初めての断酒会
初めて断酒会に行ってみた。こっちではAA Meetingと呼ぶらしい。AAはAlcoholics Anonymousの略らしい。Alcoholicsはアルコール依存者、Anonymousは匿名という意味。行こうと思い立ったのは今朝の午前2時。それから、いろんなウェブサイトを検索して都心部で行われている断酒会に参加してみる事にした。参加すると言っても初めてなので何をして良いのかわからない。でもいろんなサイトにも載っているようにこちらの断酒会は強制ではない。なので、誰でも参加できて、何も話さないで聞いてるだけでも良い。名前を聞かれたり、何か発言をする事を求められる事もないそうなので行ってみる事にした。時間は午後12時半。グーグルマップで探してすぐに見つかった。でも、ビルの前に着いたら、心臓がドキドキしてなかなか中入る勇気が出ない。せっかくここまで来たのだから勇気を振り絞ってビルの中へ、中に入るとAA Meetingはエレベータで上がって2階と書いてある張り紙が…。しばらくエレベータの前で、携帯をいじっている振りをして中へ入ろうか悩むこと数分。外から女の人が来て、エレベーターのボタンを押した。「あ、この人もAA Meetingに行くんだ」と思ったら勇気が出て一緒にエレベーターに乗り込む。でも、その人が押したのは8階 当たり前だけど2階以上へいく人もいるよね。もう、行くしかないと腹をくくって2階のボタンを押した。ドキドキする間も無くあっという間に2階へ到着。ドアが開くと、すぐ目の前に50席ぐらいの椅子が並んでおりそのうちの半分以上が埋まっていた。小さなステージが真ん中にありタトゥーだらけの男の人と、金髪の女の人がトイレの場所とか、コーヒーとお茶とクッキーは横にあるのでご自由にどうぞとかを、会場へ来た人へ説明していた。この二人が進行役らしい。私は急いで一番近くの席へ座る。みんながジロジロ見て来ないかとか、進行役の人に何か聞かれないかとか、暫くは心臓がドキドキして落ち着かなかった。でも、誰も周りの人のことは気にしない。話しかけても来ない。ここは、匿名で参加出来、誰も他人のことは詮索してこない。後から仲良くなる人もいるだろうけど余計な詮索をしないのが暗黙のルールなのだろう。参加者の年齢層はバラバラ。70歳近いおじいさんから20歳ぐらいの若い女の子までいた。女性も半分以上。若い学生みたいな人達、若者や中年の男性。小綺麗なキャリアウーマン風な人もいた。私が座ってからもどんどん人は入ってきた。今回は大きなイベントだったのかもしれないがそれでも、こんなにアル中で苦しんでいる人がいるのだと驚く。進行役の人が「地方から来た人や、他の州から来た人はいますか?」「後、断酒記念日などを皆とシェアしたい人は?」と聞いた。数人が手を挙げ、順番に答えていく。全員が最初に"Hi, my name is ○○. I'm an alcoholic." 「こんにちは、私の名前は○○です。私はアルコール依存者です。」と、最初に行ってから「私はXXから来ました。今日で断酒△△日です。」と言っていた。ここでは自己紹介する時に、「私はアルコール依存者です。」と言うのが決まりらしい。それから進行役に名前を呼ばれた人がステージに上がり自分の話をしていった。話の内容は大体が、なぜ自分がアルコール依存症になったか。その症状。辛かった出来事。アルコール依存症と診断された経緯。それからAA Meetingに参加してどう変化があったか。などを約3〜5分間、全部で10人ぐらいの人の話が聞けた。中でも印象深かったのが、40代ぐらいのバシッと全身黒でコーディーネートしていた女性。髪型は耳の下までの刈り上げボブで、大きなイヤリングをつけていて都会のキャリアウーマンという感じの人。彼女は人付き合いが下手で、初対面の人やあまり親しくない人と話をするのが苦手だった。でも、お酒を飲むと誰にでも気軽に話しかけられるようになり楽しかった。しかし、同時に不満も爆発するようになっていった。お酒を飲んでいる時は楽しいけど、翌日は鬱憤がたまるようになり自分以外の全員がクズだと思うようになった。同僚も友達も価値のないクズだと思っていた。でも今では、それは自分がクズだったから周りの人が全部クズに見えたんだ。お酒を飲むことによって、怒りが増すようになり沢山の人を傷つけた。私はまだ断酒を初めて2年だけど、随分と気持ちが楽になった。これからAA Meetingに参加し続けていきたい。と語っていた。彼女は多分、AA Meetingに参加してから初めて人前で自分の経験をシェアしたんだと思う。とても緊張しているのが見ている方にも伝わってきた。でも、ゆっくりと丁寧に言葉を選びながら自分の経験を思い出しながら語っている姿はとても印象的だった。そして、話の内容が私の経験と重なって涙が出てきてしまった。私も前の職場ではいつも鬱憤がたまっていた。他の人と比べて、私はこんなに仕事量をこなしているのに周りの人たちはふざけてばっかり。使えない人たちに囲まれて自分は可哀想な人だと思い込んでいた。自分の態度を思い出すと恥ずかしくて、申し訳なくなる。みんな、頑張ってたのにそれをバカにしていた自分がクズだったのだと思い知る。それに、私もお酒を飲み始めたきっかけは、飲んでいる時はいつもより英語が話せるような気がしていたからだ。英語の文法や知らない単語とか気にしないで、誰とでもペラペラ話せているような気がしていた。実際そうだったのだと思う。私はずっと、他の人から自分の英語が下手なのを指摘されたくなくて黙っていた。私が話すたびに理解されず、聞き返されるのが恥ずかしくてなるべく話さないようにしていた。でも、お酒を飲みだすとそんな事を気にせずに誰とでも話せた。だから、止められなかったんだと思う。でも最近は、飲むと誰かと口論になり次の日にひどい鬱状態になっていた。そんな自分が嫌で嫌で、考えたくなくてまた飲む事を繰り返していた。今回話をしてくれた人達は、病院でアルコール依存症と診断されてリハビリをしている人達だったのだと思う。みんな、話の中で病院で診断されてAA Meetingに参加するように言われたと言っていた。リハビリの一つに人前で自分の経験を語るという項目があって、それをクリアしないとリハビリを卒業できないシステムなのだと思う。それでも、中には20年以上断酒を続けていてAA Meetingに通い続けている人もいた。いろんなミーティングで自分の経験をシェアしている人達なのだろう。今回のAA Meetingはとても興味深かった。私も体験者の話を聞いて泣いてしまったが私の前でも泣いている女の人が何人もいた。前に座っていたおじさんは、参加者が話をしている間、ずーっと下を向いていた。みんな、それぞれ複雑な感情を抱えながら参加しているのだろう。また、機会があったら参加してみたいと思う。