![]() | ![]() |
![]() | ![]() |
【体験記】白内障だったんです。#9
5月2日。
右目の眼帯も外れる。
やはり眩しい。新しいレンズに慣れつつある左目と比較するとその差はあきらかだった。
白く、わずかに青みがかった視界。
「少し青く見えるかもしれない」と聞いていたが、確かにそう感じる。けれど不満はない。
数メートル先を歩く人の性別を判断することさえ困難だったのに、性別どころか、その看護師さんの目尻の皺まで視認できる。
視力があるというのはこういうことだったのだ。この一年、すっかり忘れていた感覚だった。
多焦点レンズを挿れて良かった。先のことはまだわからないが、とりあえず、裸眼で生活できると思えた瞬間だった。
視力、眼圧など基本点な検査を終えてから執刀担当医の待つ診察室に入る。
「どうですか?」
「良いです、とても。すごい。感動しています」
そんな反応を予想していたのだろう、医師はこう言って白い歯を見せた。
「すごいのは多焦点レンズです」
まだ慣れているわけではないので、これから見づらいポイントが出てくると思います。多焦点レンズといってもピント調整ができるわけではなく、正確には遠近なので、遠くと手元30〜40センチはよく見えます。でも、中間距離……パソコンとか読書ですね……そのあたりはぼんやりするはずです。中間距離用のメガネは一本あったほうがいいでしょう。
次回の診察でメガネを合わせて診察書を書きますので、それをメガネ屋さんに持っていってください。
多焦点か単焦点か、選択するときに大切なことである。お値段ももちろんではあるが、多焦点になったからと言って、メガネが一切不要なわけではない。
基本的に裸眼で生活できるが、ピントの合わない場所がある。そこを補正するのはメガネになるわけだ、これは実際に体験してみないと実感しにくいが、スマホを近づける、遠ざけるの動作を繰り返すと、クリアになるところとぼやけるところがある。
目が良くなるわけではない。
そう、あくまで視力矯正ではないのだ。
だが、それでも術後の僕の視力は1.2を計測していた。
「裸眼で運転免許の更新ができます」の言葉どおりだった。
白内障を罹患する前より見えるとは言えない。
人工レンズ、とくに多焦点レンズは遠も近もそれなりに見えるのであって、元どおりに、あるいは元より見えるようにはならない。
過度な期待はしないほうがいい。日常生活に不自由することはない程度には見える、けれど、白内障を経験してしまうと、そのときよりは遥かに見える。
付け比べたわけではないが、僕自身は先進医療特約のある保険に入っていたこともあって、多焦点レンズを挿れて良かったのだと毎日のように思う。
【続く……(あと一回の予定)】
Copyright (C) 2016 copyrights.billy tanaka All Rights Reserved.
応援クリックをどうぞよろしくお願いします。