【体験記】白内障だったんです。 | ワールズエンド・ツアー

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田中ビリー、完全自作自演。

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【体験記】白内障だったんです。


「白内障ですね。若いのに……」
 特に珍しくなさそうに告げる医師。
「らしいですねぇ……」
 一昨日、そう言われたばかりなので驚くこともなく返す僕。

 一度目は定期通院していた小さな眼科の老医師に、今回は紹介されて訪れた、某総合病院の眼科医に。

「いつ手術します? 先進医療特約の保険あります?」
「えー……」
 先進……なに? 確認してみないとわからない。

「すぐできるんですか、手術って?」
「術前検査は必要ですけど……えと、目(眼球)の大きさや視神経の状態、乱視……目の検査が10くらい、全身検査は採血と心電図、血圧です。そうですね……」
 比較的若い(30代後半から40代あたま)、髪を短くした医師は天気や季節を話題にした世間話のように話す。

「なんなら、今日やっちゃいます? スケジュール詰めたら……(今日の)最後にやれちゃいますけど」
「や、まあ。早いほうがいいとは思いますけど……保険のことは家に帰らないとわからないんで」
「そうですね、もし入っておられたら多焦点レンズを使えるので。お若いし、僕なら絶対に多焦点をオススメします」
「たしょーてん?」
「ええ。手術のときに挿れる人工の眼内レンズは多焦点と単焦点があって……」
 特に調べるわけでもなく、のこのこと、とぼとぼと紹介状を手に初めて訪れたのである。

「若年性でも老人性でも、白内障の症状と治療法は同じなんです。手術で濁った水晶体を抜き、人工レンズを入れます。手術そのものは15分程度です」

 白内障は手術をすれば治る。そのことは知っている。家系的に多くがその手術を受けているからだ。

……僕はその誰よりも若い……というか、50代の半ばに受けた叔母でさえ「若いのに」と言われたそうな。目はほとんどじいさんということだろうか。

 おかしい。先だっての血液検査では「狙い撃ちしたみたいに検査項目すべて基準値です。とてもきれいな体ですね」と誉められたばかりなのに。


 某総合病院。
 眼科のみ新たに別棟を構えるほど注力しているらしい、地域でもっとも眼科が有名だとされる病院。
 それぞれ担当はあるものの、常時10名以上の医師と50名近くの看護師、検査員がいると思われる規模の眼科。
「このあたりで眼科は?」と聞くと、あるいは検索すると人もグーグルもいの一番にその名を発するT病院。

「(年齢的に)珍しいと言えば珍しいですけど、稀と言うほどでもなくて……逆に白内障で良かったんじゃないですか?」
 医師は話す。若さかそもそもの人柄か、あるいは患者の緊張を和らげるためか。ともかく話題が左右に振り切れるほど脱線しつつ、冗談が多く、深刻さを感じさせない。
 言い方を変えればとても軽い。質問に対する解答は明確でさすがに聡明だが軽い
 
「目の手術って……見えてるんですよね、やっぱり」
「散瞳するんで(瞳孔を開く点眼薬)、ぼんやりはしてますけど、なんとなくは見えます……僕は受けたことないのでわかんないですけど
「パニックになる人っていないんですか?」

 僕は臆病である。痛みはともかく、メスなり器具なりが見えているというのは正直に怖かった。

「田中さんがパニックになるぶんには大丈夫です、なんとかします。僕がパニックにならなければいいんです
 正論である。僕はまな板の上の鯉になるほかないのだ。

「田中さんの場合、左目はかなり(症状が)進んでます。すぐに手術したほうがいいと思います。右はまだ初期ですが濁りはありますし、左右不同一視になっちゃうので、順にやってしまえばいいと思いますよ」

 え、右も?
「若いのに白内障やなぁ……左目だけやけど」
 そう診断されてここへ来たのだが。

「や、右もなってますよ。たぶん、進むのは早いと思います」
「じゃ、じゃあ……」
 2015年の五月。ちょうど一年前のこと。
 僕は名前こそ似ているがまったく違う眼病と診断され、一年に渡って通院治療を続けていたのである。




【つづく】








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