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【まとめ】と【雑記】スネイク・オン・ザ・ビーチ
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「ここではないどこかへ」
ふたりが話し合っているのは今年流行る神様のことらしくて、結論は出ないが、なんにしても適当にどれかが流行るだろうと腹を揺すって笑った、カウンターではムラサキ色のドレスを着た女が首に下げたネックレスのパールの数を数えていた……
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「高鳴る胸は君のせい」
世界中の真夏をすべて集めたくらいに赤くて熱い土、君はそこで彼らと肩を抱き寄せ合って円になっている。
胸の前で手を組んで、バラバラに砕けてしまいそうな胸の内を繋ぎ止めていた。
空を眺める。
そして目を閉じる。首筋から背中へと熱を持った滴が伝わる、食いしばっているはずなのに奥のほうから震えが止まってくれない……
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「鐘が鳴り響く朝に私は悲しい夜を想う」
「夜は闇とはまた違う、夜にしか生きないものがいて、太陽を欲しがるばかりが命じゃない」
遠い昔、そんなことを聞いたことがある。なぜだろう、私はことあるごとにその言葉を思い出す。
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「最期は君と抱き合って」
いつか夢に見たことのある景色、私にはそんなふうに思えてならなかった。予知能力があるだとか、未来を想像していたわけではなくて、ごく単純に夢でしかなかったわけだけど、目の前に広がる凍りついた風景は色を失くして耳まで凍りついたように静謐な、圧倒的な虚無だった。
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「雨季の前、海のそばのバス停で」
雨季の近づく海のそばのバス停には時間と行く先の表記がない。
ここで陸地が終わり、ここから海が始まる。人の往来はなく、時折、カモメが退屈しのぎに割れた悲鳴のような鳴き声をあげ、そしてその声は風の隙間を衝いて響くコンビナートのサイレンに掻き消される。
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「蝶か蛾か」
そう、以外かどうかは別にして、私たちは蛾を嫌い蝶を好む、薄汚なきと儚き美をそこに照らし合わせる、そうだろうか、そうも違うものだろうか、少なくともその二種は私たちヒトよりずっと純粋で動物的だ、間違いなくヒトより美しいものだ、なぜそれが分からないのだろう?
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「ヘビと老婆の森」
我が子と信じてヘビを育ててた老婆がいた、森の奥で身を潜めて暮らしてる。誰も近寄ることのない、孤独と暗黒が色濃く漂う辺境だった。
針葉樹が辺りをおおう炭火小屋にて、古びたセピアの写真には、誰だか忘れた見知らぬ青年が笑っている、変わらないままの笑顔が埃まみれで笑っていた。
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「あと少しだけ」
私はこの三年間でいちばん好きな席にいる。背の高さを気にして猫背気味になることもないし、陽射しに包まれてうたた寝だってした、それに。
それに、右斜め前には三年間同じクラスなのに一度も話したことのない、いつもどこかでその姿を追いかけていた人が座っている。
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「海沿いの椅子」
彼は静かで揺れることもない。雨風にさらされ続け、磨り減った脚は僅かに軋むことがある、そう、その椅子は既に老境に達している。
かつて彼の左右に並んでいた彼の友人たちは役目を終えてここにはいない。
夏が訪れるたびに彼は生まれたばかりであったころのことを思い出すことがある。
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「赤い紙」
今日はこれだけ、おじいさんはそう言って麻紐に巻かれた赤い紙の束を指差す。
そう、これは一方通行の手紙。送るだけで返事の来ない手紙。
「平和の招待状だよ」とおじいさんは言っていた。
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「貌」
目の前に女がいる、艶めいた長い髪が腰まで届いている、執拗なまでに櫛を通したのだろう、毛先のゆるいカーブまでは磨いた刃物のように鈍く光を跳ね返している。
細く高い鼻梁、春に舞う蝶を思わせる睫毛、視線がぶつかるとその水晶体には私が映し出される。生命として完全に敗北していることを私は思い知らされる。
【絵本】きみといっしょに
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