源氏物語イラスト訳【若紫169】この世の
「この世のものともおぼえたまはず」と聞こえあへり。僧都も、「あはれ、何の契りにて、かかる御さまながら、いとむつかしき日の本の末の世に生まれたまへらむと見るに、いとなむ悲しき」とて、目おしのごひたまふ。
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【源氏物語イラスト訳】
「この世のものともおぼえたまはず」と聞こえあへり。
訳)「この世の人とも思われなさらない」とお噂申し上げ合っていた。
僧都も、「あはれ、何の契りにて、かかる御さまながら、
訳)僧都も、「ああ、どのような因縁で、このような美しいお姿そのままで、
いとむつかしき日の本の末の世に生まれたまへらむと見るに、
訳)とてもむさ苦しい日本国の末世に生まれなさったのだろうと思うと、
いとなむ悲しき」とて、目おしのごひたまふ。
訳)とても 悲しい」と言って、目を押し拭いなさる。
【古文】
「この世のものともおぼえたまはず」と聞こえあへり。僧都も、「あはれ、何の契りにて、かかる御さまながら、いとむつかしき日の本の末の世に生まれたまへらむと見るに、いとなむ悲しき」とて、目おしのごひたまふ。
【訳】
「この世の人とも思われなさらない」とお噂申し上げ合っていた。僧都も、「ああ、どのような因縁で、このような美しいお姿そのままで、とてもむさ苦しい日本国の末世に生まれなさったのだろうと思うと、とても 悲しい」と言って、目を押し拭いなさる。
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■【この世】…この世。現世
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【もの】…者。人
■【と】…引用の格助詞
■【も】…強意の係助詞
■【おぼえ】…ヤ行下二段動詞「おぼゆ」連用形
※【おぼゆ】…思われる
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(尼君⇒光源氏)
■【ず】…打消の助動詞「ず」終止形
■【僧都(そうづ)】…高僧。若紫の曾祖父
■【も】…添加の係助詞
■【あはれ】…ああ(感動詞)
■【何の】…どのような
■【契り(ちぎり)】…前世からの因縁
■【にて】…手段の格助詞
■【かかる】…このような(光源氏の美しさ)
■【御―】…尊敬の接頭語(僧都⇒光源氏)
■【さま】…ようす。姿
■【ながら】…本質に基づくことを示す接続助詞
■【いと】…とても
■【むつかしき】…シク活用形容詞「むつかし」連体形
※【むつかし】…むさ苦しい。うっとうしい
■【日の本(ひのもと)】…日本国
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【末(すゑ)の世】…末世(まつせ)
■【に】…場所の格助詞
■【生まれ】…ラ行下二段動詞「生まる」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(僧都⇒光源氏)
■【ら】…完了の助動詞「り」未然形
■【む】…推量の助動詞「む」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【見る】…思う。みなす
■【に】…単純接続の接続助詞
■【いと】…とても。非常に
■【なむ】…強意の係助詞
■【悲しき】…シク活用形容詞「悲し」の連体形
■【とて】…~と言って
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【おしのごふ(押し拭ふ)】…力をこめて拭く。ぬぐう
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒僧都)
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上の紫色の説明部分は、
助動詞など重要語の「文法的説明」です。
国公立二次試験などでは
文法的説明の記述問題も出てくるので
こういう部分も疎かにせず
しっかり理解をしておいてくださいね♪