宮城県の仙台市で開催されている、第7回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。
5月31日は、セミファイナルの第1日。
ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。
ちなみに、第7回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者一覧発表)
(第7回仙台国際音楽コンクール(ヴァイオリン部門) 出場者一覧)
(edy classic 【第7回仙台国際音楽コンクール】新進気鋭のピアニストたち)
(アルベルト・カーノ・スミットが第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門)への出場を辞退)
なお、以下はいずれも広上淳一指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演である。
1.
20 小林 海都 KOBAYASHI Kaito 1995- 日本
ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58
ピアノはスタインウェイ。
音が柔らかく、歌にあふれている。
彼の演奏はモーツァルト風という意味で師ピリスと共通しているものの、ノン・レガートを主体とした軽やかなタッチといい、感性を理性でよくコントロールした弾き方といい、どちらかというと同じくモーツァルトを得意とするピアニスト、シフのほうにより近い気がする。
シフよりはややロマン寄りであり、またシフほどの精密さはないけれど(例えば第1楽章の急速なパッセージや終楽章のオクターヴ跳躍するトリルなどで、音の粒があまり揃っていない)、よく歌う左手など、いくつかの点では匹敵するかも。
2.
30 パク・スホン PARK Soohong 1992- 韓国
ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 op.37
ピアノはスタインウェイ。
作為的でない演奏、自然な感じの美音が特徴。
ただ、タッチ・コントロールに難がある。
第1楽章第2主題直前のトリル風音型や、第1楽章カデンツァのアルペッジョ、終楽章の半音階など、急速なパッセージでタッチにムラが散見される。
また、終楽章の最後の最後で、両手のオクターヴのトレモロを左右交互連打に変えてしまっているのは反則技(「巨匠」がやる分にはいいかもしれないが)。
3.
35 佐藤 元洋 SATO Motohiro 1993- 日本
ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 op.37
ピアノはカワイ。
同曲を弾いた前の人よりも音色は硬質だが、技術的にはより安定している。
音がくっきりと明瞭で、かつ急速なパッセージにおいてもよく表情がつけられている。
ただ、全体的にやや直線的な印象があり、もう少し余裕や遊び心のようなものが感じられるとより良いかも(例えば終楽章ではもう少し軽快さや諧謔性のようなものが欲しい)。
4.
32 ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア
ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58
ピアノはスタインウェイ。
彼女のよく通る力強い音は、ベートーヴェンによく合っている。
予選のハイドン、プロコフィエフ、ヴァインで感じた重さ(キレの不足)は、ベートーヴェンにおいてはそれほど気にならず、むしろベートーヴェンらしさを出すのに一役買っている印象。
第1楽章第2主題直前の右手の半音階的上行パッセージを伴奏する左手のアルペッジョ音型を際立たせているのも面白い試みで、洗練された感じではないが、力強くてこれまたベートーヴェンらしい。
全体的に、余裕というか、風格のようなものが感じられると言ってもいいかもしれない。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは
20 小林 海都 KOBAYASHI Kaito 1995- 日本
32 ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア
あたりである。
次点で、
35 佐藤 元洋 SATO Motohiro 1993- 日本
あたりか。
と、一応分けたけれど、演奏の出来としては拮抗しているように思う。
この3人のうち誰が選ばれても不思議はない。
余談だが、今回のセミファイナルのように、課題曲1曲で一つのステージを構成するのは、私はあまり好ましくないと思う。
その課題曲を得意とする人が有利になってしまう。
今回、2曲から1曲選ぶ方式ではあるけれど、2曲ともベートーヴェンでは大して足しにならない気がする。
ファイナルのように、1曲はモーツァルトの協奏曲だがもう1曲はロマン派~近現代から幅広く選べる、というのなら良い。
あるいは、浜コンのセミファイナルのように、前半はモーツァルトの室内楽だが後半は自由選曲によるソロ・リサイタル、というのも良い。
課題曲1曲だけにするのは、いかがなものか。
とはいえ、「ピアニストたるもの、ベートーヴェンの協奏曲を不得手とするようではけしからん」という考えの人もいるのだろうけれど…。
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