Surf’s-Up -29ページ目

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

 今回初めて、LowとSt.Vincentを同時にレビューを出しました。この2枚はすごく好きだったのにもかかわらず、なかなかレビューが書けない作品でもありました。好き故にどんな言葉で語ろうとしてもしっくりこない。


 そのしっくり来ない感じが、まだ抜けきったわけではありませんが、3位と1位にふさわしい作品だとは自信を持って言えます。どうでしたでしょうか?何か感じた方は感想を聞かせてもらえるとうれしいです。


 シーンがどうこうという総括はしません。シーンが活気のある状態であろうとなかろうと、素晴らしいロックは必ず鳴っている、という確信を僕はこのアルバム達との出会いを通して持つことができました。


 個人的な志向としては、例年よりもギターロック的作品が少なくなっています。Yuck、Arctic Monkeysっぽいものがもっと入るかと思ったけど、振り返るとBon Iverのような幽玄的なサウンドスケープ作品に心惹かれることが多かったです。Kurt Vileもそうでした。ギターロックは相変わらず好きですが、そこに行き詰まり感を覚えていて打破しようと格闘しているアーティストや、はなからそういう感覚抜きで自由な感性で取り組んでいる人たちの作品に魅力を強く感じました。


 そして、音楽雑誌よりも皆さんのブログから発信された情報で音楽を聴くことがすごく増えました。Kurt VileやSt.Vincentはまさにそうです。James Blakeもですね。で、結局こういう自分と同じ立場にいるリスナーの声が一番心にくるんですね。


 そんな風にいろんなブロガーさんのところに遊びに行きながら、来年も良い音楽とたくさん巡り会いたいなと思います。新譜中心主義からやや離れて見ることですごく世界観も広がったし。


 ちなみに、ベスト10に惜しくも漏れた作品(次点)は


 Demolished Thoughts/Thurston Moore

 Velociraptor!/Kasabian

 Farther,Son,Holy Ghost/Girls

 James Blake/James Blake

 Angles/The Strokes


 あと

 Collapse Into Now/R.E.M.

 MYLO XYLOTO/Coldplay


 この2枚は特別な思いがあるので、今回あえて選考外としました。

 そのことも近々紹介したいと思います。

 でもちょっと恥ずかしいので書かないかもしれませんが。


 もうすぐ2011年も終わりますね。

 正直しんどい1年でした。

 でも、自分の奥にあったいろんな気持ちに気づいた1年でもありました。

 自分探しの旅とか、そんなきれいなものじゃないですが。

 何を大切にしていけば良いのか、何を守っていけば良いのか

 いろんな経験がなければ考えることがなかったかもしれないから。

 

 その経験が生きるような2012年になればいいかなと

 あくまでポジティブに考えていこうと思います。


 今、いろんなことを視野に入れています。

 何かガラッと変えた方が良いのでは、という思いから

 仕事を続けるかどうか、ということも考えています。

 どこで、どんな風に生きていくか。

 病気のこともあるので、自分の身体と相談しながらですが。

 一人でじっくり考えたいと思います。

 同情されないように元気に生きて行けたらと。


 なんて言いながら、今とってもブルーです。

 クリスマスじゃないのにブルーです。

 

 ユニコーンではありませんが

 「だから嫌いだよ」っていう年末です。


 今年は何しながら年を過ごそうかな?

 RadioheadのDVDでも観ようかな。

 皆さんも良いお年を!


 ちょっと早かったか・・・


 

第1位 C'mon/Low




Surf’s-Up 米ミネソタ州出身の3人組、Low通算9枚目のアルバム。よく、スロウコアとかサッドコアなんて言葉で彼らの音楽性は表現されるが、個人的にはどうにも違和感を覚えてしまう。初期はそれでも良かったかもしれないが、彼らの音楽性は今やそんな言葉で括れないほど深化を見せている。


 前作「Drums And Guns」では、ぐっとポスト・ロック寄りになりサウンドスケープ面では新たなスケール感を獲得したが、このバンドの肝であるメロディーラインには若干不満を感じた作品であった。しかし、新作では儚さをたたえたメロディーラインが大復活し、ストレートなアルバムタイトルのように聴き手の希求心に応えたような作品となっている。

 まず、オープニングTry To Sleepが素晴らしい。メランコリックなイントロに、甘いヴォーカル、おそらくブラシを使っているであろう簡素で味わいのあるドラム・ビート。夜の帳にそっと寄り添ってくれるような甘美なナンバーだ。続くYou See Everythingではミミ・パーカーの柔らかなヴォーカルが堪能できる。荒涼とした景色が次第に開けていく様子が目に浮かんでくるような描写力を持ったナンバーである。3曲目Witchesは骨太なギターリフが舵となって、大河をゆっくりと進んでいくような力強いナンバー。バンジョーが入っているせいだろうか、ちょっとフォークカントリーなテイストも感じる。


 前作に比べるとサウンド面はぐっとシンプルになった。その分、彼ら本来の透徹とした美しさがより際だって聴き手に伝わってくるようになった。ほとんどがリフレインと言っても過言ではないメロディーライン。しかし、サウンドスケープがゆっくりと展開していくことで同じメロディーラインが終わりの頃には全く違ったもののように聞こえる。そのメロディーの発展性が彼らの作品の魅力の一つだと思う。その発展速度がこれまでにもないペースで緩やかなので、パンチのあるものを求める人にはなんとももどかしい作品かもしれない。しかし、一つ一つ小さな積み木を組んでいくような手仕事的サウンドスケープはわかる人には中毒性が強いものとして写るのではないだろうか。


 過剰にドラマチックにたたみかけようとするような曲は、ここには1曲もない。複雑なコード進行も。が、ギターの一音一音、ピアノの和音、とにかくどんな音もとても生々しく聞こえる。ヘッドフォンで聴いているとドキドキしてしまう。まるで生き物の鼓動のように聞こえてしまうのだ。Spiritualizedにも同じようなものを感じるのだけど、音楽を作ると言うよりも、思いがそのまま音になると、こういう感じになるのだろうか。


 また、アシッド、サイケやフォークなど雑多な要素を飲み込んでも全くぶれない世界観がここにはある。それはやっぱりどうしようもない哀しみや痛みを具現化しようとする意思だ。どうやってもそこから逃げられないし、ますます醜悪になっていく世界で傷ついている者へ向けられた鎮魂歌のように聞こえる。その強固な思いがこのアルバムの力強さと美しさを生んでいるのではないだろうか。聴けば聴くほど心に染み入る極上のロックだ。

 ラストのシンプルなフォークソング、something's turning over、これがまたたまらない。何度聴いても泣けてくる。最後にこれを持ってくるって・・・やばすぎます。全く飽きることのない、生涯にわたって聞き続けるであろう、僕にとってもレクイエムであります。「僕の好きなLow が還ってきた!」と手放しで喜びたくなる素晴らしい作品。最高です!

★★★★★(30/12/11)







第2位 Suck It And See/Arctic Monkeys




Surf’s-Up

毎回彼らのアルバムはベスト10に食い込んでくるし、これも最初から高いポジションに位置していたんだけど、Bon IverやJames Blakeと違って揺らぐことなく決まった1枚。彼らの作品の中では一番評価の低い作品とされるのだろうけど、これだけ心躍るメロディーを持ったロックンロールが他にあっただろうか?思い浮かぶのはストロークスくらいだ。こんな時代だからこそ、高らかに鳴るべきロックンロールなんだって声を大にして言いたいし、こんな時代に自分はこのアルバムにたくさん助けられた。



第3位 Strange Mercy/St. Vincent




Surf’s-Up
 自分の場合、なぜだかは全くわからないけど、なぜか29,30歳くらいの人とすごくうまが合う。同世代の人間よりも、10歳近く離れた人の方がなぜに話しやすいのかはわからないけど、微妙な世代観の違いがお互いに良い刺激を与えているのかもしれないし、その新鮮さがかえって心地よいのかもしれない。あまりに若いと、もうちんぷんかんぷんだし。基本的な価値観は同じで、体験的なところで違うっていうのが、実に良い距離感を生んでいるのかもしれない。


 NY、ブルックリンを拠点とするアーティスト、St.Vincentこと、アニー・クラークも現在29歳。今作が通算3作目となる。。ポリフォニック・スプリーのメンバー、スフィアン・スティーヴンスのツアー・メンバーとして活動した後、ソロ活動をスタートさせる。1st,2ndともに高い評価を得るが、アルバムごとに作風は大きく変わっている。


 今作では、ギターサウンドが全面に押し出された曲が多くを占めている。オープニングのChloe In The Afternoonは彼女の天衣無縫な歌と粘着質のギターが独特の緊張感を持ちながら絡み合っている、アルバムの始まりとしては最高にインパクトのあるナンバー。続くCruelは一転してシンプルな四つ打ちビートとキャッチーなシンセのリフが効いた優美かつポップなダンスナンバー。個人的にハイライトだと思っている3~5曲目Cheerleader、Surgeon、Northern Lights。この流れが最高だ。

 重厚なビートと雄大なメロディーラインのCheerleaderから,不穏なシンセ・リフに背筋をなでられるようなSurgeon、そして無機質なビートの中でハード・ロッキンなギターとノイズが狂ったように鳴り響くNorthern Lights。もうめちゃめちゃかっこいい。


 アルバムの後半は、彼女のヴォーカリゼーションをメインに据えた感じの曲が続く。その個性的な歌はケイト・ブッシュを想起させたりもするが、サウンドスケープ同様にエキセントリックな魅力を持っており、このアルバムでも大きな武器となっている。


 感心するのはシンセやコンピューターの使い方だ。独特のサウンドスケープを生んでいる要因となっているのは間違いないのだが、どの音も楽曲の中で自然に溶け合っている。レディオヘッドの新作もそうであったが、頭の中で流れる音楽を過不足なく忠実に再現できる力を持っていると思う。非常に洗練されているというか、知性の高さをすごく感じる。


  先鋭的な側面と、下世話にならない絶妙なさじ加減のポップネス、このバランスがアルバムの中で実に見事に取れている。先日リリースされたThe Beach BoysのSmileはその先鋭さ故に狂気の世界に足を踏み入れてしまったにもかかわらず、最終的には見事なポップ作品として世に出ることになった。でも、セント・ヴィンセントはそこをクレバーにやっていくことができるような気がする。


 彼女のアルバムはこれが初体験だが、これほどまでに刺激的かつ挑発的な作品に出会えるとは思っていなかった。最高傑作なのではないだろうか。でも、そうでないとしたらとんでもないアーティストだし、もっともっと取り上げられるべきなんじゃないかと大きく声を上げたい。


★★★★★(30/12/11)










第5位 Bon Iver/Bon Iver




Surf’s-Up





 これは最初、もっと上位でした。というか、1位でした。でも選考していくうちにこのポジションまで。ちなみに、同じようなアクションでJames Brakeはランク外となってしまいました。


 沸々とわき上がってくる感情を激情的に吐き出すのではなく、時間をかけて丁寧に綴っていく様が、幽玄的な音像となって浮かび上がってくる。それはかなりの衝撃でした。どれだけ音楽をよく知っていても、作れるとは限らない、センスの占める割合の高い音です。




第4位 Let England Shake/P.J.Harvey






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 これもリリース時はベスト3には入るだろうと確信していた作品。とにかくP.J.Harveyの佇まいが音からびしびし伝わってくる。サウンド面の徹頭徹尾の力強さ、ストイックさはもちろんのこと、彼女の歌が素晴らしい。ヴォーカルスタイルを微妙に変えながら、言葉や思いを大切に紡いでいる。女性アーティストがベストアルバム入りしたのはすごく久しぶり。


明日から1泊2日の「小旅行」に出かけます。

聞こえは良いんですけどね。

比較的体調は良いんですが、しっかり調べてきます。

最近注射が痛いので、すごくげんなりしているんですが。


大好きな温泉はありませんが

時間はたっぷりありそうなので

とりあえず何にもてをつけていない年賀状を

印刷して持って行こうかなと。


あとはひたすらiPhoneかな。


こんな調子でちょっと家を空けるので

ベストアルバム全部紹介できるかどうかが心配。



第7位 Days/Real Estate




Surf’s-Up



 ノスタルジックなリヴァーヴサウンドにはからっきし弱く,その分ハードルも低くなってしまう。なぜこの時代に,ここまでナチュラルにノスタルジアサウンドを作ることができるのだろうか?おそらく彼らの意識は美しくかつリアルなサウンドを作ることにあって、それが実は自分たちが抱いているノスタルジーと重なる部分が多いんだと思う。自分にとってジャストな音が詰まった1枚だった。




第6位 Smoke Ring For My Halo/Kurt Vile




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 先日やっと日本盤がリリースされたが,とにかくこの人の書くメロディーは素晴らしい。そしてアコギ1本でドラッギーな世界へと聴き手を誘う魔力を持っている。また、曲調のバラエティーが豊かでそれでいてそのどれもが濃厚な世界観を持ち、味わい深い。オルタナ系のミュージシャンの絶大なる支持を集めていることは大いに頷ける。


第10位 Yuck/Yuck




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 毎年生きの良い新人ロックンロールバンドを一つは入れたいと思っているのですが、今年はどうにも見当たりませんでした。ヴァクシーンズあたりも良い線は行っていたんですが。代わりに勢いとラフさが良いバランスで鳴っていたYuckを。決して完成度の高いアルバムではありませんが、ピュアなメロディーラインがCajun Dance Partyを想起させずにはいられなくて・・・よく聴きました。






第9位 The King Of Limbs/Radiohead






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 リリース時は「すげぇ」の一言しかなかったけど、聞き込むほどに落ち着いてきて、このポジションに。最高傑作とは行かないまでも、やっぱりこういうトライバルなビートものをやると2歩も3歩も抜き出たものを作ってしまうというポテンシャルの高さはさすが。ただ、それはリスナーにとっては想定内で、さらに予想を超えるものを期待され、それが実現しないと評価されないというポジションにいることは幸か不幸か?完成度だけなら1位でも全然おかしくないんですけど。






第8位 The English Riviera/Metronomy






Surf’s-Up








 1stからガラッと音を代え、よりテーマが明確になった2nd。平穏と狂気がモザイク画のように描かれていて、角度によって見え方感じ方が全然変わってくる。でも、その変化が気になるかというとそうではなく、その時の感じ方に自分が「没頭」してしまうような吸引力を持った音楽である。自分の夏場のサウンドトラックとなった一枚。


 





先日、「大切な人に贈るなら、ColdplayのChristmas Lights」と言いましたが、


僕には誰もクリスマスソングを、贈ってくれません。


当たり前か。




それは良いんですが


自分自身に贈るとしたら


やっぱりこの曲になります。




Christmas Time In Blue/佐野元春




なんか毎年こうなんじゃないだろうか?と思って調べてみたら


一昨年も同じことブログに書いていた。




これは12インチシングルですが


当時、「12インチは音がいい」ってい言われていたような記憶があります。


サイズがLPなので回転数の関係で、っていうのが理由だったと思う。


この頃は、とにかく良い意味で「音楽に飢えていた」時代だったから


すごく印象の強い曲です。


体験の鮮やかさが未だに消えない。




でも、この頃12インチは買えませんでした。


自分自身は12インチシングルに強いあこがれがあったんだけど、


友達は「サイズがLPなのに、曲数少ないじゃん。損した気分になる」と


否定的な意見が多かったなぁ。




Tonight's gonna be alright


っていうメッセージは今だからこそリアルに響きます。




皆さんはすてきな人とすてきな夜を!







グレイテスト・ヒッツ~パート・ライズ、パート・ハート、パート・トゥルース、パート・ガービッジ、.../R.E.M.



¥3,480

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に収録されている新曲3曲。その中のWe All Go Back To Where We Belongが素晴らしい。


そして、今週はこの曲に涙腺を刺激されまくっている。




この曲を聴いて、やっと彼らの終わりを受け入れることができた。


終わるべくして終わったんだと言うことを。




自分たちがいるべきだった、場所に戻るために選んだ


R.E.M.という物語の終焉。




それは揺らがない決心の元に生まれた選択ではなかったことも伺える。


でも、だからこそ、僕は彼らの音楽を絶対的に信用できる。




迷い、自信が持てない中でこそ、人は前に進んでいくものだから。