「草原には君がいた」
ぽつりぽつりと、音なく染み込むこともなく、
土の歩道を濡らしては、瞬く間に乾くでもなく、
春の雨、それは夜の孤独が零す、
数滴足らずの涙にどこか、似ているようなそんな気が、
誰が聞くわけもなく、聞いて欲しいわけでもない、
届けるつもりのない声は、
ぽつりぽつりと無言に落ちる、葉から落つる弱々しい雫にも似て、
数えた羊の数十頭、いつからなのか、
その姿の背後を見てた、揺れる尾を眺めたつもりでいつしか曖昧なる輪郭、
溶けて消えた彼らは小屋で眠ったろうか、
おやすみなんて挨拶いらない、眠りたいから眠るだけだと、
草原に浮かべた小舟、袖のない麻、
ワンピースのドレスから、伸びる白く細い腕、
破れた雨傘、穴から射しこむ光のなかで、
たぶん彼女は笑ってる、笑っていてくれたらいいと思う、
影を踏んでしまわぬように、
足下、緑を蹴らないように、
そろり踏み出す爪先に、葉から雫が乗り移る、
強く編んだ髪をほどいた、
色鮮やかなる新たな季節に似合い過ぎてた、
差し出された手のほうへ、荷物を捨てた利き手を返す、
振り返るのはやめればいいと、
そのとき何故か僕は思った、
【備考】
この「草原には君がいた」は、以下リンクの記事と連続する時間のなかにあります。
【補足】
金曜なのでコメント欄を開けています。コメント、ご意見などあればどうぞ。この記事でなくても、今週のエントリーに関することでもオッケーです。
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