「写経の話」 | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

(「隅寺心経」)

 “私が日本心霊科学協会に入会したのは昭和四十五年のことでした。

 戦後間もなく、たまたま古本屋で「心霊と人生」を目にしました。その雑誌は古ぼけていて表紙も破れ、何枚か頁も無くなっていました。たしか外国から霊に導かれて帰った、というような記事が書かれていたことを覚えています。

 その雑誌の奥付には浅野和三郎主宰・大正十二年発行とありました。その雑誌がどこから、どういう経緯で出されているのか知りたかったのですが、よくわかりませんでした。ある時、生長の家の月刊誌に日本心霊科学協会の広告が掲載され、すぐに入会しました。会員になって二年ぐらい経った時、写経を五百枚ぐらい書いた時に、自分の家の何代か前の先祖の因縁がわかったという記事が会誌に載り、私もときどき写経をするようになりました。

 昭和五十年でしたが、私は夏風邪を引いて三カ月経っても治りません。それで自分の年齢と同じ数の写経を書いてお寺に納めましたら、不思議にもぴたりと治りました。友人もその時、私と同じ状態で二カ月も夏風邪が治らないといいますので、写経を書いたらと話しました。自分の年の数に一枚だけ、余計に書くのよと伝えました。友人から私もすぐに治った、とのお礼の電話がありました。

 その時の話では、母方の伯父が八十歳で寝たきりになり、家族がお襁褓の世話をして、もう十年も経つとのことでした。九十歳の今も、お襁褓の世話で困っているというのです。私としては何の役にも立たないのですが、供養をかねて伯父さんの年の数だけ写経をしてみたらどう、とすすめました。後日、友人が顔色を変えて私を訪ねてきました。伯父さんの写経を書き終わって一カ月もしないうちに、その病人が亡くなったというのです。「私、何も悪いことしてないのよ」と友人は言い、びっくりしていました。また、別の知人の長男が大学入試をめざして頑張っているが、ちょっとあぶないかもしれないというので、やはり写経をすすめました。結果は見事に合格したということでしたが、そのお子さんは良く勉強の出来る人なので、恐らく実力で合格できたのでしょう。

 因果関係はともあれ、好結果にはげみがついて、私も先祖供養に千巻の写経を始めることにし、毎日一枚ずつ書き出しました。書き始めて七枚書いた翌日、あたりはまだ暗い明け方に不思議な出来事が起きました。美しい夢を見、同時に美しい玉を転ばすような声で「北斗妙見」と聞こえる声が凛と聞こえてきました。

 その頃の私は、「妙見」と言われても何の事かわかりませんでしたが、その声の美しさだけははっきりと伝わってきました。すぐに夢の光景を描いておきました。その後もう一度、同じ夢を見、その夢の中で石仏が山の上までびっしり立ち並んでいるのです。そんな山があるのだろうかと思いました。のち上京したおり、五十九年三月に、大西弘泰先生に石仏が沢山ある山、修那羅山に連れて行ってもらいました。そこはまさに、夢の中で見た光景でした。千枚の写経は五十九年七月に書き上がり、家に置いておきました。

 また、本部の霊能者開発研修講座に出るため上京した時には、大西先生の勉強会にも七年間出席させて頂きました。先生のお宅の勉強会には毎回、早出昭三郎先生と榎本幸七先生がお出でになり、大西先生がお呼びになったのでしょう、いつも中戸永子先生や小池喜代志先生などが出席されました。勉強会で私の指導霊が、平清盛公に仕えた局であると名乗って出てきました。中戸先生からも老女の局であると名前を教えてもらいました。

 昭和五十八年、千枚の写経を浅草観音様に納めるために岡山に取りに帰り上京したおり、あの夢の絵を勉強会で先生方に霊査していただき、三つの美しい竜宮城の山は玉依姫、乙橘姫、大和姫とわかりました。

 この勉強会で、次のようなメッセージを伝えられました。

 

  安芸の宮島を訪れよ、見事なるものをとらす、

  わらわの、もとにやよ、いらしめよ、はやはや

  今こそきやれ安芸の宮島

 

  さざ波たちて神はいでぬる、

  はやはやのぞきたまえ

  安芸の宮島見事もみじ、楽しき今日の酒はよい

  おのれと酌み交わしたく、待っているぞえ

 

 それで昭和六十二年一月二十五日、広島県宮島にお詣りに出かけました。列車が広島に入ると、山の方は雪が真っ白に積もって樹木はまったく見えません。ところが広島駅に着いてみると日が差していて、道路の雪も解け始めています。宮島に渡る船に乗ると、また雪が降ってきました。宮島について船を降りると雪はやんでいて、道は黒々としています。宮島は雪が降らなかったのかと思いました。社務所でお酒を買って社殿に昇りお供えして、「まいりました」と御挨拶をしておがんでいました。

 大雪のせいだったのでしょう、お詣りしているのは私一人です。すると巫女さんが現われて、私に盃を差し出し御酒をついでくださいました。心ゆくまでお詣りして帰りの船に乗ると、またぱらぱらと雪が舞ってきました。

 その後も私は写経をつづけました。娘の病気を治すための願掛けの写経、私と孫達の守護霊向上のための写経、守護霊様の梵字八百八枚などを書いたりしました。婿が大怪我をした時も写経し、おかげで早くよくなりました。昭和六十三年、家族孫達のいろいろなお願いをした写経が三百八十枚ほどたまっていたのでお焚き上げして塩とお酒をかけて大木の根元に埋めました。

 翌日の統一会に出席すると、

 「あなた、何をしたの。あなたの囲りは百花繚乱、花に囲まれているわ」

と霊査されました。

 今でも写経はつづけ、お寺に納めたりお焚き上げしたりしています。私は偶然、写経をするようになったのですが、写経とご縁があったのでしょうか、すばらしい体験を積ませていただいております。”

 

(「心霊研究」平成14年11月号 赤木甫千子『写経の話』)

 

*財団法人日本心霊科学協会(東京都新宿区上落合)の本部や各地の支部で開かれる毎月の例会では、霊能者による霊査や精神統一会、シルバーバーチなどの読書会等が行なわれています。また毎年の祖霊祭では会員の先祖の霊の供養が神式あるいは仏式で行なわれます。

 

*財団法人日本心霊科学協会のHP

 

*活版印刷が発明される前であれば、経典の筆写、つまり写経には重要な意味があったであろうけれども、もはや現代においては無用の行為ではないのか?いちいち筆写せずとも、機械で印刷すれば済むことではないか?という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そういった、言葉や文字をまるで記号のように、単なる情報伝達の手段とみなすことは、シュタイナー的に言えば、極めてアーリマン(悪魔)的な毒された思考によるものであって、正しい認識ではありません。そもそも、仏教の経典は既に奈良時代から版木で刷られていましたし、もとから写経は『祈り』として行なわれるものでした。言葉や文字は本来霊力を帯びておりますし、むしろヨハネ伝の冒頭に「コトバは神であった」とあるように、神的な存在が言葉や文字として顕現されているというのがより正確な言い方かもしれません。ならば、聖典の読誦や筆写に神仏が感応されるのは当然で、空虚で低俗な内容の言葉や文章が溢れ、もはや言葉が俗的なものへと貶められている現代においては、そういった聖なるものの本来の表現としての言葉や文章、つまり聖典の読誦や筆写にはなおさら重要な意味があります。出口ナオ開祖は『お筆先を書き写したなら、それが誰の手によるものであっても、一つ一つの文字すべてに神様が宿っておられる』と言われましたが、私が子供の頃は、文字にはすべて文殊菩薩が宿っていると教えられ、活字のあるものは、たとえ新聞紙であっても足で踏むと怒られました。ただ写経には聖典の読誦のような言霊の作用はありませんが、紙には経文とともに念がこもりますし、書けば書くほど目に見えるかたちで蓄積されます。書き上げた写経を纏めて寺院に奉納したり、お焚き上げして三界万霊に供養すれば、それが多ければ多いほど神仏の感応は強いものとなります。

 

*写経の動機や目的は人によって様々だと思いますが、先祖供養や病気平癒だけでなく、子宝祈願とか、良縁祈願のための写経をされる方もいらっしゃいます。私は、これまでに何人か写経をしておられる方と知り合いになりましたが、皆何らかのおかげを受けておられました。

 

*野口整体の野口晴哉先生は、『失神した人が意識を回復するとき、まず指が動いてそれから他の部位が動くようになる、身体の動きはまず指から始まる、そのような順序がある』として、リハビリの最初の動作として、まずは『指を動かす』ようにしたらよい、ということを言われていました。ならば墨を擦ったり、微妙に筆を動かしたりする写経は、運動機能の回復、あるいは維持にも効果があるはずですし、さらに写経には神仏のサポートもありますので、老化防止やリハビリとしても優れたものだと思います。

 

*写経の奉納は、高野山奥之院や薬師寺、浅草の浅草寺など各地の寺院で受け付けており、いまや写経用紙も通販で購入できます。お手本が薄字で印刷されて、その上を筆でなぞるだけでよい写経用紙もありますので、誰にでも、たとえ字が下手であっても簡単にできます。また「延命十句観音経」のように非常に短くてあっという間に書けるお経もあります。ただ一枚だけでも心を込めて写経して寺院に納められれば、それだけでも仏縁を得ることができますし、神仏もお喜びになると思います。

 

*高野山 金剛峯寺

 

*奈良 薬師寺

 

*浅草 浅草寺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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