第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門) セミファイナル 第3日 および結果発表 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

宮城県の仙台市で開催されている、第7回仙台国際音楽コンクールのピアノ部門(公式サイトはこちら)。

6月2日は、セミファイナルの第3日(最終日)。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第7回仙台国際音楽コンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第7回仙台国際音楽コンクール(ピアノ部門) 出場者一覧発表

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予選 第1日 (実演)

予選 第2日

予選 第3日

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

 

 

なお、以下はいずれも広上淳一指揮、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演である。

 

 

1.

02 ツァイ・ヤンルイ CAI Yangrui 2000- 中国

 

ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 op.37

 

ピアノはスタインウェイ。

技巧的にかなり安定しており(第1楽章で思わぬ間があいたのはご愛敬)、また各音の明瞭度が高い。

右手も左手もしっかりと抑揚がつけられ、機械的になりがちなパッセージもそうならない。

ソロのときに気になった独特のクセが、協奏曲では抑えられているのも良い(テンポが微妙に伸び縮みする箇所もないではないが)。

ただ、弱音は美しいのだが強音はあまり朗々とは鳴らず、軽めで少しカサカサした感じで、音そのものの魅力にはやや乏しいか。

また、終楽章最後の両手のオクターヴのトレモロでは、左手をトレモロにせずオクターヴ連打に「逃げ」てしまっている。

 

 

2.

38 イリヤ・シュムクレル Ilya SHMUKLER 1994- ロシア

 

ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58

 

ピアノはカワイ。

ロシア風の演奏。

チャイコフスキーか何かを聴いているよう。

弱音はきわめて弱くゆっくりとロマンティックに、強音はできるだけ強くダイナミックに。

これはこれで面白いが、違和感は残る。

また、一音一音をぐっと強く鳴らすような弾き方であり、ロシア的な美音が聴けるが、この曲において重要と思われる軽やかさや流麗さには欠ける。

 

 

3.

18 キム・ジュンヒョン KIM Junhyung 1997- 韓国

 

ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58

 

ピアノはスタインウェイ。

高度なテクニックを持ち、あらゆる音がムラなく滑らか。

そして、その滑らかな音の連なりは決して無味乾燥にならず、しっかりと情感が込められている。

終楽章では多少ミスもあったものの、ここまで完成度の高い演奏においてはそれほど影響しないだろう。

強いて難を言うなら、メロディの歌わせ方やルバートのかけ方が、ベートーヴェンにしてはややロマン派風に過ぎるか。

ただ、キム・カンテの弾く「皇帝」(2018年高松コンクールのファイナル)や、チョ・ソンジンの弾くベートーヴェンの後期ソナタ(リサイタル)も同様であり、これは韓国のピアニズムの特徴なのだと思われる。

逆に、リストやプロコフィエフではしっくりくることが多い。

「ドイツ的」「フランス的」「ロシア的」などとよく言うが、「韓国的」という言い方も可能かもしれない。

 

 

4.

11 樋口 一朗 HIGUCHI Ichiro 1996- 日本

 

ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58

 

ピアノはスタインウェイ。

天真爛漫な感じのする、明るい音色が特徴。

技術的にもまずまず安定している。

ただ、各フレーズ(特に速めのパッセージ)のニュアンスがあまり感じられず、音楽の表情が平板になりがち。

終楽章の主要主題も、大きめの音でぱっと明るく弾くことでひそやかなオーケストラ部分との対比を出したかったのだとは思うのだが、残念ながら晴れやかな歌に満ちたというよりは少しバタバタした感じになってしまっている。

 

 

そんなわけで、第3日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは

 

18 キム・ジュンヒョン KIM Junhyung 1997- 韓国

 

あたりである。

次点で、

 

02 ツァイ・ヤンルイ CAI Yangrui 2000- 中国

 

あたりか。

 

 

第1~3日を併せて、ファイナルに進める人数である6人を選ぶとすると

 

第1日

20 小林 海都 KOBAYASHI Kaito 1995- 日本

32 ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア

 

第2日

08 バロン・フェンウィク Baron FENWICK 1994- アメリカ

12 平間 今日志郎 HIRAMA Kyoshiro 1998- 日本

 

第3日

02 ツァイ・ヤンルイ CAI Yangrui 2000- 中国

18 キム・ジュンヒョン KIM Junhyung 1997- 韓国

 

あたりになる。

ただ、平間今日志郎とキム・ジュンヒョン以外の人は今回みな拮抗している印象で、他の人が選ばれることも十分にありえそう。

 

 

 

 

 

さて、セミファイナルの実際の結果は以下のようになった。

 

【ファイナル進出者】

 

第1日

35 佐藤 元洋 SATO Motohiro 1993- 日本

32 ダリア・パルホーメンコ Daria PARKHOMENKO 1991- ロシア ○

 

第2日

08 バロン・フェンウィク Baron FENWICK 1994- アメリカ ○

12 平間 今日志郎 HIRAMA Kyoshiro 1998- 日本 ○

04 チェ・ホンロク CHOI Hyounglok 1993- 韓国

 

第3日

18 キム・ジュンヒョン KIM Junhyung 1997- 韓国 ○

 

 

なお、○をつけたのは私がファイナルに残ってほしかった6人の中の人である。

6人中4人。

私としては概ね納得のいく結果だった。

平間今日志郎とキム・ジュンヒョンは、危なげなく通過である。

フェンウィクは少し心配したが、選ばれてよかった。

小林海都は残念だったが、類まれな個性を持っており、今後さらに磨きをかけられればより上位も目指せるのではないだろうか。

ツァイ・ヤンルイは、間があいたのとオクターヴ・トレモロの「逃げ」が響いたかもしれないが、まだ若くこれからチャンスもたくさんあるだろう。

佐藤元洋とチェ・ホンロクは、私は選ばなかったけれどそれぞれしっかりと練られ完成されており、選ばれたことに異存はない。

 

 

次回は、ついにファイナルである。

ファイナルの第1日は6月6日(木)に予定されている。

 

 


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