【体験記】白内障だったんです。#4 | ワールズエンド・ツアー

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田中ビリー、完全自作自演。

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【体験記】白内障だったんです。#4


 ミケラン(2%)と表示された濃い黄色の点眼薬を毎朝、一滴ずつ。
 浸透させるため点眼後は五分ほど静止。

「眼圧を下げるため」に処方されたのはその点眼薬のみだった。

「ごく初期」との診断だったからだろう、点眼薬が複数に及ぶことはなかった。
 
 眼圧とは「目(眼球)の硬さ」のことであり、眼内を満たす房液の流れが滞る、悪くなると上昇する、らしい。
 僕の両目は「正常範囲内だが少し高め」と「わずかに基準値を超える」を繰り返していた。
 眼圧は血圧に例えられることもあるそうで、その数値は一定ではない。体調や精神状態によって上下する。

 現在のところ根治法のない緑内障は眼圧を下げることで症状の進行を遅らせる。
 薬が複数に及ぶこともあり、内服薬が出る場合もあり、また、手術に至ることもあるそうである。

 ごく初期と診断された僕は実に一年もの間、毎朝、この点眼薬を差し続けていたのだ。眼圧が安定すれば、少しはマシになるだろう、と。

 しかし、症状は改善に向かうどころか、徐々に視界の霞みが悪化してゆく。
 月に一度、通院していたが、白内障であることに気づいてはくれなかった。
 計測した眼圧は正常値内を維持していたので「いまの薬を続けてください」である。

 医師の診断だから間違いないだろう、僕自身もそう思いこんでいた。

 眠ることがなによりの薬だった。眠っている間はなにも考えることがない。しかし、「視力を失う恐怖」は夢にまであらわれるようになっていた。

 きっと僕は限界だったのだ。食事のときもアルコールを飲んでいるときも、あるいは旅行中でさえ、片目ずつ見え方を確認し、その度に霞みゆく光を感じ、荒み、未来に恐怖した。

 そして春が来た。
 4月6日、夕刻。
 1か月を待たずに眼科医へ。

「左目はなぜ視力が出ないんですか? いろいろと調べたんですが緑内障の症状とは違うように思うんです」

 どれどれ、ちょっと待ってよ……老医師は僕の目にオレンジの点眼薬を差しライトで照らした。

「あれ、これ……白内障や。若いのに……」

 いまになれば思う。コンタクトをつくるとき、必ずなされるこの検査。
 コンタクト専門店に必ずいる簡易的な検査専門の医師でさえ行うこの検査すら、僕はこの眼科で初めて受けたことを。





【続く】

















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