源氏イラスト訳【若紫345】逡巡
君、「いかにせまし。聞こえありて、好きがましきやうなるべきこと。人のほどだに、ものを思ひ知り、女の心交はしけることと、推し測られぬべくは、世の常なり。
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【源氏物語イラスト訳】
君、「いかにせまし。
訳)源氏の君は、「どうしようかしら。
聞こえありて、好きがましきやうなるべきこと。
訳)噂が広がって、好色めいたように思われるに違いない事よ。
人のほどだに、ものを思ひ知り、女の心交はしけることと、
訳)せめて人並み程度に、物事の分別がつき、女が情を交わしたことだと
推し測られぬべくは、世の常なり。
訳)自然と想像されてしまうに違いないのは、世間一般の事である。
【古文】
君、「いかにせまし。聞こえありて、好きがましきやうなるべきこと。人のほどだに、ものを思ひ知り、女の心交はしけることと、推し測られぬべくは、世の常なり。
【訳】
源氏の君は、「どうしようかしら。噂が広がって、好色めいたように思われるに違いない事よ。せめて人並み程度に、物事の分別がつき、女が情を交わしたことだと、自然と想像されてしまうに違いないのは、世間一般の事である。
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■【君】…源氏の君
■【いかに】…どのように
■【せ】…サ変動詞「す」未然形
■【まし】…ためらいの意志の助動詞「まし」連体形
■【聞こえ】…噂・評判
■【あり】…ラ変動詞「あり」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【好きがましき】…シク活用形容詞「好きがまし」連体形
※【好きがまし】…好色めいている
■【やうなる】…比況の助動詞「やうなり」連体形
■【べき】…推量の助動詞「べし」連体形
■【人のほど】…人並み程度
※【の】…連体修飾格の格助詞
※【ほど】…年齢
■【だに】…せめて~だけでも(最低限の希望の副助詞)
■【もの】…物事
■【を】…対象の格助詞
■【思ひ知る】…分別がつく
■【の】…主格の格助詞
■【心交はす】…情を交わす
■【ける】…過去の助動詞「けり」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【推し測ら】…ラ行四段動詞「推し測る」未然形
※【推(お)し測(はか)る】…想像する
■【れ】…自発の助動詞「る」連用形
■【ぬ】…強意の助動詞「ぬ」終止形
■【べく】…推量の助動詞「べし」連用形
■【は】…取り立ての係助詞
■【世の常】…世間でよくある事
■【なり】…断定の助動詞「なり」終止形
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「人のほど」というのは、諸説あって、
ちょっと分かりにくいですね。
ここでは、光源氏の心中会話文として、
他の人々が、どんな噂をするだろう、と逡巡している内容として、
「若紫が人並み程度の女性で、女としての情を交わしたことだ」と
世間の人が想像するだろう、という解釈をしました。
「ほど」は、「年齢」の訳でもよさそうですね。