源氏物語イラスト訳【末摘花247】そら拭い
そら拭ごひをして、
「さらにこそ、白まね。用なきすさびわざなりや。内裏にいかにのたまはむとすらむ」
と、いとまめやかにのたまふを、いといとほしと思して、寄りて、拭ごひたまへば、
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)と逢瀬を迎えた光源氏。返歌もできない教養のなさや、雪明かりの朝に見た彼女の容貌に驚き、幻滅します。しかし、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏19歳正月、末摘花邸に通った翌朝、若紫とお絵かきをして遊びながら、彼女の赤鼻を思い出し、自分の鼻を赤く塗ってみました。
源氏物語イラスト訳
そら拭ごひをして、
訳)拭い取るまねをして、
「さらにこそ、白まね。
訳)「少しも、白くならないぞ。
用なきすさびわざなりや。
訳)つまらないいたずらであったなあ。
内裏にいかにのたまはむとすらむ」と、いとまめやかにのたまふを、
訳)帝におかれてはどんなふうにおっしゃろうとするのだろうか」と、とても真剣におっしゃるのを、
いといとほしと思して、寄りて、拭ごひたまへば、
訳)非常に気の毒にお思いになって、近寄って、拭いなさると、
【古文】
そら拭ごひをして、
「さらにこそ、白まね。用なきすさびわざなりや。内裏にいかにのたまはむとすらむ」
と、いとまめやかにのたまふを、いといとほしと思して、寄りて、拭ごひたまへば、
【訳】
拭い取るまねをして、
「少しも、白くならないぞ。つまらないいたずらであったなあ。帝におかれてはどんなふうにおっしゃろうとするのだろうか」
と、とても真剣におっしゃるのを、非常に気の毒にお思いになって、近寄って、拭いなさると、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【そら拭(ぬ)ごひ】…ぬぐい取るまねをすること
■【を】…対象の格助詞
※【そら―】…うその~。いつわりの~(接頭語)
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【さらに~ず】…少しも~ない(「さらに」は陳述の副詞)
■【こそ】…強意の係助詞(結び;「ね」)
■【白(しら)ま】…マ行四段動詞「しらむ」未然形
※【白(しら)む】…白くなる。明るくなる
■【ね】…打消の助動詞「ず」已然形
■【用なき】…ク活用形容詞「やうなし」連体形
※【やうなし】…つまらない(「やく(益)なし」に同じ)
■【すさびわざ】…いたずら。慰み毎(「すさびごと」に同じ)
※【すさぶ】…慰み楽しむ
※【わざ】…こと
■【なり】…断定の助動詞「なり」終止形
■【や】…詠嘆の間投助詞
■【内裏(うち)】…宮中。帝
■【に】…対象の格助詞
■【いかに】…どんなに
■【のたまは】…ハ行四段動詞「のたまふ」未然形
※【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【む】…推量(意志)の助動詞「む」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【す】…サ変動詞「す」終止形
■【らむ】…現在推量の助動詞「らむ」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【いと】…とても
■【まめやかに】…ナリ活用形容動詞「まめやかなり」連用形
※【まめやかなり】…まじめだ。真剣だ
■【のたまふ】…ハ行四段動詞「のたまふ」連体形
※【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【を】…対象の格助詞
■【いと】…とても。非常に
■【いとほし】…気の毒だ
■【と】…引用の格助詞
■【思し】…サ行四段動詞「思(おぼ)す」連用形
※【おぼす】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒若紫)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【寄り】…ラ行四段動詞「寄る」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【拭(ぬ)ごひ】…ハ行四段動詞「ぬごふ」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【本日の源氏物語】
光源氏が、自分の鼻を赤く塗って、若紫と戯れている場面です。
ほほえましいですね!
「~むとすらむ」という表現は、『源氏物語』のなかでもよく出てきますが、これをそのまま直訳しようとすると、かなり不自然になってしまいますね;;
口語訳は、決して単純な足し算ではないのだと実感する表現ですよね。^^;
「~だろうか」とか、「~だろうかと思う」くらいの訳出でもいいかと思います。
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。