浅草観音の霊験 〔大妻コタカ〕 | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

 “私は十八才の時に東京に出て来まして父の弟、すなわち叔父の家にやっかいになりながら、勉強しておりました。

 ある日、叔母につれられて浅草の観音様におまいりに行きましたが、その大変な人出に山の中からボーッと出て来た私は、ビックリして言葉も出ないほどでした。そして、叔母に「今日は何かおまつりでもあってこんなに人がお詣りに来ているのですか」とたずねますと、叔母に「これは今日だけのことではなく、毎日の事です」といわれて、一層驚き、これほどの人が一生懸命にお願いする以上はきっと何か大きな御利益があるのだろうと深く心にやきつけられました。

 しかし、その後は映画を観に行ったり、十二階へ遊びにいったりするだけで、観音様を念じあげるためにおまいりしたこともなく、無心ですごしておりました。その後結婚して夫が四十一才になりました年、腸癌になり、あらゆる医者にみてもらいましたが、みんな助からないという死の宣告をうけました。その頃、家に出入りしておりました大工さんから『苦しい時の神だのみ』という言葉もあるのだから一緒に願をかけてみませんか、とさそわれ、藁にでもすがる気持でつれていかれたのが、日蓮宗のお寺でした。一生懸命にそこに通って祈念しておりましたら一週間ほどすぎた頃隣におまいりしていた方が、観音様のあらたかな霊験を話して下さいましたので、ふと昔、浅草の観音様におまいりした時のことを思い出してお詣りする気になり、早速三週間の願かけをしました。そしてどうぞ夫の健康を是非よくして下さいと、一心こめて念じ、還りにおみくじをひかせていただきましたところ、『病気は長びけども本復すべし』という卦が出ました。私はこれを読んで元気百倍し、必ず満願の日まで日参いたしますと、心もかるく帰宅しました。それから丁度十日程した日でしたが、又帰りにおみくじをひきますと『病、本復すべし』とはっきり出ていましたのでびっくりもし、うれしくてたまりません。ますます一心に祈念して南無観世音菩薩と念じあげました。こうして満願の日、心を静めて礼拝ののちおみくじをひきますと、どうでしょう、『病本復す』とでております。よろこびいさんで私は心が宙に飛ぶような気持で夫の待つ家に帰って来ました。山階家の門を入り、我が家の方へまいりますと、私どもの借りております家の縁側に山階家の会計主任をしておられる中里という方が腰をかけておられ「だまされたと思って電気をかけてみませんか、上手な人がいるからたのんでごらんなさい」といわれました。早速その方に来ていただきますと、「たたみの目一目くらいずつ、必ずよくなって治りますよ」と元気づけてくださり、電気をかけて帰られました。ところがその後で癌の病人をあつかった方はよく御存じと思いますが、大変くさいおりものが沢山ありました。これは癌がくづれたのでしょう。それから薄紙をはがすように一日一日と元気をとりもどしました。

 目も開けられず、口もよくきけぬほどに衰弱していた夫が、次第に元気を回復してゆく様子は、まことに観音様の御功徳と申上げるほかなく、その妙知力の偉大さを今さらのように眼前に感じさせられたのでした。

 夫が健康になってからは、必ず夫婦揃って十八日には、観音様の参詣をするようになりました。夫が宮内省に行って居りました当時は時間をきめて、お堂の向かって左の角の廊下で待ち合わせする事にして、先に来た者はお堂のランカンにもたれて相手を待ったりした事でしたが、その後夫は五十九才で亡くなりました。

 その後も今日まで私は浅草寺の参詣をかかした事はありません。”

 

(大妻コタカ 「ごもくめし」(大妻学院)より)

 

*この本「ごもくめし」は、大妻女子大学の創立者大妻コタカ先生の自伝で、他にも竜神様の話など不思議な話が載っています。とても信仰心の篤い方だったようです。

 

*大妻先生のご主人が受けられた電気治療について、それがどんなものだったのかは具体的な記述がないためわかりません。大正時代の話なので、エレキテルやジアテルミーとかであったと思われますが、実際に癌が治ったということですし、かなりの効果があったようです。現在も様々な種類の電気治療が行なわれていますが、ただエドガー・ケイシーは、『電気的な治療を受けるときは酒を飲んではならない。電気とアルコールは一緒に働くことができず、組織が焼けてしまう』と言っております。何であれ電気的な治療を受ける際は、お酒は一切飲まないようにせねばなりません。

 

*神仏に病気平癒を祈られる方は多いと思いますが、密教には「准胝(じゅんてい)観音三七年延命法」という寿命を延ばすための秘法があります。これは在家の者にも許されている修法ですので、ぜひ各地の真言宗の寺院で広めていただきたいと思います。

 

・「准胝観音 三七年延命法」

 

 “高野山中学四年の冬、ある本で「三七年延命の秘法」があることを知り、天徳院の金山穆韶先生に伝授をお願いした。先生は炬燵にあたりながら本を読まれていたが、私の乞いを受けてわざわざ衣をつけて本堂に赴き、ローソク六本をつけ香を焚き、丁寧に若輩の私一人のために伝授して下さった。

 その秘法というのは、次のとおりである(金山穆韶大阿闍梨伝)。

 

 未敷蓮華合掌(二中(中指)を少し開く)にして明(みょう)三返。次に、二小(小指)を開き明三返。次に、二無名(薬指)を開き明三返。次に、二指(人差し指)を開き明三返。次に、二大(親指)を開き明三返。次に、二中を開き明三返。次に、八葉印(二大二小をつける)にして明三返。次に、始めの未敷蓮華合掌にして明三返。後は、明は返数を問わず(掌を丸くふくらます事)。真言は、「オーム カマレエー ヴィマレイ シュンデエイ ソワカ」。准胝観世音菩薩を本尊として拝む。

 

 これは在家の方に授けてもよいという法であるから、篤信の方に、長生きしたい方に、授けられたらよいと思う。

 それから私は六十七年も長生きさせて頂いて、こんな有難い事はないと感謝している。この命は仏様から頂いた命だから、仏様のみ心にそうように生きたいと念願してきた。それ以来、「み仏は至心にお願いすれば、必ず救ってくださる」と固く信じている。

 「困った時の仏(神)頼み」ではあったけれど、生きるか死ぬかの境目であったから真剣であった。一筋でお願いした。十一年間もかかったけれど、全快する事が出来た。こんな嬉しい事はなかった。お経を読んで重病が治るなんて、とても信じられない事だろうけれど、本当に救われるのだから、信心という拝むことは有り難い。これは体験しない事にはわからない。”

 

(佐伯泉澄「弘法大師 空海百話 Ⅱ」(東方出版)より)

 

*「明(みょう)」とは御真言のことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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