源氏イラスト訳【若紫328】宿直人
君の御もとよりは、惟光をたてまつれたまへり。
「参り来べきを、内裏より召あればなむ。心苦しう見たてまつりしも、しづ心なく」とて、宿直人たてまつれたまへり。
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【源氏物語イラスト訳】
君の御もとよりは、惟光をたてまつれたまへり。
訳)源氏の君のお邸からは、惟光をお差し向けなさった。
「参り来べきを、内裏より召あればなむ。
訳)「私自身が参上するべきだが、宮中からお召しがあるので…。
心苦しう見たてまつりしも、しづ心なく」
訳)気の毒に 拝見いたしたことも、心穏やかでなく…」
とて、宿直人たてまつれたまへり。
訳)と伝えて、宿直人を差し向けなさった。
【古文】
君の御もとよりは、惟光をたてまつれたまへり。
「参り来べきを、内裏より召あればなむ。心苦しう見たてまつりしも、しづ心なく」とて、宿直人たてまつれたまへり。
【訳】
源氏の君のお邸からは、惟光をお差し向けなさった。
「私自身が参上するべきだが、宮中からお召しがあるので…。気の毒に 拝見いたしたことも、心穏やかでなく…」と伝えて、宿直人を差し向けなさった。
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■【君】…源氏の君
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【御もと】…お屋敷
■【より】…起点の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【惟光(これみつ)】…光源氏の腹心の従者
■【を】…対象の格助詞
■【たてまつれ】…ラ行下二段動詞「たてまつる」連用形
※【たてまつる】…「遣る」の謙譲語(作者⇒若紫)
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【り】…完了の助動詞「り」終止形
■【参り来(まいりく)】…「来」の謙譲語(光源氏⇒若紫)
■【べき】…当然の助動詞「べし」連体形
■【を】…逆接の接続助詞
■【内裏(うち)】…宮中。帝
■【より】…起点の格助詞
■【召(めし)】…お召し。お呼びがかかっていること
■【あれ】…ラ変動詞「あり」已然形
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
■【なむ】…強意の係助詞
■【心苦しう】…シク活用形容詞「心苦し」連用形ウ音便
※【心苦し】…気の毒だ
■【見たてまつる】…拝見する
※【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
※【たてまつり】…ラ行四段動詞「たてまつる」連用形
※【たてまつる】…謙譲の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【も】…強意の係助詞
■【しづ心なく】…心穏やかではなく
※【しづ心】…落ち着いた気持ち
※【なく】…ク活用形容詞「無し」連用形
■【とて】…~と言って。と伝えて
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【宿直人(とのゐびと)】…宿直する人。ここでは、惟光のこと
■【たてまつれ】…ラ行下二段動詞「たてまつる」連用形
※【たてまつる】…「遣る」の謙譲語(作者⇒若紫)
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【り】…完了の助動詞「り」終止形
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「宿直人」とは、惟光のことです。
自分が宮中に出仕しなければならないので、
惟光をさし向けたのですね。
ところで、
「たてまつる」という謙譲語は、
今回は、四段活用、下二段活用の両方で出て来ています。
補助動詞の場合は、四段活用。
「遣る」の謙譲語の場合は、下二段活用。
…と、紫式部は使い分けているようですね。