源氏イラスト訳【若紫389】嫉妬
「かこつべきゆゑを知らねばおぼつかないかなる草のゆかりなるらむ」
と若けれど、生ひ先見えて、ふくよかに書いたまへり。
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【源氏物語イラスト訳】
「かこつべきゆゑを知らねばおぼつかな
訳)「嘆かれるはずの理由が分からないので気になるわ。
いかなる草のゆかりなるらむ」
訳)わたしはどのような方のゆかりであるのだろうか」
と若けれど、生ひ先見えて、ふくよかに書いたまへり。
訳)と、幼稚だけれど、将来の成長が思いやられて、ふっくらとした字で書きなさっている。
【古文】
「かこつべきゆゑを知らねばおぼつかないかなる草のゆかりなるらむ」
と若けれど、生ひ先見えて、ふくよかに書いたまへり。
【訳】
「嘆かれるはずの理由が分からないので気になるわ。
わたしはどのような方のゆかりであるのだろうか」
と、幼稚だけれど、将来の成長が思いやられて、ふっくらとした字で書きなさっている。
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■【かこつ】…嘆く。不平を言う
■【べき】…推量(当然)の助動詞「べし」連体形
■【ゆゑ】…理由
■【を】…対象の格助詞
■【知ら】…ラ行四段動詞「知る」未然形
■【ね】…打消の助動詞「ず」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【おぼつかな】…ク活用形容詞「おぼつかなし」語幹
※【おぼつかなし】…気がかりだ
■【いかなる】…どのような
■【草】…見立て。ここでは光源氏の想い人(藤壺女御)をさす
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【ゆかり】…縁故。かかわり。関係
■【なる】…断定の助動詞「なり」連体形
■【らむ】…現在推量の助動詞「らむ」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【若けれ】…ク活用形容詞「若し」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【生ひ先(おいさき)】…将来
■【見え】…ヤ行下二段動詞「見ゆ」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【ふくよかに】…ナリ活用形容動詞「ふくよかなり」連用形
■【書い】…カ行四段動詞「書く」連用形イ音便
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【り】…完了(存続)の助動詞「り」終止形
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わかりやすい、かわいらしい和歌ですね。
「おぼつかな」は、形容詞の語幹用法。
現在でも、「きたな!(汚い)」「うざ!(うざい)」などと使いますよね。
「書き損じ」と言ったけれど、
ちゃんと書いてたのですね。
光源氏の和歌の意味も、よく分かっているようです。
けれど、自分の書いた返歌の内容が、ちょっと「嫉妬」っぽくなってしまったように思われて、
「書き損じちゃった」と反故にしたんでしょうか。
かわいいですね!