象の、パワフルな演奏。

ラ・ヴァルスのクライマックスに出てくるオクターヴ・グリッサンドなど、なかなか豪快である。

ただ、細部のデリケートな表現にはあまり向かないか。

 

 

4.

32 ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア

 

ハイドン/ ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI:48

プロコフィエフ/ ピアノ・ソナタ 第3番 イ短調 op.28

ヴァイン/ ピアノ・ソナタ 第1番

 

ピアノはスタインウェイ。

彼女もロシアらしいパワフルな音、そして美しい弱音を持つ(ヴァインの第1楽章冒頭緩徐部など)。

ただ、力感が十分な一方、全体的に重さが目立ち、もう少しシャープなキレ味が欲しいところではある。

 

 

5.

08 バロン・フェンウィク Baron FENWICK 1994- アメリカ

 

ハイドン/ ピアノ・ソナタ ロ短調 Hob.XVI:32

ラフマニノフ/ コレルリの主題による変奏曲 op.42

リーバーマン/ ガーゴイル op.29

 

ピアノはスタインウェイ。

ハイドンの終楽章ではやや焦りすぎているというか、テンポの速さに指のコントロールが完全には追いついていない感もなくはない。

しかし、ラフマニノフでは歌心のセンスを、そしてリーバーマンではかなりのキレを見せる。

 

 

6.

22 イ・テヒョン LEE Taehyeon 1993- 韓国

 

モーツァルト/ ピアノ・ソナタ ハ短調 K457

ショパン/ ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 op.35

 

ピアノはスタインウェイ。

モーツァルトでもショパンでも、曲に必要なだけの技術や表現力を十分身につけていて、それらを余裕をもって使用し、余計な色を付け加えることをしない、王道のアプローチ。

あともう少しだけ、何かしらの個性が欲しいような気もするが、それは贅沢な望みか。

 

 

7.

06 アンドレイ・デニセンコ Andrey DENISENKO 1992- ロシア

 

J.S.バッハ/ 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903

ショスタコーヴィチ/ ピアノ・ソナタ 第2番 ロ短調 op.61

 

ピアノはヤマハ。

ロシアらしい美音と、端正な音楽性を持つ。

ショスタコーヴィチにはそれがよく合っており堂に入っているが、バッハではフーガ主題の歌わせ方などやや素朴に過ぎるか。

また、全体的に技巧的な見せ場は少なかったかもしれない。

 

 

8.

43 ユン・ジェナ・ジヒョン YOUN Jenna Jihyung 1999- 韓国

 

シューマン/ フモレスケ 変ロ長調 op.20

ラヴェル/ 夜のガスパール 第3曲 「スカルボ」

 

ピアノはカワイ。

美しい音が聴かれる。

ただ、タッチのコントロールは万全とは言えず、急速部でリズムが鈍になったり、細部が不明瞭になったりすることがある。

 

 

9.

12 平間 今日志郎 HIRAMA Kyoshiro 1998- 日本

 

ハイドン/ ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI:21

プロコフィエフ/ 風刺 op.17

リスト/ 巡礼の年 第2年 イタリア 「ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲」 S161-7

 

ピアノはスタインウェイ。

音の明瞭度が高く、輪郭がくっきりとしている。

プロコフィエフの「風刺」、高松コンクールでも弾いた曲だが、相変わらず切れ味が鋭い。

ダンテソナタでは、リストにふさわしい充実した力強い音が聴かれ、聴きごたえ十分。

 

 

10.

23 ラファエル・リープシュタイン Rafael LIPSTEIN 1995- ドイツ/アルゼンチン

 

ベートーヴェン/ ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 op.109

プロコフィエフ/ ピアノ・ソナタ 第2番 ニ短調 op.14

 

ピアノはカワイ。

ベートーヴェン第1楽章や終楽章第4変奏などで美しい音が聴かれるが、第2楽章や終楽章第3変奏のようにもっさりしている部分があるのが残念。

また、ところどころに恣意的なテンポのタメがあって気になる。

 

 

11.

40 ワン・シンラン WANG Xinran 1995- 中国

 

シューベルト/ 即興曲 変イ長調 D899-4

ベートーヴェン/ ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 op.110

ラヴェル/ 夜のガスパール 第3曲 「スカルボ」

 

ピアノはカワイ。

シューベルトやベートーヴェンは、私の好みからするとロマン的に過ぎる様式ではあるものの、タッチの粒がよくそろっていて美しい。

ラヴェルも、速いテンポによる攻めの姿勢ながら安定感があり、表現力も優れている(同音連打がしばしば不明瞭なのが惜しいが)。

 

 

12.

01 アレキサンダー・リー・アガーテ Alexander Lee AGATE 1994- アメリカ

 

ラフマニノフ/ 練習曲集「音の絵」 第9番 嬰ハ短調 op.33-9

ラフマニノフ/ 練習曲集「音の絵」 第6番 イ短調 op.39-6

コリリアーノ/ エチュード・ファンタジー

ショパン/ マズルカ 第10番 変ロ長調 op.17-1

ショパン/ マズルカ 第13番 イ短調 op.17-4

ショパン/ ポロネーズ 第5番 嬰へ短調 op.44

 

ピアノはカワイ。

最高度のテクニックを持ち、表現は引き締まって緊張感が漲り、聴き手を否応なく惹き込む。

特にコリリアーノがキレッキレで、彼のすごさが余すところなく発揮されている。

一方で、ショパンのマズルカのような技巧的でない小品においても、ささやかながら曲にふさわしい情感を出すことができている。

大変な逸材と言わねばなるまい。

 

 

13.

04 チェ・ホンロク CHOI Hyounglok 1993- 韓国

 

ドビュッシー/ 前奏曲集 第1集:第6曲 「雪の上の足跡」、第7曲 「西風のみたもの」、第8曲 「亜麻色の髪の乙女」

ショパン/ スケルツォ 第4番 ホ長調 op.54

プロコフィエフ/ ピアノ・ソナタ 第2番 ニ短調 op.14

 

ピアノはスタインウェイ。

丁寧なのは良いのだが、いまひとつキレに欠けるところがある。

ショパンのスケルツォやプロコフィエフのソナタは、そうしたキレが重要な曲であるだけに残念。

 

 

14.

28 ジョスカン・オタル Josquin OTAL 1992- フランス

 

シューマン/ 交響的練習曲 op.13

スクリャービン/ ピアノ・ソナタ 第5番 op.53

 

ピアノはスタインウェイ。

こちらもキレに欠け、シューマンの終曲は付点リズムが甘いし、スクリャービンもルバートやタメがあまりにも多い気がする。

緩徐部分もそれほど味わいがあるとはいえない。

 

 

そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私がセミファイナルに進んでほしいと思うのは

 

08 バロン・フェンウィク Baron FENWICK 1994- アメリカ

12 平間 今日志郎 HIRAMA Kyoshiro 1998- 日本

01 アレキサンダー・リー・アガーテ Alexander Lee AGATE 1994- アメリカ

 

あたりである。

次点で、

 

29 パク・キョンソン PARK Kyoungsun 1992- 韓国

22 イ・テヒョン LEE Taehyeon 1993- 韓国

40 ワン・シンラン WANG Xinran 1995- 中国

 

あたりか。

と、一応選んではみたものの、ネット配信だと実演よりも演奏の違いが分かりにくいということもあってか、誰を選ぶべきかけっこう迷う。

 

 

次回は第3日、予選の最終日である。

 

 


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