第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門) ファイナル 第3日 および結果発表 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

宮城県の仙台市で開催されている、第7回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

6月8日は、ファイナルの第3日、ついに最終日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第7回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者一覧発表

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予選 第1日 (実演)

予選 第2日

予選 第3日

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

セミファイナル 第3日

ファイナル 第1日

ファイナル 第2日

 

 

なお、以下はいずれも広上淳一指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演である。

 

 

1.

35 佐藤 元洋 SATO Motohiro 1993- 日本

 

モーツァルト/ ピアノ協奏曲 ト長調 K453

 

ピアノはカワイ。

しっとりと抒情的な演奏である。

第1楽章の第2主題のルバートのかけ方など、いかにもロマン的。

同じ「ロマン的」といっても、第1日に同曲を弾いたフェンウィクと比べると、より整ったモーツァルトらしい音楽になっている。

特に速い走句の粒がそろっており、終楽章のコーダ直前の即興的な音階風パッセージなど大変流麗で美しい。

ただ、緩徐な箇所については、終楽章の短調変奏など哀しみの表現がとてもうまい一方、第2楽章の主要主題のようなシンプルなテーマはややそっけないというか、いまひとつ歌いつくせていない。

また、第1楽章の副主題など、抒情的な味はあるがテンポが少しぶれて古典派的安定感に欠けるように感じられる箇所もある。

 

 

2.

12 平間 今日志郎 HIRAMA Kyoshiro 1998- 日本

 

モーツァルト/ ピアノ協奏曲 変ロ長調 K450

 

ピアノはスタインウェイ。

彼特有の、明瞭度の高い、からっとした音がよく活きている。

その意味で、他の人たちのように抒情的な第17番を選ぶことをせず、さばさばしたところのある第15番を選んだのは、彼にとって正解だっただろう。

速いパッセージでは、音が一つ一つくっきりとよく聴こえ、かつ滑らかにそろっている。

第2楽章など緩徐な部分も味わい深く、それでいてべたつくことのない、自然な歌になっている。

古典派音楽にふさわしい奏法。

少しミスがあったのが惜しいが、それを補って余りある魅力を持つ演奏だと思う。

 

 

3.

32 ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア

 

チャイコフスキー/ ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23

 

ピアノはスタインウェイ。

この曲の抒情的な側面を重視した演奏。

ロシア風のよく響く美音も彼女ならでは。

ただ、全体的に音楽の歩みが重く、華麗さに欠ける。

また、技巧面でのぎこちなさを感じる箇所も少なくない。

 

 

4.

04 チェ・ホンロク CHOI Hyounglok 1993- 韓国

 

チャイコフスキー/ ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23

 

ピアノはスタインウェイ。

こちらもややゆったりめの演奏である。

パルホーメンコのようなロシア的な美音は聴かれないが、技巧的な安定度はこちらのほうがやや上。

丁寧なタッチで、品よく歌わせていく。

ただ、やはり華やかさには乏しく、それを補うほどの魅力があるかといわれると難しいところ。

 

 

そんなわけで、今回の4人の演奏を気に入った順に並べると

 

1.  12 平間 今日志郎 HIRAMA Kyoshiro 1998- 日本

2.  35 佐藤 元洋 SATO Motohiro 1993- 日本

3.  04 チェ・ホンロク CHOI Hyounglok 1993- 韓国

4.  32 ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア

 

といったところか。

 

 

そして、ファイナル第1~3日をまとめて、私の中で勝手に順位をつけるとすると

 

1:  12 平間 今日志郎 HIRAMA Kyoshiro 1998- 日本

2:  35 佐藤 元洋 SATO Motohiro 1993- 日本

3:  18 キム・ジュンヒョン KIM Junhyung 1997- 韓国

4:  08 バロン・フェンウィク Baron FENWICK 1994- アメリカ

5:  04 チェ・ホンロク CHOI Hyounglok 1993- 韓国

6:  32 ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア

 

というような感じになる。

1と2は、逆でも良いと思う。

同様に、3と4や、5と6も、それぞれ入れ替えても良い。

ただしこれは、私の中で各人の「モーツァルトの協奏曲」と「ロマン派以降の協奏曲」の演奏の平均をとった順位付けである。

「モーツァルト」の演奏を重視するならキム・ジュンヒョンが、「ロマン派以降」の演奏を重視するならバロン・フェンウィクが、より上位に来る。

採点法によって順位は変わるだろう。

パンフレットを読んだところでは、採点法について記載はなさそう。

 

 

さて、実際の結果はどうなるか。

 

 

 

 

 

―追記(2019/06/08)―

 

ファイナルの実際の結果は以下のようになった。

 

【ファイナル結果】
1位: チェ・ホンロク CHOI Hyounglok 1993- 韓国

2位: バロン・フェンウィク Baron FENWICK 1994- アメリカ

3位: ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア

4位: 佐藤 元洋 SATO Motohiro 1993- 日本

5位: 平間 今日志郎 HIRAMA Kyoshiro 1998- 日本

6位: キム・ジュンヒョン KIM Junhyung 1997- 韓国

 

審査委員特別賞: ツァイ・ヤンルイ CAI Yangrui 2000- 中国

聴衆賞: ダリア・パルホーメンコ(5月31日)、ハン・キュホ(6月1日)、樋口 一朗(6月2日)

 

私の予想とはだいぶ違ったが、そもそも6人とも演奏の出来が近接していたので、これはこれで納得がいかないこともない。

チェ・ホンロクは、確かにモーツァルト、ロマン派ともに丁寧にこなしていたし、しっかりと自身の音楽として消化し完成できていたとは思う。

あとは、好みの問題だろう。

 

 


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