源氏物語イラスト訳【末摘花243】心から
「心から、などか、かう憂き世を見あつかふらむ。かく心苦しきものをも見てゐたらで」と、思しつつ、例の、もろともに雛遊びしたまふ。
【これまでのあらすじ】
故常陸宮の姫君(末摘花)と逢瀬を迎えた光源氏。返歌もできない教養のなさや、雪明かりの朝に見た彼女の容貌に驚き、幻滅します。しかし、縁があって逢瀬を迎えたのだから、一生彼女の面倒をみようと心に決めます。光源氏19歳の年末に、へたな和歌と野暮ったい衣装が贈られ、源氏はさらに閉口します。正月過ぎた頃、末摘花邸に久々に訪れ、その後二条院に帰宅します。
源氏物語イラスト訳
「心から、などか、かう憂き世を見あつかふらむ。
訳)「自分の心から起こって、どうして、このようにわずらわしい男女の仲をもてあましているのだろうか。
かく心苦しきものをも見てゐたらで」と、思しつつ、
訳)このようにいじらしい者をも見ていないで…」と、お思いになりながら、
例の、もろともに雛遊びしたまふ。
訳)いつものように、一緒にお人形遊びをしなさる。
【古文】
「心から、などか、かう憂き世を見あつかふらむ。かく心苦しきものをも見てゐたらで」と、思しつつ、例の、もろともに雛遊びしたまふ。
【訳】
「自分の心から起こって、どうして、このようにわずらわしい男女の仲をもてあましているのだろうか。このようにいじらしい者をも見ていないで…」と、お思いになりながら、いつものように、一緒にお人形遊びをしなさる。
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■【心から】…自分の心から起こって
■【など】…どうして
■【か】…疑問の係助詞
■かう】…このように(「かく」のウ音便)
■【憂き世】…わずらわしい男女の仲
※【憂(う)し】…つらい。いやだ。わずらわしい
※【世(よ)】…男女の仲
■【を】…対象の格助詞
■【見あつかふ】…もてあます
■【らむ】…現在の原因推量の助動詞「らむ」連体形
■【かく】…このように
■【心苦しき】…シク活用形容詞「心苦し」連体形
※【心苦し】…気の毒だ。いじらしい
■【もの】…者。ここでは、若紫をさす
■【を】…対象の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【ゐ】…ワ行上一段動詞「居る」連用形
■【たら】…完了(存続)の助動詞「たり」未然形
■【で】…打消接続の接続助詞
■【と】…引用の格助詞
■【思し】…サ行四段動詞「おぼす」連用形
※【おぼす】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【つつ】…継続の接続助詞
■【例の】…いつものように
■【雛(ひひな)遊び】…人形遊び
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
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【本日の源氏物語】
末摘花のもとから帰宅した光源氏――。
若紫は、まだ光源氏と男女の関係ではありません。そのような年齢ではないからこそ、光源氏はこのような夜歩きをするのですね;;
しかしながら、末摘花を見たあとでは、彼女のそのかわいらしさが、いっそう愛おしく、またいじらしく感じ、さらに愛情が深まっているようです。
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