SOMEWHERE (評価:★★★★) | そんなことより恋をしろ

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『映画を観るよりもお前は恋をしろ恋を』
…そんな感じのブログです。

※※※ 注意 ※※※

「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。
これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。



些細なふれあいから得る人の心の変化こそドラマチック

★★★★
(★…1点 ☆…0.5点,★5つで満点)

そんなことより恋をしろ-SOMEWHERE


(2010年/アメリカ/98分/SOMEWHERE)

【 脚本・監督 】
ソフィア・コッポラ

【 出演 】
スティーブン・ドーフ
エル・ファニング
クリス・ポンティアス




【あらすじ】

酒と女に溺れ、怠惰な日々を送る映画スター・マルコ。
ある日、前妻レイラに一人娘・クレオの面倒をしばらく見てほしいと頼まれ
マルコとクレオは束の間の親子生活を送る。
何の変哲もない親子の触れ合いに、マルコは次第に何かを感じ始める―


【コメント】

その昔、2年半付き合った彼女と別れるときの話。

地方から上京していた彼女は、あまり仕事がうまくいかなくホームシックに陥っており、
加えて実家から、家庭の事情で帰ってくるよう迫られていた。
あれだけ夢と希望を持って上京したのに、今じゃ満員電車に乗るのも嫌だ、
だけど離れ離れになりたくない、と泣き叫ぶ彼女のメンタル面を考えて、
俺のほうから別れを切り出し実家に帰るよう促した。

それから彼女が会社を辞め実家に帰るまでの3ヶ月間、
俺と彼女はいつも一緒にいた。
朝起きたら一緒に朝食を食べて、
会社に行くときは「いってらっしゃい」と見送られて、
帰ったら「お帰りなさい」と出迎えられて、
一緒に晩ごはんを食べて、一緒に寝て、
休みの日は家で過ごしたり、たまに買い物に出掛けたり。
なんでもない、そんなつかの間の短い新婚生活を穏やかに過ごした。
その間彼女はもう涙は見せまいと気丈に振舞っていたが、
それでも時折俺にすがりついてワンワン泣いていた。
Hしてるときに泣かれるもんだからたまったもんじゃない。
抱きしめて落ち着かせるのが精いっぱいだった。

別れの日。
有休を使って会社を休み、東京駅まで見送った。
あれだけ泣いていた彼女は、その日泣かなかった。
すでに泣きそうな顔してるくせに最後まで堪えて笑顔を見せていた。
だから俺も堪えた。
彼女が新幹線の改札を通り、背中が見えなくなるまで耐えた。
その後、駅のトイレに籠ってしばらく泣いた。
あれだけ泣いたのは小学生以来だった。
でも実は泣いたのはこれが初めてじゃないのは内緒だ。
仕事中どうしようもなく涙がこみ上げてきて、
会社のトイレでも何度か声を押し殺して泣いていた。
どんだけトイレで泣いてんだよ。
いい歳こいて、こんな汚くてクサいこんなところで俺は何やってんだと。
メソメソ泣くくらいなら、彼女のためにもっと何かできただろうと。
もっとじっくりと彼女と向き合ってあげるべきではなかったのかと、
もっと他に解決策を見出せたんじゃないかと、
もう二度と会えないのに、安直に別れを切り出した自分をひどく悔やんだ。

とまあ、長々とほろ苦い思い出話を語ってしまったわけだが、
結局のところ、びっくりするほど何の展開も事件も起こらない本作を観て、
なぜか俺は、何年も前のありきたりな実体験を思い出したわけだ。

なんかダブっちゃったんだよね、主人公と自分が。
要するに、現実に映画のようなドラマチックな展開なんかなく、
むしろ些細なふれあいから得る人の心の変化こそドラマチックなんだな、と。

彼女と別れた後の自分はどんな日々を送っていたか?と考えると、
まるでオープニングの、砂漠にある同じ道をフェラーリで
延々と走り回っている日々だったような気がする。
ひとり生きていくには困らない給料もらい、物質的にも満たされているはずなのに空虚。
それは、本作の主人公マルコのような華々しい映画スターですら
感じることなのではないだろうか。

俺もそろそろ、フェラーリを道端に乗り捨てて、
目指すべき“どこか”へ自らの足で歩く必要があるのかも知れないな。


【2011年度 Myランキング】(4/3時点)

本作は、本年度のベスト10中2位(暫定)にランクイン。


(ベスト)… ★★★以上が基準

  1位:冷たい熱帯魚
  2位:SOMEWHERE
  3位:塔の上のラプンツェル
  4位:漫才ギャング
  5位:イップ・マン 葉問
  6位:イップ・マン 序章
  7位:アンチクライスト
  8位:GANTZ
  9位:あしたのジョー
 10位:トゥルー・グリット
  次点:ソーシャル・ネットワーク
     アンストッパブル
     英国王のスピーチ

(ワースト)… ★★☆以下が基準

  1位:ウォール・ストリート
  2位:グリーン・ホーネット
  3位:男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW

<その他ランク外一覧>
パラノーマル・アクティビティ2ヒア アフターナルニア国物語第3章:アスラン王と魔法の島