源氏イラスト訳【若紫258】幼鶴
またの日も、いとまめやかにとぶらひきこえたまふ。例の、小さくて、
「いはけなき鶴の一声聞きしより葦間になづむ舟ぞえならぬ…」
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【源氏物語イラスト訳】
またの日も、いとまめやかにとぶらひきこえたまふ。
訳)翌日も、とても誠実なお見舞いの手紙を差し上げなさる。
例の、小さくて、
訳)いつものように、小さく結んで、
「いはけなき鶴の一声聞きしより
訳)「あどけない鶴のようなあの子の一声を聞いた時から、
葦間になづむ舟ぞえならぬ
訳)葦の間で停滞して行き悩む舟は思い通りになることができない。
【古文】
またの日も、いとまめやかにとぶらひきこえたまふ。例の、小さくて、
「いはけなき鶴の一声聞きしより葦間になづむ舟ぞえならぬ
【訳】
翌日も、とても誠実なお見舞いの手紙を差し上げなさる。いつものように、小さく結んで、
「あどけない鶴のようなあの子の一声を聞いた時から、
葦の間で停滞して行き悩む舟は思い通りになることができない。
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■【またの日】…翌日
■【も】…添加の係助詞
■【いと】…とても
■【まめやかに】…ナリ活用形容動詞「まめやかなり」連用形
※【まめやかなり】…まじめだ。誠実だ
■【とぶらひ】…見舞い
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連用形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒尼君)
■【たまふ】…ハ行四段動詞「たまふ」終止形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【帰り】…ラ行四段動詞「帰る」連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【例の】…いつものように
■【小さく】…ク活用形容詞「小さし」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【いはけなき】…ク活用形容詞「いはけなし」連体形
※【いはけなし】…幼い。あどけない
■【鶴の一声】…鶴のような若紫の一声
■【聞き】…カ行四段動詞「聞く」連用形
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【より】…起点の格助詞
■【葦間(あしま)】…葦草の間
■【に】…場所の格助詞
■【なづむ】…行き悩む。停滞する
■【舟】…船。光源氏の見立て
■【ぞ】…強意の係助詞
■【え~(打消)】…~できない
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
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尼君への、光源氏からのお見舞いの手紙。
「例の」とあるので、
光源氏は、いつも、お見舞いのついでに
若紫に、恋文の和歌を贈っていたのでしょう。
わざと幼く書きなして、あどけない彼女にも興味を持ってもらえるよう
工夫しているみたいですね。