京都市左京区 下鴨神社 | れぽれろのブログ

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神社仏閣探訪シリーズ。
12月14日の土曜日、京都市左京区にある下鴨神社にお参りに行ってきました。
以下、神社の敷地内とその周辺について、写真と覚書を残しておきます。



(1)糺の森

下鴨神社は旧平安京の北東、鴨川と高野川が合流する地点にある神社です。最寄り駅は京阪電鉄の終点、出町柳駅。大阪からはおよそ1時間弱で到着します。
下鴨神社の周辺には古くから鎮守の森が広がっており、その一部は現在でも「糺の森」(ただすのもり)と呼ばれ現存、秋には綺麗な紅葉を見ることができます。
もう12月も半ばですので、紅葉は少し見ごろを過ぎていましたが、それでも残っている赤と黄色が綺麗で、非常に良い雰囲気。おそらく見ごろの時期よりは混雑はやや緩和されていたと思われ、のんびり散策することができました。


出町柳駅から北へ、下鴨神社に向かいます。

道路の両側の木とわずかに残る紅葉。


こちらが糺の森。

おお、ええ雰囲気やん、という感じがしてきます。


赤と黄色と緑のグラデーション。


 

川を埋め尽くす落葉。



しばらく歩くと下鴨神社の鳥居が見えてきます。



参道は2つに分かれています。

こちらは西側の参道。

東側の参道は道路が舗装されていましたが、西側は未舗装、この西側の方がよい雰囲気です。木が訪問者を包み込むような形で並んでいる感じ。
5月にはこの道で流鏑馬が行われるとのこと。ニュースなどでの映像はこの場所のものだったのですね。


落ち葉によるオールオーバー。

地面が黄色の絨毯になっており、非常に綺麗。イチョウの落葉は綺麗ですが、落ちた実が独特の臭いを発するのが難点です(笑)。


下鴨神社西側の鳥居。

この紅葉が一番綺麗だったかな。


森の中からはいろんな鳥の鳴き声が聞こえてきますが、一番声が大きいのがカラスです。カラスの声量のせいで他の鳥の声が聞こえにくい。
カラスがうっとしなあ、などと思っていた瞬間、森の中でカラスについての立て札を発見。解説によると、下鴨神社の御祭神である賀茂建角身命(かもたけつのみこと)はヤタガラスのことであるとのこと。

解説を読むと、やかましいカラスが急に神聖なものに見えてきます。

うるさいなどと言ってすみませんでした(笑)。


糺の森は非常に良い雰囲気でした。
かつてはこの森は現在よりももっと広大で、40倍ほどの規模があったのだそうです。都市の中に一部でも森が残っているのは素敵なことですね。



(2)下鴨神社

糺の森を抜けると、いよいよ下鴨神社です。

楼門。


 

こちらが中門。

この中に入ると、干支の神様が祀られているミニ神社がいくつかあり、その奥に本殿があり、お参りしてきました。幸福でありますように・・・。
本殿は19世紀に造り替えられたもので、現在は国宝に指定されています。


下鴨神社の正式な名称は賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)。

神社の解説によると、下鴨神社の起源は崇神天皇の時代に遡り、紀元前90年ごろになるとのことで、毎度お馴染み、畿内の神社仏閣恒例のやたらと古い、ありえない設定をこの下鴨神社でも確認することができます。実際のところは古代の豪族加茂氏の信仰の場であったところが、7世紀後半の国家統制の時代に神社化したものと思われ、社殿の造営が677年とあるので、このあたりが起源なのではないかと思います。
都が京都に移った平安時代以降重要な神社となり、平安中期には京都市北区の上賀茂神社と合わせて二十二社に列せられ、夏に訪れた石清水八幡宮と同様に、朝廷の重要な信仰の場として機能するようになります。
「枕草子」や「源氏物語」にも登場、現在に続く葵祭や流鏑馬などの行事は、今も重要な観光資源になっています。


こちらは本殿の前にあった舞殿。

葵祭などで使われる建物のようです。21年ごとに建て替えられるのだとか。


細殿御所。

歌会・茶会などが行われる場所で、17世紀の建物。歴代天皇の行幸の際の滞在場所で、幕末の尊攘時代には徳川家茂も滞在したのだそうです。


境内ではいくつかのカップルの結婚式が執り行われていました。敷地内の表示によると、30分に1件のハイペースで結婚式が予定されており、格安・短時間で式が営めるようです。

六曜を確認してみると、この日は仏滅。にもかかわらず多くの挙式が予定されていました。現在はあまり細かい因習に拘らず、さらりと挙式するようになっているのかな?(良いことだと思います。)



(3)その他の神社

下鴨神社の周辺には、多くの神社が点在しています。
そのうちいくつかを取り上げます。


・河合神社



糺の森の南側にある神社です。時系列的にはこちらを先に訪れました。
解説によると起源は神武天皇のころとのことなので、2600年以上前。下鴨神社より古いんかい!と突っ込んでしまいますが、延喜式には登場しているため、10世紀初頭には存在していたようです。

祭神の玉依姫は美人の神様とのことで、女性は自身の顔を絵馬に描いて奉納すると、綺麗になれるのだとか。

写真右に小さく並んでいる丸いのがその絵馬で、たくさんの顔が描かれていましたが、中には笑いを取りに来ているとしか思えないようなふざけた顔の絵馬もいくつか見受けられました(笑)。絵馬で見も知らぬ第三者を笑かそうとするのは大阪くらいか思っていましたが、京都でも見られるのですね。


こちらは鴨長明の庵。

河合神社の敷地内にありました。
「方丈記」で有名な鴨長明は、河合神社の宮司の家系なのだそうです。



・御手洗社(みたらししゃ)



下鴨神社の東側にあります。起源は9世紀ごろ。
元々は高野川と鴨川の合流地点にあったようですが、応仁の乱後、16世紀にこの地に移されたようです。
水みくじという、水に濡らすと文字が出る、独特のおみくじが売られているようです。

前に流れる小川でおみくじの結果が確認できます。




・相生社(あおいのやしろ)、の横にある木


下鴨神社の入り口付近にあります。
2本の木が1本に結合していることから、縁結びのご利益があるのだそうです。
カップルが両側からひもを引っ張って鈴を鳴らす形になりますが、神社のホームページには男女別のお参りのルートや奉納の仕方など、やたらと複雑な手順が記されています。皆さんこぞってひもを引っ張っていましたが、単に引っ張るだけではご利益はないのかもしれません(笑)。



・雑太社(さわたしゃ)


糺の森の真ん中あたりにある神社。8世紀ごろから存在していた神社で、例によって応仁の乱で消失後、この地に移転。
1910年、この神社の前で日本初のラグビーの練習が行われたとのことで、現在ではラグビーの神社と化しています。


鈴もよく見るとラグビーボールの形をしています。



絵馬もラグビーボールの形。

ラグビープレイヤーと思われる方々の願いが込められた絵馬がこんなにたくさん。日本各地からラグビー愛好家が訪れているのかな?
英国起源のスポーツの聖地となっていることなど、8世紀の人間にとっては思いもよらぬ変化、時代を経て社寺の意味合いが変わっていくのは面白く、個人的にはこのような変化は楽しくて好感が持てます。



(4)旧三井家下鴨別邸

さて、糺の森の入り口付近には、三井財閥の旧邸があるとのことで、ここもついでに訪れてきました。綺麗なお庭と趣き深い建築を味わうことができます。(見学は有料です。)


庭から建物を撮影。

明治時代の建物で、一部大正時代に増築されています。
内部も見学することができ、内装も趣き深いものでしたが、冬の京都は底冷えし、木の廊下と畳がとにかく冷たく、足がどんどん冷えてきます。体が冷えるので早々に退散(笑)。

三井家の起源は伊勢の松阪に遡り、呉服商から始まって、17世紀に販売を京都や江戸に拡大、近代には三井財閥となり、現在まで続く大企業の起源がこの三井家です。
近世には円山応挙などの四条円山派の絵師をサポートしており、応挙の有名な「雪松図屏風」は三井記念美術館に所蔵されています。
建物の中ではこのような三井家の歴史の映像も放映されていました。


とくに素敵なのが、庭の様子です。

紅葉が非常に良い感じでした。


奥に見えるのは茶室。


この茶室は江戸時代から続いているようです。



(5)名曲喫茶 柳月堂

三井家別邸で体が冷えましたので、暖を取るために喫茶店に入ることに。
出町柳駅の南側に「名曲喫茶」の表示を見つけ、何気なく店を訪れてみると、入口にフルトヴェングラーの肖像が掲げられており、何やらただならぬ雰囲気。店に入るとベートーヴェンの交響曲5番が流れています。
店員の方の解説によると、この喫茶店は私語厳禁で、黙ってクラシック音楽を楽しむためのお店であるとのこと。喋りたい人は奥の部屋に入ることはできず、手前の雑談スペースで飲食することになるとのことで、なかなか敷居の高い雰囲気の喫茶店です。

この日は2人だったので、奥の部屋は避けて雑談スペースに入り、コーヒーとフルーツタルトを美味しく頂きました。
やがてベートーヴェンの交響曲は終わり、続いてミサ曲か何かの合唱と独唱が始まります。終始何らかのクラシック曲が延々流れているようです。
やはり奥の部屋が気になります。私語厳禁の喫茶室とはどのような代物なのか・・・。

後で調べてみると、この「名曲喫茶 柳月堂」は65年前から続く非常に有名な喫茶店らしく、ウィキペディアにも項目があるくらい。こんなに有名なところだったとは・・・。
私語厳禁の喫茶室は別料金が必要となり、ゆったりとしたソファーでくつろぎながら音楽を鑑賞することができ、レコードのリクエストのも可能とのこと。
この喫茶店は建物の2階にあり、すぐ下の1階にはパン屋さんがあって、パンの持ち込みもできるようです。
何やら面白そうなので、再度訪れたくなってきました。三条や七条の美術館・博物館などを1人で訪れた際に、出町柳まで足を運び、のんびりと音楽を聴いてみるのもまた良いかもしれませんね。



ということで、下鴨神社・出町柳界隈も面白い場所でした。
神社仏閣探訪シリーズ、今年は旧二十二社のうち、石清水八幡宮、伏見稲荷大社、下鴨神社を訪れました。

伊勢神宮や住吉大社は過去に訪れたことがありますが、二十二社の中には他にも知らない神社はたくさん。西国三十三所を回り終えてから訪問目標がなくなっていますが、来年以降、二十二社をコンプリートしてみるというのもまた面白いかもしれませんね。