2019年 おしまい | れぽれろのブログ

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美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

2019年もまもなくおしまいです。当ブログにアクセス頂いている皆様にとって、2019年はどのような年だったでしょうか?

自分はこの1年間は、とにかく仕事が忙しい1年でした。
自分は現在41歳の会社員ですので、年齢的に考えても仕事が重くキツくなってくるのは当然といえば当然。とくにこの4月からは業務量が増え、大変やなと思いつつ何とかこなしていた矢先、10月にさらに業務量が倍ほどに増えるというなかなかハードな状態で、家に帰って来ても夜や土日も仕事をしていることも多く、この年末年始も溜まった仕事を片づけることにそれなりの労力を使っています。来年以降もこの傾向は続きそうで、当面仕事は減りそうもない感じ。
しかしその割に、4000字前後(原稿用紙10枚前後)のブログ記事を毎週1本量産し続けるということをずっと継続しています。どうも自分にとってはダラダラと文章を書くことが、何よりもの心の安定&休養になっているようです。
好き勝手なことを書くのはアマチュアの権利、商品にならなくてよい文章を綴ることは楽しいので、来年以降も継続的に、プロの書き手が書けないようなことをあれこれ書き続けていきたいなと考えています。

ということで毎年恒例、1年間の当ブログ及び関連事項の振り返りです。
美術・音楽・本・旅行・その他についてまとめますが、今年は美術館や演奏会に行くことが例年より少なく、遠方への旅行も1度しか行けていないので、これらの記事は少なめ。その代り、自分が住んでいる大阪・近畿圏を中心に、神社・博物館・公園などを結構あちこち回りましたので、これらの所感なども合わせてまとめておきたいと思います。



○美術館・展覧会

今年は全部で13の展示を鑑賞しました。
とくに面白かった展示を2つあげると、

 ・抽象世界/国立交際美術館 (→こちら
 ・Oh!マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー/兵庫県立美術館

   (→こちら

ということになります。
「抽象世界」は近年の欧米の抽象表現の動向が確認できる面白い展示で、2010年代のベストにも選びました。
「マツリ☆ゴト」の方は政治に関連する過去100年ほどのハイカルチャー・サブカルチャーそれぞれの表現を集めた興味深い展示でした。

「マツリ☆ゴト」の記事は今年の2月に書いたものですが、今読むと我ながらなかなか含蓄があります。
「政治的表現において重要なことは、プロパガンダ(政治的宣伝)になることを避けること」、「直接的な政治メッセージより、寓意性や多義性や笑いの要素を含む方がずっと面白く、人の関心と共感を生むようになる」、「現代日本のアーティストは直接的な政治メッセージを避ける傾向にあるので、アートとしてはかえって面白い」、旨のことが書かれていますが、このときは、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展」での左派プロパガンダ的とも言える展示内容が耳目を集め、展示中止に追い込まれるようなような事件が起こるなどとは、全く予想していませんでした。

何度か書いたことですが、表現の自由について最も重要な点は、行政による直接規制・表現への介入を最大限回避するために、ほどよく抑制的に自主規制を行うことだと自分は考えています。その意味で「表現の不自由展」のような、表現への介入に対する敵意をむき出しにし、左派からの政治的メッセージとして読み取られかねない挑発的なキュレーションは、正しさとは別の次元で得策ではないというのが自分の考えです。(もちろん河村たかし氏や松井一郎氏らの物言いに問題があることは言うまでもありませんが。)
事件による炎上の効果もあって(?)あいちトリエンナーレはかなりの集客数だったようで、結果的に良かったのかもしれませんが、行政や一部国民と対立するような構えの展示はやはり、面白さという点では物足りないようにも思います。

あいちトリエンナーレは行く行くといいつつ、結局忙しさもあって行けませんでした。
シンガポールの作家ホー・ツーニェンの作品がとくに評判が良かったようで、自分は同作家の「名のない人」という作品(コミンテルンのスパイの評伝をコラージュ映像とともに解説する)を過去に面白く鑑賞したので、やはり無理してでも行けばよかったかなと思っています。



○音楽・演奏会

今年は9つの演奏会を鑑賞しました。
とくにこれだというベストな演奏会はありませんでしたが、強いてあげるなら、

 ・歌劇「サロメ」(大阪国際フェスティバル)/フェスティバルホール (→こちら

が、演奏会形式ならではのスケールの大きい演奏で、良かったように思います。



○本

2019年に読んだ本については前回の記事で詳しく書きましたので、省略。



○旅 (及び、神社・博物館・公園など)

今年は4月の終わりに名古屋に旅行に行ったのみで、それ以外に近畿圏外には出かけていません。今年はここ数年で最も旅に出なかった年、ということになります。
その代り、近場の神社・博物館・公園の類をそれなりの頻度で訪れています。


昨年までは西国三十三所探訪ということでお寺を訪れることが多かったですが、昨年の終わりごろから自分は神社を積極的に訪れるようになり、その一部は覚書として記事化しています。お寺については今年は年初に天王寺七坂付近の勝鬘院や一心寺を訪れたのみで、それ以外は訪れておらず、その代わりに畿内を中心に大小様々の13の神社を訪れました。
元々自分は神社よりお寺の方が好きで、かつての国家神道との関係もあってどことなく神社は敬遠していましたが、あらためてこの1年あまりの間に様々な神社を訪れるとそれなりに発見もあり、神社も意外と面白い。

神社の歴史や神社本庁との関係などについてはこちらの記事で書いた通り。

 ・大阪府 神社いろいろ (→こちら

簡単に振り返ると、古来の信仰の場→7・8世紀の集権化の時代に神社化→神仏習合(近世まで)→神仏分離&国家の出先機関化(明治)→GHQによる「民営化」(戦後)というようなおおよその流れあると思われ、神社本庁が右派的なのは準公的機関であった時代に対する復古主義的な思いがあるからだと考えられます。
この記事には昨年に訪れた神社も含まれていますが、今年訪れた神社の中では、三光神社(大阪市天王寺区)がその周辺の真田山陸軍墓地の様子も含め、最も印象的です。

その他、旧二十二社に属する以下の神社はいずれも面白いものでした。

 ・石清水八幡宮 (京都府八幡市)  (→こちら
 ・伏見稲荷大社 (京都府京都市伏見区)  (→こちら
 ・下鴨神社 (京都府京都市左京区)  (→こちら

石清水清水八幡宮は社格が高いわりに歴史が浅く(9世紀の創建)、僧侶が作った神社という経緯が神仏習合時代ならでは。山の上に社殿があるのもお寺っぽい(神社的には本来山は拝む対象)感じ。
伏見稲荷大社の千本鳥居の歴史の浅さ(ほとんどの鳥居は近年建てられた新しいもの)や、下鴨神社周辺の神社の観光地化(美人絵馬やラグビー神社など)など、行ってみないと気づかないような楽しい発見もありました。
二十二社はぼちぼちまわってみようかなと思っていますが、吉野近辺に訪れるのが面倒くさい神社がいくつかあるので、コンプリートできるかどうかは不明です 笑。


博物館は全部で10か所訪れました。
とくに面白かったのは過去に記事化した以下の2つ。

 ・小林一三記念館 (大阪府池田市)  (→こちら
 ・造幣博物館 (大阪府大阪市北区)  (→こちら

小林一三記念館は阪急電鉄の歴史が展示されており、20世紀初頭以降の日本の都市文化を考える上で非常に面白い。
造幣博物館は貨幣鋳造の歴史が理解できるとともに、我が国の貨幣に対するアニミズム的ともいえるこだわりの強さも感じることができ、たいへん面白かったです。


公園も計10か所訪れました。
とくに面白かったのは、

 ・鶴舞公園  (愛知県名古屋市)  (→こちら
 ・大阪市立大学理学部付属植物園  (大阪府交野市)

の2つ。
鶴舞公園は旅行の際に訪れた公園で、古い歴史の趣が感じられる中、現在はコスプレイヤーによって占拠されているという楽しい公園。
市大植物園は記事化していませんが、秋に訪れたので紅葉が非常に綺麗(個人的な主観では下鴨神社よりかなり綺麗)でした。

市大植物園も含め、博物館や公園のうち、面白かったものはまとめて年明けにでも記事化しておこうかなと考え中です。



○その他

最後に、今年の自薦ベスト記事(笑)を2本選んでおこうと思います。

今年の個人的お気に入り記事は以下です。

 ・大阪市パノラマ地図 1924年(大正13年)  (→こちら

パブリックドメインでアップされている昔の大阪市の絵図についてコメントした記事。いま読み返してもこの記事はなかなか面白く、自分で言うのも変ですが、たいへん勉強になります 笑。
実はこの記事、画像作成に相当手間暇がかかっており、PDのサイトから一括で画像を取り出せないので、分割された画像をランチャーでダウンロードし、結合ソフトでちまちまと再結合した後、クローズアップしたい部分をトリミングし画像を再作成するという、非常に面倒くさいことをやっています。このプロセスも含め思い出深い記事です。
この記事以降も自分は継続的に大阪市内をウロウロしていますが、大正期のこの地図を思い出しつつ、現在の大阪の街を歩いてみるというのもまた面白いものです。

昨年以降、自分は大阪についてあれこれ調べるのがワイフワークになっています。
日本の歴史上、大阪がとくに重要になるのは織豊~江戸前期(17世紀前後)と戦間期(1920~30年代)ですが、戦後以降は首都圏一極集中の流れもあって、大阪の持つ日本国内での相対的な価値は低下し続けています。現在、大阪は一地方都市として今後どうするか、地方創生の文脈で語られることが重要であるというのが自分の所感。

大阪は織豊・江戸前期と戦間期の歴史的存在感がかなり強いので、現在でも東京vs大阪のような構図で語られることも多いですが、こういう対立軸を設定するのは明らかに誤り。問題は首都圏一極集中であって、これをどう是正するかが重要。(例えば、米軍基地問題や原発問題と、大阪が維新の草刈り場になっている問題とは、問題の規模の大きさの違いはあれ、どちらも首都一極集中に起因する構造的に似たような問題ではないかと思いますが、なぜか後者は首都圏からは大阪の自業自得としてバカにされているふしがある。これはやはり良くない。)
このようなことも踏まえつつ(?)、来年も大阪の街をウロウロしたいなと思っています。


もう1つ、ベストとして取り上げたい記事はこちら。

 ・新記号論/石田英敬,東浩紀  (→こちら

ここ最近当ブログのアクセス数がえらく増えており、何事かと思ってエゴサーチしてみると、なんと石田英敬さんご本人がこの記事についてコメントしてくださっていることが分かりました。
まさか著者ご本人からコメントを頂けるとは思ってもいなかったので非常にうれしく、あらためてこの記事を読み返してみると、「おお、確かに何やええこと書いとるやないか」と思いましたので、自薦ベストとしてこの記事を選んでおきたいと思います。年末に非常にうれしいニュースでした。
石田さんは今後「笑い」について本も予定されていると確か仰っていたと思いますので、来年以降、こちらの本も楽しみに待ちたいと思います。



ということで、今年もおしまいです。
このままいくと来年、2020年は自分にとっておそらく重要な変化の年になります。
何かとあれこれと大変ですが、体と心に気を付けつつ、乗り越えていきたいと思います。


さよなら、2019年。すべての人、大切な人に感謝。
幸せを明日に・・・良いお年を!