「補完・代替医療の現状と課題」を読む(その28) | 院長の徒然なるままに。

「補完・代替医療の現状と課題」を読む(その28)

今日も診療していたが、時間外まで埋まっている。休みが欲しい・・・。
火曜日に書き記した分をペーストしよう。

「補完・代替医療の現状と課題」の解説28回目である。


1955年、千葉県の船橋にオープンした「船橋ヘルスセンター」は
「特殊公衆浴場」のうち、「健康ランド」のたぐいとして
最初のもの
であり、この施設では、テレビのバラエティ番組の
公開収録(8時だヨ、全員集合!など)、ハワイアン、ロカビリー
といった歌謡ショーなどを売り物にしながら入浴、食事、
休憩などが出来る設備となっていた。

これら設備には「マッサージ業者」がテナントとして、
あるいは直営で入っていた。

つまり、SPAビジネスという呼び名をエステティック産業が
使い始めるよりも前にすでに、

マッサージ業者達の新しい商圏として「健康ランド」は
広がりを見せていた
というわけである。

後に健康ランドのブームは80年代に「スーパー銭湯」が
富山(一説には愛知)ではじまったのを皮切りに、
現在は鉄道、不動産業、行政の第三セクター、電力会社、
建設業など様々な業種が参入している
(Wikipedia「スーパー銭湯」参照)とされている。

 こちらもSPAのサービスと関わっている。

スーパー銭湯は健康ランドと比して入浴料金が低く設定されており、
ロッカーキーなどにつけたバーコードによる管理で、
出場時に精算するなどのシステムをとっている。


 スーパー銭湯のブームが始まり、銭湯とは異なる
大規模(駐車場完備、入浴設備の他に、休憩、飲食、仮眠、販売、
マッサージ等の設備がある)な施設では
あん摩マッサージ指圧師が業務提携する例と、
アロマ、リフレなどのエステティック業界の企業、個人が
業務提携する例が現れ始めた。


エステティック業界関連の施術は「美容目的の自由業」であるが、
あん摩マッサージ指圧業界の施術は「医療行為」としての
施術行為である。

ところが、スーパー銭湯の母体企業、ならびに
一般のエンドユーザーはその違いは分からない。

そればかりか、同じ目的、つまり「リラックス・肩や背中のコリをとる」
という目的で利用している。

そして、当然の事ながら、有資格者が行う施術行為も
「リラックス・肩や背中のコリをとる」という目的と、
その告知を行いはじめる。

ここに「法」の功罪がみてとれるのだ。

法は文字通り、その業を規定し、権利を与えるほか、規制をするものである。

そして、「あはき法」には、「広告の制限」という規制も存在している。

筆者はこのような「広告の制限」がスーパー銭湯などの商圏で
有資格者にとっての足かせになったことが
事の起こりに関わっていると考えている。

スーパー銭湯の経営が温泉地などで行政が関与している場合、
無免許施術となるエステティック業界からの参入は行われることは少ない


そして、有資格者が行う施術所では
「広告の制限」がかかっているため、エステ業などが広告する
「腰痛、肩こり」などを標榜すると罰金刑となる可能性がある
のだ。

しかしながら、一般企業の経営するものでは全く規制がない

そこで、業者によっては

「免許を所持している施術所が施術所であることを隠しても、
エステ業と競合するために整体、ほぐし、リラックスなどの文言を用い、
あはき法の規制から逃れる方法をとろうとしている」のである。


さらに、あマ指師が参入している施設ではあらたな問題が表面化している。

それは有資格者が無資格者を雇用して脱法営業を行っているものであり、
スーパー銭湯とのつながりを強固にして全国に展開している。

経営者は鍼灸マッサージ資格を所持していることを明らかにし、
行っている行為を「ボディケア」「ほぐし」などと標榜して営業
している。

 中には古くから学生や無免許者を雇用し、
ビジネスホテルなどに派遣する業態を展開していた
鍼灸マッサージ師経営の企業なども含まれていた。

数年前神奈川県で摘発されたこの業者は、
自らの社内で技術指導した「無免許者」にマッサージ施術を行わせ、
あはき法違反で検挙された。


 取り調べに対し
「弊社で行っているのは「ボディワーク」であり、マッサージ行為ではない」

と述べたという。

このような例は埼玉でもあり、有資格者が無資格者を雇用して
企業規模を拡大する構図は以下の点で急激に肥大化した。

「有資格者が無資格者を雇用して業務展開する場合、
そのモラル的観点から敵対する参入者がいないため、
競合他社のない市場であったこと」


そのように、「スーパー銭湯」などでは有資格者と無資格者が
同じ企業の従業者として、同じ職場で就業している状態も見られる。
しかしながら、そこで行われているのは『ほぐし』であり、
『整体』『リラックス』である。

有資格者と無資格者の賃金は異なるようだが、
スーパー銭湯に以外の領域(ショッピングモール、スーパーマーケットなど)へ
展開した誰でも知っている企業では無免許者の賃金は時給900円前後、
有資格者はその4~5割り増しという話もある。
有資格者の経営するその企業では有資格者対無資格者の
賃金格差がそれぐらいしかない
のだ。



SPAサービスに視点を戻そう。筆者の報告した論文の一部を抜粋しよう。
_____
2009(平成21)年8月3日付け朝日新聞紙面にて
「日本でのリラクゼーション・マッサージの現状や
法律問題について触れた記事」が出ている。

この法律問題に関しては、リラクゼーション・マッサージ業界が
07年に大手を含む約20社が「リラクセーション業振興協会」を結成

『「マッサージ」「治す」といった言葉を使用しない』ことや
『強く圧力をかける手技は使用しない』などの自主ルールを作成
した。

振興協会理事長(有資格者)が「有資格者の嫌がることはしないで、
共存を図っていく。国にも働きかけ、一つの産業として
認めてもらえるようにしたい」
というコメントを述べている38)。

 この団体に加盟する企業には鍼灸マッサージ師が経営する
会社が数社含まれており、

うち2社の経営者は
「あはき法違反の摘発歴」がある。


朝日新聞記者もその点について理解した上で掲載したとの
コメントを筆者に寄せている39)。


それによると当該企業の担当者は『「免許は持っているが、
スタッフに教えているのは全く別の技術」などの説明』
を新聞記者に行い、
あマ指行為ではないと述べたそうである。
参考文献)
38)掲載記事Globe. 「『もむ』というしごと」平成21年8月3日」.朝日新聞社.
39)朝日新聞社記者より電子メールにて聴取:平成21年8月7日

________
これが、
あマ指行為と
「リラク」などSPA領域の
施術の違いを明言した論拠となる。
「国にも働きかけ、一つの産業として認めてもらえるようにしたい」
と言っているのである。

今日はここまで。
次回は彼等のいう
「強く圧力をかける手技」などに関わる部分について論説することにしよう。


※当ブログのコンテンツを無断引用、転載することを禁じます。
引用先として当ブログのURLを記載すること、ご一報いただくことを
引用、転載の条件としています。     

尚、筆者の論文
「統合医療で取りざたされる徒手療法のあはき法との整合性
~癒し、リラックスの名の下に無免許施術が広がるわけ~」は
本年9月頃発刊の「日東医学会誌」に掲載されます。


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