保湿成分「ヘパリン類似物質」って、いったい何?
こんにちは。橋本です。
病院でアトピーや乾燥肌の治療といえば、よくヒルドイドという保湿剤が処方されます。
で、何気なくヒルドイドのパッケージを見てみると、成分に「ヘパリン類似物質(るいじぶっしつ)」と書かれていますよね。
でも、普段あまり聞き慣れない、このヘパリン類似物質。
ヘパリン類似物質とは、いったい何なんでしょうか?

健康なブタちゃんから作られる
ヒルドイドの有効成分は、ヘパリン類似物質(るいじぶっしつ)といわれる成分です。
このヘパリン類似物質が、ヒルドイドの保湿能力の大きな部分をになっているわけですね。
実際のヒルドイド製品には、ヘパリン類似物質(ヘパリノイド)が0.3%という薄い濃度で配合されています。
現在使われているヘパリン類似物質は、ブタの気管軟骨や肺などの臓器から抽出されたものを原料に作られています。
以前は、牛の臓器なども原料にされていたようですが、過去に狂牛病(BSE)が問題になったことで、安全性を優先して使われなくなりました。
ムコ多糖類とは?
ヘパリン類似物質というネーミングは、「ヘパリンに構造が似ているもの」という意味で付けられています。
ヘパリンという物質は、人間の肝臓でも作られていて、ムコ多糖類とよばれる物質、仲間のひとつ。
健康食品でもよく耳にする、ヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチン、フコイダン、さらにはヤマイモのネバネバ成分なども、ムコ多糖類の仲間です。
ムコ多糖類は、濃いゼラチンのような、粘り気のある物質。
「多糖」の名前のとおり、糖が長くつながった鎖のような構造をしていて、この糖のつながりが、「水分を吸着しやすい」というのが、大きな特徴でもあります。
糖のつながりが2つだけという、糖の鎖が短い、いわゆる「砂糖」が、湿気をよく吸う。
カチカチに固まった砂糖を普段目にすることでも、「糖が長くつながったものが、水分を吸着しやすい」というのを、なんとなく想像できるかもしれませんね。

なぜ、ヘパリンではなく、ヘパリン類似物質なのか?
ただ、ムコ多糖類のひとつであるヘパリンは、糖のつながり、鎖が長いため、分子量が大きく肌に浸透されません。
ただのヒアルロン酸を肌に塗っても、なかなか浸透していかないのと同じ原理ですね。
そこで、1949年にドイツの製薬会社が開発したのが、ヘパリン類似物質。
ヘパリンに構造を似せた成分を開発したわけですが、このヘパリン類似物質は、糖のつながりが短くなるように工夫したことで、肌に浸透させていくことができます。
肌の水分保持やバリア機能をサポートする
アトピーや乾燥肌の治療にとって、ヘパリン類似物質の何がいいのか?
最大のメリットは、抱水力(ほうすいりょく)です。
抱水力とは、水分を抱え込む作用、水分をキャッチする力ですね。
一般的に保湿剤というと、「保湿力」とか「保水力」とかいう言葉が使われますが。
このブログでは、保水力を「抱水」と「フタ」という2つの機能でわけて見ています。
ヘパリン類似物質が肌に浸透すると、肌の中で本来、蒸発するはずであった水分をキープしてくれる。
抱きかかえてくれる。
それによって、もともと肌の中で、水分保持やバリア機能にかかわっている、セラミドや天然保湿因子(NMF)の働きをサポートしてくれるのではないかとみられています 1, 2) 。
この抱水力があるからこそ、ヒルドイドが保湿剤として、すぐれているわけなんですね。
血液の流れを良くする
そして、もうひとつ。
ヘパリン類似物質の第2の役割は、血行促進(けっこうそくしん)。
血液の流れを良くすることです。
ヘパリンは、血液を固まらせないようにする医薬品としても使われていますが、ヘパリン類似物質にも同じような作用があります。
この血行促進の作用を利用して、ヘパリン類似物質入りの保湿剤は、「しもやけ」の治療にも使われます。
それから、ケガをして傷ができたところに塗って、傷跡を目立たなくさせるのに使われたりします。
血行を良くして、傷の回復をスムーズにさせる狙いですね。
保湿成分の特徴を知ることの意味
保湿成分が、生きた人間の皮膚の中でどんなふうに働いているか?
これを実際に見て確認するのは、じつはかなり難しい作業です。
そして、保湿剤の本当の効果を測定したり調べたりするのも、想像以上に難しかったりします。
そのため、どの保湿剤に効果があって、どんな使い方がいいのかというのは、まだまだわからない部分も多く、ランダム化比較試験も少ないのが現状です。
それに、保湿剤は、「肌に合うか合わないか」という、個人差があります。
そういったことも考え合わせて、アトピーや乾燥肌のケアとして新たに保湿剤を試すなら、効果は冷静に見ていく必要があります。
それには、肌のしくみ、それから保湿剤のどんな成分が、どんなふうに働くかということを、きちんと知っておくことも大事になってきます。
たとえば、ヘパリン類似物質が肌に浸透していくことで、肌の水分保持やバリア機能をサポートする。
肌内部の抱水力を上げるということを知っていれば、ヒルドイドの使い方も、より適切になってくるわけですね。
参考文献:
1) 土肥 孝彰, 石井 律子, 細川 佐知子, 平野 尚茂, 成瀬 友裕: ヘパリン類似物質の保湿作用メカニズム-角層中結合水と角層ラメラ構造を中心に-. 西日皮 69(1): 44-50, 2007.
2) 土肥 孝彰, 上田 勇輝, 石井 律子, 赤塚 正裕: アトピー性皮膚炎治療外用剤と保湿剤の実験的ドライスキンモデルの皮膚バリア機能に及ぼす影響-ヘパリン類似物質含有製剤を中心に-. 西日皮 74(1): 48-56, 2012.









