今回は演奏会の感想ではなく、別の話題を。
ポーランドのビドゴシチで先日開催された、第11回パデレフスキ国際ピアノコンクール(その記事はこちらなど)。
結果発表後、どうやらトラブルがあったらしい。
5人のファイナリストのうち第1~3位に入らず入選となったSergey BELYAVSKYが、結果に納得できず抗議し、受賞を拒否したようなのだ。
それに対し、コンクール側は声明を発表し、ファイナルの審査結果詳細を公開した。
(声明はこちら)
この審査結果を表にまとめてみた。
なお、審査員のサインが判別しづらいので、誰が誰に票を入れたかという点はひょっとすると間違っているかもしれない(間違っていたらご指摘下さい)。
少なくとも、得票数はこれで合っているはずである。
これを見ると、第1位を決める投票では、Philipp LYNOVが4票、Sergey BELYAVSKYが4票、古海行子が1票で過半数獲得者なし。
Philipp LYNOVとSergey BELYAVSKYの決選投票で、5票vs4票でLYNOVが第1位に決定。
第2位を決める投票では、Kamil PACHOLECが5票、Sergey BELYAVSKYが2票、古海行子が2票でPACHOLECが第2位に決定。
第3位を決める投票では、Sergey BELYAVSKYが4票、古海行子が3票、Saetbyeol KIMが2票で過半数獲得者なし。
古海行子とSergey BELYAVSKYの決選投票で、5票vs4票で古海行子が第3位に決定。
残ったSergey BELYAVSKYとSaetbyeol KIMが入選となっている。
Sergey BELYAVSKY側の主張は発表されていないため詳細は分からないが、おそらく、
・最初の投票で優勝者LYNOVと同数の4票を獲得していた
・第3位を決める投票で古海行子の3票を超える4票を獲得していた
これらにもかかわらず、第2位にも第3位にもなれず入選となったことが納得いかなかったのだろう。
この結果を見る限り、審査員9人のうち4人はSergey BELYAVSKYを高く評価し優勝すべきと考えていたが、残りの5人はSergey BELYAVSKYを低く評価し入選でよいと考えていた、すなわち評価が真っ二つに割れていたということになる。
審査員9人中5人の評価が低い以上、過半数の票を獲得することは難しい。
ルールに則って審査するとこのようになったということだろう。
とはいっても、コンクール結果にはコンテスタントの人生がかかっており(特に今大会は2位以内なら次回のショパンコンクールでの予備予選免除の特権も与えられた)、必死になってしまうのもわかる。
過半数の得票が必要という規定がなければ、Sergey BELYAVSKYは第2位もしくは第3位になっていただろう。
過半数の得票が必要というのは、先日の浜松国際ピアノコンクールも同様であった(その記事はこちら)。
この規定が妥当か否かについては、私には判断できない。
少なくとも感覚的にはそれほど理不尽な規定ではないように思われるが、過半数でないとはいえ9人中4人という決して少なくない審査員の意向がないがしろにされている、という見方もできなくはない。
このあたり、専門家の意見をぜひ聞いてみたいものである。
なお、上記の審査結果から、古海行子を第1位にすべきと考えていた審査員が1人、また第2位にすべきと考えていた審査員が1人いたことが分かる。
彼女の演奏を高く評価する審査員がいたことが、私には嬉しい。
―追記(2019/12/1)―
コメント欄でお教えいただいたのだが、2人の審査員が、第1位を決める投票ではSergey BELYAVSKYに入れたのに、第2位を決める投票ではKamil PACHOLECに変更したことも問題になっているという。
何らかの意図が働いたのかもしれないが、実際のところは分からない。
同じようなことは、上記の浜松国際ピアノコンクールにもあった。
今回がどうだったかはともかく、こうした「投票先の変更」は結果に重大な影響を及ぼす可能性がある。
よって、上に書いた「過半数得票規定」に加えもう一つ、「複数回投票制」についても、その妥当性が今後議論されることを望みたい。
「複数回投票制」は、浜コンでは同様に採用されているが、ショパンコンクールではそうでない(ここでは詳しく述べないが、点数制を用いることで複数回投票を回避している)。
第1位が分かった上で第2位の投票が行われ、第1・2位が分かった上で第3位の投票が行われるというのは、公正なのか、一体どうなのだろうか。
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