自然治癒力の驚異 | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

帯津 これは最近、非常に印象に残っていることなんですけど、三十代の女性が肺がんになりまして、これはタバコを吸っている人でも何でもないので本当に不幸だと思うんです。大きな病院で抗がん剤をやったわけです。抗がん剤を七クールとか八クールとかやって、終わったけれどもがんが消えないわけです。それでこれはもう効かない。ほかにやりようがない。やりようがないからどうしようもないわけです。 

 その彼女が私のところへ来て、西洋医学ではもうやりようがないという。じゃああんたどうするの、入院するかと言ったら、子どもが小さいから入院したくない、通って来るという。通ってできることは漢方薬があるから、その二つを飲んで、病院へ来たときは気功をやりなさいと言った。いつも小さい子を連れて来るんです。だから気功も思う様にできなかったんですけれど、それでも二年間くらいがんを持ったまま通って来ていました。

 いつもちょっと青白い顔をして、こっちもいつもハラハラしていたんですけれど、でも何とか通って来ました。そうしたら去年の夏に突然悪くなった。これも心と関係があるんですが、何かプライバシーに関する問題ですけど、家庭のなかで大きな事件があったんです。ガーッと悪くなって水がたまっちゃって、もう呼吸困難で救急車で来たんです。救急車で入ったから、これはちょっとまずいかなという気になっていたら、二日くらいしたら本人がハワイに行くと言うんです。それはもう予約してあったから。でも行けるような状態ではないんです。ほかの人はみんな反対しているわけです。だけど私はどうもこれが最後じゃないかなという気がしたものですから、行かせたほうがいいよと言ったんです。途中で倒れてもいいのだったら行ってきなさいということで行ったんです。

 そうしたら案の定、飛行機のなかで苦しくなった。ホノルルに着いてすぐ病院に直行して入院した。ハワイに入院に行ったようなものだったんです。それで胸水を取って応急処置をしたから楽になるでしょう。そうしたらすぐ私のところへ電話がかかってきたんです。もうハワイの病院にずっといるわけにいかないから、すぐ帰るからベッドを取ってくれという。それで帰ってきたけれど、胸水はたまる、腹水はたまる、全身のむくみで、起き上がれる状態でもなく、食べられないから点滴を二十四時間やっていたんです。

 ところが、あるときに朝の気功に私が行ったら、彼女が来ているんです。どうやって道場まで来たんだと笑うくらいなんです。点滴も車のついたものにぶら下げて気功をやるんだという。そして気功をやって終わったら、崩れ落ちるようにして倒れちゃった。死んじゃったかと思ったんです。そうしたら死んでもいない。それでちょっと休んでいれば大丈夫だというんですが、ほかの患者さんが心配してみんな取り囲んでいるわけです。

 そうしたらまた次の日も来るんです。だから私はもうやめなさいと言ったんです。気功はそんなに危険な状態でやるものではないからと言ったんですが、ものすごい怖い顔をして、「先生、小さい子どもが三人いて私は死ぬわけにはいかないんです。だから気功をやるんだ」というわけです。そう言われちゃったのではしょうがない。毎日来るんです。そうしたらだんだん状態がよくなってきたんです。階段の上がり方も、むくみも少しずつ取れてきた。それでもまだ本当じゃないんですが、かなり顔色もよくなってきた。

 何とあるとき、新しいバケツに粗塩を入れたものをベッドのわきに置いて、そのなかに両足を突っ込んでもんでいるんです。「何をやっているんだ」と言ったら、何とか療法と言って、これをやるとがんが治ったという話を聞いたという。本当かなと思ったけれど、まあとにかく害もないし安いし、だからやってみなさいよと言ったら、これをやり出したらまたぐんぐんよくなるんです。それでもうほかの患者さんも注目しているわけですね。そしてよくなってきたら、ほかの患者さんもみんなバケツと塩を買って来てみんなやり出したんです。

 そしてその女性は退院しちゃったんです。がんはあるんですけど。それは去年の八月ですから、もう一年ですよ。この間、また病院に来たんです。私の外来というのは予約制でなかなか取れないので、いばって言うわけではないんですが、二か月か三か月医に一回しか診てあげられないんです。その間はほかの先生が診ているんです。私の外来へ来たら、日焼けしたたくましい顔をしているんです。ここに万歩計なんかつけちゃってね。これなんかは自然治癒ですね。だって大したことはやってないんですから。気功をやる志と……。気功だって、気功になってないんですよ。苦しくてやっているんですからね。治ろうという志だけです。しかもそれが自分のためではなくて子どものためというところが何とも言えないと思うんです。あとはその粗塩でしょう。この間、会ったときも「気功、やってる?」と言ったら、「子どもが手がかかるから、気功はなかなか」と。「じゃあ塩屋さんのほうはどうしてるの?」と言ったら、塩屋さんはやっていると言うんです。相変わらず足を突っ込んで(笑)。

 だからこういうのを見ると、自然治癒力というのが働いたとしか思えないんですね。西洋医学だけをやっている先生にそんなことを言うと、それはたまたまそうなったんだと言うんだけど、たまたまにしてはそういうケースはかたちは違いますけどけっこうあるんです。だから私は自然治癒力というのはあると思う。先ほど紹介した葉室宮司の『〈神道〉のこころ』を読んだとき、本当に思わず「これだ!」と思っちゃったですけどね。あれは典型です。ああいうことがだれにでも、いつでも起こるというわけにいかないところが、なかなか大変なんですけれど、可能性はだれでも持っていると思うんです。そういうことでうちの患者さんをいつも励ましているんです。

 

(帯津良一/鎌田茂雄「〈気〉と呼吸法」(春秋社)より)

 

*この本「〈気〉と呼吸法」は、西洋医学に気功を取り入れておられる帯津良一先生と仏教学者の鎌田茂雄との対談本で、内容は題名の通り、気や呼吸法について、医療や武術、静坐法などと絡めて話を進めておられます。私には「延命十句観音経」と気功の関係についての話が特に興味深かったのですが、考えてみれば「延命十句観音経霊験記」を書かれた白隠禅師は、肺結核と神経衰弱を『内観の法』や『軟酥の法』なるもので克服されており(「夜船閑話」)、「延命十句観音経」を唱える際にも、そのような体験が影響しているのは当然かも知れません。ここではとても紹介しきれませんが、いろいろと面白い話が数多く載せられている本です。

 

*文中の肺がんの女性が行なっていた「塩足湯」(もしかしたら粗塩だけで湯は入れてないのかもしれません)については、冷え性の改善や、デトックスの効果があると言われているようですが、詳しくはわかりません。もし本当にガンを治す効果があれば凄いのですが。

 

*この「自然治癒力」ですが、おそらく本人の「治ろうとする意志」によって発動するのではないかと思われます。出口王仁三郎聖師は、『泣く病人は助からぬ』と言われましたが、これは逆に言えば、泣かない病人であれば助かる可能性があるということです。

 

 

・漢方の健康観

 

 “漢方の健康観から見れば、人間は自然の子であり、親と同じリズムで呼吸したり、鼓動を打ったりしながら成長する生体でもある。成長しながら、自然から常に異物としての病原が侵入しているわけである。これは、漢方の専門用語で「邪気」という。その「邪気」に対抗する力が「正気」である。
 したがって、生体というものは、この邪気と正気との間で展開される激しい攻防戦の戦場であり、その戦況をそのつど細かく報道するステーションでもあるとも考えられる。
 俗に解説すれば、邪気が生体に侵入し、正気より優勢にいる時を病気といい、正気が生体から邪気を完全に駆逐した状況を健康と理解してよい。が、残念ながら、100%完全な真空状態が出来ないように、純粋な健康もありえないものである。これは漢方の名言

 「無無病之人(むむびょうのひと、病気を持っていない人はいない)」

の所以である。
 また、いかに邪気に全身を被われたとしても、その生体がまだ生きているのであれば、それは正気が残っている証拠である。ならば、幽(かす)かであっても、積極的に正気を動員して邪気と戦い、そして克つことは、患者の使命であると共に、医者の倫理であると昔から戒められている。
 これが

 「無無治之病(むむちのやまい、治療の出来ない病気はない)」

の所以である。”

 

(劉大器「死諌之医(しかんのい)」(扶桑社)より)

 

・適切な看護  〔ルドルフ・シュタイナー〕 

 

 “そのような病気の際に重要なことは、あれこれの薬によって手助けもしなければならないのですが、何よりも体を本当にそっとしておくことです。体をベッドに横たえて、部屋が正しい方法でいつも一定の温度と一定の光を保つといったことに配慮するのです。平穏はただ大の字になって横になることだけでもたらされるのではないのです。熱があったかと思うと、すぐに寒がるときにも、人間は落ち着きません。

 しかし、体を一定の温度と一定の光に委ねるならば、肺炎や肋膜炎や腹膜炎のような最悪の発作でさえも、耐え続けることができるのです。人間は、それができるのです。
 ですから、私がいま描写したような最悪の病気の場合には、治療よりも適切な看護が重要なのです。適切な看護こそ、大きな価値をもっているのです。


(ルドルフ・シュタイナー「健康と病気について」(ホメオパシー出版)より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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