127時間 (評価:★★★★) | そんなことより恋をしろ

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※※※ 注意 ※※※

「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。



ラスト10分で心をすべて持っていかれる

★★★★
(★…1点 ☆…0.5点,★5つで満点)

そんなことより恋をしろ-127時間


(2010年/アメリカ・イギリス/94分/127 Hours)

【 監督・脚本 】
ダニー・ボイル

【 原作 】
アーロン・ラルストン
127時間 (小学館文庫)

【 出演 】
ジェームズ・フランコ
アンバー・タンブリン
ケイト・マーラ
リジー・キャプラン
クレマンス・ポエジー




【あらすじ】

2003年4月25日金曜日の夜、仕事から帰ったアーロンは
広大な岩場が広がるブルー・ジョン・キャニオンで週末を過ごすため、
足早に車に乗り込み出発する。
土曜の朝、マウンテンバイクで軽快に走り回るアーロン。
第2の故郷と豪語するだけに、複雑で危険な地形もお手のものだったが、
目的地に向かう途中、足場が崩れ谷底に落ちてしまい、
落石に右手を挟まれ身動きができない状態に。
叫んでも誰もいないブルー・ジョン・キャニオンのど真ん中。
なんとか脱出策を講じるが岩は微動だにせず、アーロンは死を意識し始める。
水も食料も底を尽き、死を覚悟したアーロンの頭の中には、
家族や仲間たち、そしてかつての恋人への後悔の念だった―


【コメント】

「生きるってのはな、痛いんだよ!」
おっと、これは『冷たい熱帯魚』の名ゼリフだった。
しかしながらこのセリフ、本作『127時間』のほうがむしろしっくりくるのではないか?

名監督ダニー・ボイルの映像テクニックはこの際さておいて、
正直言えば、開始から80分間は特筆するほどの展開ではなかった。
ワンシチュエーションものならそれなりに予測の範囲内、せいぜい★3つだ。
そんなテンションを唐突に引き上げたのがラスト10分。
ラスト10分で強引に心を持っていかれ鳥肌が立った。
こんな映画は観たことない。
ラスト10分のボルテージの急激な上りよう。
決して奇抜な脱出をしたのではないし、
誰かが偶然発見してレスキューされるようなラストであれば
記憶に残らない映画の1本として埋もれていただろう。
最も確実な、そして思わず目を背けたくなるような脱出をするのだが、
俺の鳥肌の意味は、何もそのおぞましさで立ったものではなく、
なんとなく死が見えてきて半ば諦めモードだった主人公アーロンが
「やっぱり俺生きる!」という決意とその行動にシビれたのだ。

このラスト10分が本作を一気に傑作へと駆け上がらせたと言っても過言ではない。
だから、どんなに“神経ビーン!!!”が痛そうでも絶対に目を背けてはいけない、
あのもがきこそが本作の最も重要な場面なんだ。
それは、劇中アーロンが
「この岩は俺をずっと昔から待っていた。俺はなるべくしてこうなったんだ」
というこれまでの独りよがりな人生から脱却し軌道修正するため、
そして、腕と引き換えに本当に大事なものを取り戻すための、
言わば本気で生まれ変わろうとした行為なのだと。

「岩よ、長い間待ってくれていたのに悪いな。
 俺はやっぱりまだ生きたいわ。
 独りで死にたくない。
 腕一本くれてやるから、これでお前とはお別れだ。
 ざまーみろ」


陽を浴びたアーロンからそんな声が聞こえてくるようだった。
肉体的損失の代わりに得た過去の自分との決別と新たなる人生、そして得た絆。
まさに「生きるって痛い」んだなと。

アーロンのセリフじゃないが、
今年40を迎える自分自身を照らし合わせると、
本作『127時間』と、先に観た『SOMEWHERE』は、
もしかしたら観るべくして観た映画なのかもしれないな。
俺が今“何か”を失ってまでも生きようとする精神力はあるだろうか?
人生の折り返し、いや、もうとっくに過ぎているかもしれない、
そんな年齢になった今、ライフワークともいえる映画鑑賞で
人生を見つめ直すことになるとはね。


【2011年度 Myランキング】(6/19時点)

本作は、本年度のベスト10中3位(暫定)にランクイン。


(ベスト)… ★★★以上が基準

  1位:冷たい熱帯魚
  2位:SOMEWHERE
  3位:127時間
  4位:塔の上のラプンツェル
  5位:漫才ギャング
  6位:さや侍
  7位:イップ・マン 葉問
  8位:イップ・マン 序章
  9位:アンチクライスト
 10位:アンノウン
  次点:ブラック・スワン
     エンジェル・ウォーズ
     GANTZ


(ワースト)… ★★☆以下が基準

  1位:ウォール・ストリート
  2位:グリーン・ホーネット
  3位:男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW

<その他ランク外一覧>
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