Velociraptor!/Kasabian | Surf’s-Up

Surf’s-Up

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 カサビアン、通算4作目のニュー・アルバム。日本でも比較的人気のある彼らであるが、本国イギリスでは揺らがぬ人気で、このアルバムも当然のように全英1位になった。普段チャートなんてどうでも良い自分であるが、かつてBeady Eyeのファーストが全英1位になれなかったというニュースを聞いて、少し考えてしまった。あれだけザ・UKなロックアルバムが、しかもOasisファンなら間違いなく買い求めるであろうアルバムが1位になれない。本国ではそれだけ「ロック」に興味が無いのだろうかと、そんな事実を示唆していたような気がしたからだ。だから、このアルバムが1位になったことはいくらか僕を安心させた。


 アルバムの帯や宣伝文句にもやたらと「クラシック・アルバム」という言葉がある。これはインタビューでメンバーの口からも語られている言葉でもあるが、メロディーを基調としたアルバムを作りたいという考えが元にあったようだ。そして、その言葉通りのアルバムが完成した。


 元々抜群のメロディーセンスを持っているバンドだと思うのだが、彼らの場合それを凌駕するほどのグルーヴに耳が行きがちで、正面切ってメロディーについて語られることは無かったと思うし、むしろロック・グルーヴのカタルシスを追求するために、「グルーヴありき」のソングライティングがなされていたように思う。


 しかし、今作に収められている曲は、どこを切ってもあふれてくるのは憂いと哀愁を帯びた美しいメロディー。一発のドラで始まる、強烈なインパクトのLet's Roll Just Like We Used Toのサビのメロディーは彼らの書いた曲の中で最高のものの一つだと思う。メロディーにストーリーテリング能力があるというか、アルバムの世界にグッと引き込んでくれる1曲である。


 2曲目Days Are Forgotten はまさに彼らの王道的チューン。野蛮なグルーヴはより粗暴さを増しているものの、またそこにしっかりとしたメロディーがある。そして、3曲目。これだけを聴いたら、CD間違えたんじゃないかと思うくらい、スウィートなGoodbye Kiss。かつて無いほどの素直なメロディーがある。ほかにもエキゾチックな香りを漂わせるLa Fee Verte、Acid Turkish Bath (Shelter From The Storm)


 もちろん、Re-Wired、Switchblade Smilesのように「これぞカサビアン」というナンバーもある。ちょっとベクトルを変えただけで、ここまで素晴らしいものができることが驚きだし、「クラシック・アルバムを作る」という考え方は、今後のロックバンドの選択肢の一つとして大いにありだということを証明した傑作だと思う。


 ★★★★☆(3/11/11)