Yuck/Yuck | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 元Cajun Dance Partyのダニエルらが結成した新バンド、Yuck。Cajun Dance Partyはメディアからも大型新人として大きく取り上げられていたが、メンバーの若さも影響したのか、あえなく解散。しかしながら才能の片鱗だけは見せていただけに、当時は惜しいなと思っていた。

 そして、ついに新バンドとして活動を始めたことはうれしかったが、バンド名やらジャケットからしてやる気を感じることができず、やや不安だったのだが、素晴らしいアルバムを届けてくれた。  
ダイナソーJrを思わせるようなギターが吼えるGet Awayのインパクトがとにかく大。Cajun Dance partyではもっと繊細でリリカルな音を出していただけに、こういうグランジ直系の音を出すとは想像していなかった。しかしこれが板に付いているというか、ダニエルのヴォーカルスタイルとよくはまっている。

で、これが基本線になるのかというと、そうではなくて、ギターロックの見本市のような幅広い楽曲が並ぶ。初期TFCのようにノイズギターとハーモニーが融合したShook Down、アコギとホーンの響きが暖かいSuicide Policemanなど、振れ幅の大きさは聴く人によっては、まとまりがないように映るかもしれない。

しかし、個人的にはバンドがすごくメロディーを大事にしている姿勢を、各楽曲から感じる。サウンドのラフさにかすむことなく輝いている。というか、むしろサウンド面で若干隙間を作ることで、メロディーの鮮度をより感じられるようになっている。意図的なものかどうかはわからないけど、サウンドのスタイルとメロディーのテイストが良い具合にはまっていると思う。

また、おもしろいのがアルバムのラストがRubberであるところ。Six.By Sevenばりのヘヴィー・サイケであり、とぐろを巻くようなグルーヴでアルバムを閉めるという、ちょっと一筋縄では行かないところも今後を期待させる要素だ。

USインディのギター・ロック好きならツボに入る曲が一つくらいはあると思います。Smith Westernsあたりとシーンを拡大してくれたらいいのに、と思うのですが。

★★★★(23/07/11)