源氏イラスト訳【若紫318】心置く
「年ごろも、あつしく、さだ過ぎたまへる人に添ひたまへる。かしこにわたりて、見ならしたまへなど、ものせしを。…」
ーーーーーーーーーーーーーーー
YouTubeでも「イラスト訳」の動画を作成しています。
見るだけで楽に、古文の速読力が身についてきます。
【源氏物語イラスト訳】
「年ごろも、あつしく、さだ過ぎたまへる人に添ひたまへる。
訳)「長い間、病気が重く、盛りの年齢の過ぎなさったお年寄りに寄り添いなさっていたこと。
かしこにわたりて、見ならしたまへなど、ものせしを。
訳)あちらに移って、お馴染みなさいなどと、言っていたのに。
あやしう疎みたまひて、人も心置くめりしを。
訳)妙にそっけなくなさって、妻も気兼ねしているようだったので。
【古文】
「年ごろも、あつしく、さだ過ぎたまへる人に添ひたまへる。かしこにわたりて、見ならしたまへなど、ものせしを。あやしう疎みたまひて、人も心置くめりしを。…」
【訳】
「長い間、病気が重く、盛りの年齢の過ぎなさったお年寄りに寄り添いなさっていたこと。あちらに移って、お馴染みなさいなどと、言っていたのに。妙にそっけなくなさって、妻も気兼ねしているようだったので。…」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【年ごろ】…長年の間
■【あつしく】…シク活用形容詞「あつし」連用形
※【あつし】…病気が重い
■【さだ】…盛りの年齢
■【過ぎ】…ガ行上二段動詞「過ぐ」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(兵部郷宮⇒故尼君)
■【る】…完了の助動詞「り」連体形
■【に】…対象を表す格助詞
■【添ひ】…ハ行四段動詞「添ふ」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(兵部郷宮⇒故尼君)
■【る】…完了の助動詞「り」連体形(連体形止め)
■【かしこ】…あちら。兵部郷宮の自邸をさす
■【に】…場所の格助詞
■【渡り】…ラ行四段動詞「渡る」連用形
※【渡る】…行く。移る
■【て】…単純接続の接続助詞
■【見ならひ】…ハ行四段動詞「見ならふ」連用形
※【見ならふ】…見てなじむ
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」命令形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(兵部郷宮⇒若紫)
■【など】…引用の副助詞
■【ものせ】…サ変動詞「ものす」未然形
※【ものす】…代動詞。ここでは、言うくらいの意
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【を】…逆接の接続助詞
■【あやしう】…シク活用形容詞「あやし」連用形ウ音便
※【あやし】…不思議だ。妙だ
■【疎(うと)み】…マ行四段動詞「疎む」連用形
※【疎む】…そっけなくする。疎んじる
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(兵部郷宮⇒若紫)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【人】…自邸の人。ここでは、正妻をさす
■【も】…添加の係助詞
■【心置く】…気兼ねする
■【めり】…推定の助動詞「めり」連用形
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【を】…順接(逆接)の接続助詞
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
この長い、父兵部セリフを考えると、
若紫は、一度、兵部郷宮の自邸に引き取られていたようですね。
そこで、正妻との折が悪く
また、尼君のもとへ帰って来ていたのでしょう。
「心置く」という古語は、
現代の「気の置けないやつだ」などといった表現を想定すると、
どういう意味なのかがよく分かりますね。