再発・転移後の治療法として患者が必ず「考える道」が免疫療法だと思う。

私の場合、確定診断時には既に転移がバッチリあったので、初回治療の前に
最初に検討したのがいわゆる造血幹細胞移植併用大量抗癌剤投与だった。

しかしながら、結果として私自身はこれまで免疫療法と類される治療を実施
していないし今後も当分は行う予定は無い。最大の理由は「効果が弱い」と
判断しているからである。

昨今、ネットで「癌」、「免疫療法」と検索すると数限りなくヒットする。
が、有益なモノはごく一部の様である。
下図は数少ない「公平な説明」の1つで2004年暮れの一般向け公開講座の資料。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-gc20041127

やや古いのが難点だが私はこれまでに10回は読んだと思う。
非常に簡潔かつ明瞭に免疫療法の現状を説明していると考える。

私のフィーリングでは2005年頃を最後に免疫療法の研究発表は下火になっており、
高上氏の説明は恐らく2008年現在の状況もある程度カバーしていると思える。

免疫系と癌は表裏の関係にあり、将来「癌が治る病気になる」時、免疫療法は
癌治療の中心的な柱になっているかもしれない。ただし巷のクリニックで試行
される様な「自家移植・増幅」的な手法では恐らく根本的な解決にはならない。

オセロゲームで「黒が白に一斉に裏返る」様な効果は量的にも質的にも厳しい
と私には思える。奏効率、及び持続期間共に恐らく「弱めの抗癌剤」にも
満たない程度の効果しかないのではないだろうか。

「副作用が少ない」のがメリットとの事だが、全身治療が必要な癌患者にとって
治療が「空振り」に終わるのは致命的な悪影響を及ぼす場合も少なく無い。

ちなみに、、
東京女子医科大の教授がサイドビジネスで開いているクリニックの例を見ると
樹状細胞療法8回で約300万円、活性化リンパ球で約180万円との事。

素人目には原価は、採血3000円、検査5000円、処理・培養2万円、
投与3000円、、、。「計3万円/回」ぐらいな感じではないだろうか?
費用の想像がつく方には是非お教え頂きたい。
今後、数回にわたり、主として「再発後」の癌治療に関する私の理解を整理する。
エビデンスやデータに基づかない想像や一般論が中心になると思われ、非常に
不満足な内容となっている。

が、その責任は毎年数十万人の癌患者をみすみす死なせながら、発病から死亡まで
の「治療方の組み合わせ」と「順番」、及び患者の特性などに関する有益なデータ
ベースを整備してこなかった医療、行政側にある。

下図は今後予想される経過とそれに対する治療法をまとめた一例である。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-sc20081218_2

経過を予想しづらいのが癌の特徴ではあるが、一方でだいたいの「相場」もある。
図はそのモデルケースの1つと理解して頂いても構わない。

私の個体としての境界条件は
・体質性黄疸によるビリルビン高値。イリノテカンとS-1の使用が難しい。
・EGFR変異なし。イレッサ、タルセバの期待が薄い。
といったところ。

治療の中心に据えるべき点は、
・肺内の微小転移の多発、と
・脳転移の多発
いずれも命に直接危機を及ぼし、かつ局所治療で手が出せない。

特に脳転移は血液脳関門と呼ばれる非平衡環境のせいで抗癌剤に期待しにくい。
唯一、可能性があるとすれば恐らくシスプラチンぐらいだろう。

癌治療は「強いカードから先に切る」のが原則ではあるが、シスプラチンは
多発脳転移が起こるまで残しておきたかった。骨盤転移の発見があと2ヶ月
早ければ他の「ゆるい」抗癌剤でも恐らく時間稼ぎが出来たハズである。

図の例で言えば、2010年頃に適当な抗癌剤が無く行き詰まる事になる。
発見が2ヶ月遅れる事は単に寿命が2ヶ月縮むだけではない。治療全体の
設計に大きな狂いが生じる事になる。

再発・転移後の治療においても「早期発見」がいかに重要か強調したい。
浅田真央とキム・ヨナは素人の私が見てもケタ違いな事がわかる。
サッカーで言えばペレとマラドーナの直接対決ぐらいな感じかも知れない。
しかも、競技の性質もあるせいか大変清々しい。

そういう訳でフィギュアスケートの中継なども見てしまうのだが、
最近良く見掛けるのが井上怜奈さんのがん保険のCM。

書籍や本人の弁などによると、
・1998年?アメリカで咳を主訴として診断。22歳。
・肺癌。I期。手術もしくは放射線化学療法が選択肢。
・シスプラチン+エトポシド、さらに放射線治療?により半年後に寛解。
・「進行の遅い癌なので抗癌剤を選択しました」とのこと。

非小細胞肺癌なら、98年で米国でエトポシド?ってことはないだろう。
レジメン的には小細胞肺癌かな??と想像してしまう。しかしながら、
「進行の遅い癌」?。確かに寛解にも半年かかっている。じゃあやっぱり腺癌か?

いずれにせよ決定的に重要な事は「早期発見」に尽きる。普通22歳では
少々咳が続いても簡単に病院になどは行かない。井上さんの場合、前年に
肺癌で父親が他界している。恐らくその体験が活きたのではないだろうか。

レコーダーのハードディスク容量が厳しくなって来たので録り貯めた番組を
チェックしていると井上さんを特集した4月10日放送「クローズアップ現代」
が出てきた。ちょうど骨転移の痛みで、テレビを見る余裕が無かった頃の放映。

内容は、
・がんでも生き甲斐を持つ事が重要。それが他の癌患者にも勇気を与える。
・最近は癌も治る病気になってきた。治療法も生き方に合わせて選ぶべき。

という主旨。ネットで「癌」と検索すれば出てくる「掛け声」の羅列に過ぎない。

もしも井上さんを癌患者として取り上げるなら番組の70%は「早期発見」に
ついて強調されるべきである。また20%は日米の放射線治療の「厚み」の差
について明らかにすべきであろう。

スケートや結婚、井上さんの人物像については残り10%に織り込めば充分である。

井上さんの予後が良好な理由は「生き甲斐がある」からでも「手術を避けたから」
でも無い。(もしかしたら咳は勘違い?と思える程)効果的に早期発見が出来た
事に注目すべきであり、その後の経過には特に驚くべき点はない。

非常に稀な1例を取り上げ、癌腫や年齢、治療環境の多様さを考慮せず、抽象的な
想像に終始する、、。メディアで癌を報じる場合、こういった姿勢がインチキ療法や
ぼったくり商売を助長する素地になっている現状に是非気づいて欲しい。

癌患者の生き甲斐や勇気を阻害し、最適な治療法の選択を妨げている真の原因を
追求することを避け、有益な情報に乏しい情緒的な放送だったと思う。
変化があるとすれば来年の1月以降の様な気がするが、まあ今年は「変」との事。
むしろ国内的には「不変」の「変」の様な気がするが、、。

私も重篤な癌患者なので来年は「変化」を期待したい。
病状の好転もだが、その為には抗癌剤の許認可制度の変更が不可欠だと考える。

日本の場合、施策の95%以上は官庁で立案し、決められている様に見える。
この状態は原則的には問題があるが、私はやむを得ないと思っている。

国会議員の皆さんに多数決で何かを決めさせるなんてとても怖くてできない。
私が担当部局の係官なら適当にご機嫌を取りながら、粛々と仕事を進めるだろう。

抗癌剤が無ければ生きられない様なIII期、IV期の癌患者には1日も早く死んで
もらい、1円でもムダな医療費を使われないように断固頑張るかも知れない。

それはそれで理解出来なくは無いが、これまで健康保険料を納め続けてきた
私の利益には反している。数年前と違い、効く抗ガン剤も開発されてきた。
重粒子線やラジオ波などの局所治療と組み合わせる事で長期生存の可能性もある。

民主党に過大な期待は出来ないが、可能性があるとすれば管直人氏だろう。
薬害エイズ問題は政治主導で官僚の不正義を追求した近年始めての例だと思う。

川田龍平氏はさすがに薬害で酷い目にあった為、抗癌剤の許認可についても
慎重な意見を持ってはいるが、それは癌治療の実際的な理解が不足しているだけ
であり、科学的な議論をすれば理解できると見込んでいる。

管直人厚労大臣、長妻昭年金特命大臣、川田龍平厚労政務官、、ぐらいの
体制になれば、科学的に正しい意見が幾らかは反映されそうな気がする。
大臣主催の勉強会か委員会に是非私も招待してもらいたいモノである。

ただし政権交代があったとしてもその恩恵を受けられるのは2010年以降になる
だろう。やはり骨転移は、起こるとしても、もう少し後で来て欲しかった。
10年以上昔の話にはなるが、世界の主だったメーカーの代表的な車について、
「音・振動」、及び「耐久性」評価を担当した事がある。

例えばカーグラフィックTVなどでは何時までたっても「私はフランス車が好き」
とか「日本車もやっと追いついてきた」などと子供並の車の見方を続けている。

が、技術者の目から見るとかなり以前から世界のトップメーカーはトヨタ。
少し離れて2位タイが日産とメルセデス。で間違い無いだろうと思う。

F1レーサーのアラン・プロストが含蓄のある言葉を言ったことがある。曰く、
「私にとって理想の車とはチェッカーフラッグを受けた直後、
 1m走った所で全ての部品がバラバラになる車である」と、。

性能vs強度・耐久性vs重量(燃費&コスト)は相反する課題であり、生産ラインの
合理性やメンテナンス性を含め「最適なバランス」を追求するのが車造りの基本。

恐らく現在も、国内メーカの一つの基準は「18万km耐久」であろう。
これは「基幹部分や重要保安部品については無交換で18万kmは走れますように」
という所を目標にギアやネジ1本にいたるまで徹底的に「最適化」を行う。

例えば「ドア1枚あたりのスポット溶接を120カ所」等と決めるのにも根拠がある。
それは119点では足りないし、121点でも過剰品質なのである。

メルセデスやゴルフに「しっかり感」があるのはアウトバーンを想定している
ためで、国内メーカーとは狙っている価格帯と耐用年数が違うだけの事である。

それに対し、いわゆるビッグ3の車は当時「信じられない程」酷い状態であった。

トヨタや日産、メルセデスに追いつこうとするならば、設計、実験、評価、生産、
などの基幹部門について、相当数の人材を「他社から引き抜く」必要がある。

カルロスゴーンが日産を再建した時は余剰人員のカットと下請けの切り捨てで
対応できた。幸いな事に日産には当時ギリギリの「技術の蓄積」はあった。
今のビッグ3には「技術」以前に「技術を産み出す文化」すら無い。

しかしながら、潰れた場合の波及効果はあまりにも大きい。

役員がプライベートジェットで公聴会に来たから「救済反対」とか、
給与を1ドルにしたから「賛成」といったレベルの話ではない。
もしも私だったら各社の財務や人事、生産に関する調査を数ヶ月かけて行う。

工場や本社ビルなどの資産を半分くらいは「叩き売る」ことになるかも知れない。
ここに公的資金を注入せざるを得ないかも知れない。が、その活用次第によって
は雇用をある程度守れるかも知れない。

残りの「使える」部分は自動車会社として存続し、やはり「身売り」だろう。
ここでも持参金の形で公的資金が必要かも知れないが、名前と雇用だけは
なんとしても守るべきであろう。いずれにせよ困難な仕事になりそうである。

「救済」するか?、しないか?という議論は恐らく適切では無い。
「どの様に潰し、どの部分を再建するか?案」を検討し始めれば
少しは糸口が見えてくるかも知れない。
2008年11月25日放医研1ヶ月後定期検診、翌26日がんセンター定期検診
図は照射患部のMRI画像。1枚目は仙骨から腸骨にかけてのスライス断面の変化。
081125d1

2枚目は仙骨から骨盤内に進展した腫瘤の推移。判定は「縮小傾向」
081125d2

肺などの患部と異なり、筋肉が充填した場所であるため変化は判りにくい。
が、良く見ると圧迫されていた筋肉が緩和し正常状態にかなり近づいている。

自覚症状は画像以上に改善されている。照射後痛みは無くなっていたが座ると
違和感はあった。例えば耶馬渓に行った時は「テニスボールの上に座る」感じ。
それが今は「ハンカチ1枚」程度。約10ヶ月ぶりに真っ直ぐ座れる様になった。

CTによると肺、肝臓、腎臓、膵臓等にも異常は無し。
胸水も無し。ただし5月のCTでも見られた心嚢水の貯留が少量認められる。

放医研もがんセンターも「縦隔への放射線の副作用で心配ない」との判断。
で、あるが、私としては心配なのでがんセンターでエコーを撮ることを依頼。
水を抜く事までは考えていないが、現状の心機能は把握しておきたい。

次回抗癌剤について、がんセンター主治医の判断は「今は必要無い」との事。
当初、私としては12月からドセタキセル+ゾメタで、と考えていたが、
自覚症状も良いし「休息」を取ることも必要な気がする。

従って、来年1月末の3ヶ月検診の結果を見て計画する事に判断先送り。

じゃあ「北海道にスキーに行きたい」とも思ったが周囲は全員「反対」。
「せめてゴルフくらい、、」も却下。仕方なく散歩を継続中。
図は2008年10月に骨盤に照射した重粒子の計画線量である。
081125d3

シミュレーションは実際の照射姿勢で行われる。今回は「斜めうつぶせ寝」。
実際の固定具をかぶせ約1時間かかる。(私はいつも30分程度で済むが)

こういう図を見るときに私が気にするポイントは2点、
・最大線量(今回は57.6GyE)に対し90%以上の線量が見込める照射範囲。
 殆どの癌には画像には映らない辺縁部が存在する。
 また呼吸同期を取るとは言え、実照射の際の誤差も必ず生じる。
 それらを合わせ患者としては5mmから10mm程度はマージンは確保したい。

・もう一つは最大線量に対し50%以上の線量が「あたってしまう」体積。
 肺や呼吸器付近に対しては胸水や肺炎などの危険を考えると20Gy以上の
 照射領域をできるだけ少なくしたい。
 今回は骨盤であるので直腸などの消化管がリスクポイント。肺ほど弱く
 無い事が実証されてはいるが「目標は40GyE以下」を目指したい。

例えば「仙骨の中心付近に小さい骨転移がある」程度の患部なら、
体表面に近く、接線入射も可能な為、IMRT(強度変調放射線治療)でも結構
集中させられる。通常、学会発表されるのはそういう「良い患者」の例。

私の様な「最悪の患者」の場合、粒子線の「局所性」が必須だと考える。
後はこの分布をいかに「計画通り」に照射するかの勝負。

殆どは病院側の技量に依存する事になる。患者にできる事と言えば、
・照射台に乗ったら、できるだけ再現性良く呼吸し、力を抜くこと。
・計画から治療終了までの約1ヶ月間、なるべく体型を変えないこと。
ぐらいだと思う。(毎回照射前に補正は行うが、、)
チャンネルを廻していたらランス・アームストロングの再現ドラマをやっていた。
殆ど見逃したが偶然、最後の5分間くらいを見れた。

私が癌患者になった翌日に初めて買った癌関連の本が彼の
「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」である。

私は、ほぼ癌だと分かった2時間後には論文検索を始めていた。その際、個人の
「闘病記」や「治療法」に関する書籍やホームページは殆ど目に留まらなかった。
しかし何故だかこの本は必要と感じ、わざわざAmazonに新規登録までし発注した。

10年前の話なのでやや治療法が古いのが難点だが、癌患者にとっての重要性は
2008年現在になっても全く劣化していない。

仮に癌患者に1冊だけ本を贈るとすれば私はこれを選ぶ。

勿論、精巣癌の場合ステージIVだとしても寬解することは珍しくない。
しかし「ここまで治る」例は稀有だと思う。

もしも彼が肺癌や膵臓癌の末期だったとしても病気に向き合う姿勢は同じで
あったろうと想像する。(抗癌剤中のトレーニングはお勧めできないが、、)

繰り返しになるが、今回骨転移の発見が2ヶ月遅れたのは私にとって致命的な
意味を持つ。今は既に詰んでいる「負け将棋」を1手ずつ進めている状態。

しかしながら、癌の側が「指し間違える」のを期待もしている。
その時はランス・アームストロングほど上手く書けないかもしれないが、
是非私も「癌患者に推奨できる」本を書きたいと考えている。
照射野が大きいからだと思うが、私の場合はちょっと「きつい」。

・原発に対しては:約100mm×150mm×深さ方向に70mm程度の体積
・肺転移には  :直径約50mm×深さ方向に50mm程度
・今回     :約100mm×120mm×深さ方向に70mm程度

2度目の肺転移照射は全くの「無感覚」だったが、初回と今回はほぼ同レベル。

やはり1日目の照射で「ドスンッ!」という感じの熱パルス?を感じた。
(勿論、痛いとか熱いとかのレベルでは無く微かなモノだが、、)

さらに初日、2日目の照射数時間後には「焼ける様な痛み」。
これらは私だけの特徴らしく、他の患者でこういう例は殆ど無い。
2~3時間苦しむがこれを過ぎると非常に楽になる。

3日目以降は「無感覚」が続く。照射と言っても患者はただ寝てるだけ。

ただ、ゴルフに行って日焼けした時の様な「倦怠感」は照射終了まで続く。
骨盤など、患部が大きい場合こういう怠さを感じる人も居る。

他に良く聞くのは頭頸部の患者さんの「痛み」。照射回数が5~6回目に
なるとアゴや鼻、耳付近がヒリヒリする場合もあるとの事。
通常は「良く効いているサイン」らしく、患者にとって悪い話ではないが、、。

癌の痛みは照射1回目から激減。1週間程度かけオキシコンチンの減薬
を進め、7回目以降は不要になる。ただ放射線による炎症があるような
感じだったので一応ロキソニンは1日に2回程度飲み続ける。

唯一気をつけた事は、1日2L以上水を飲むこと。

・放医研病院の受付ロビー兼待合室。想像よりは病院っぽい感じ。
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・照射の為、重粒子棟に向かう地下廊下。照射最終日には走れる程に回復。
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・病棟5階からの朝の風景。稲毛区役所と散歩コースの穴川中央公園。
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仙骨及び周辺部への照射線量、時期が決定。

・2008年10月1日から21日までの12回照射。
・線量は4.8GyE×12回=57.6GyE
・背中側正面、右、左斜め後ろ側からの3方向照射。

照射患部の大きさは約70mm×50mm×80mm。大きい方だが照射範囲には充分入る。
私が希望した70GyEは却下。理由は、

・呼吸器の癌への最大照射量は縦隔部への12回、54GyE。
 大腸癌の再発骨転移や骨肉腫への照射が16回、70GyEなのは、
 原発の癌細胞が放射線に対して感受性が低い事による。

・一般的に転移巣は原発の癌細胞と同レベルの放射線感受性を持つとされる。
 従って54GyEでも充分と考えられるが、骨転移への実績が不十分な事から、
 1段階高レベルな57.6GyEとする。

 ちなみにこれまでの私の照射実績は
 原発巣:12回、54GyE 9ヶ月間局所制御中。
 肺転移: 4回、53.8GyE 5ヶ月間局所制御中。
 と一応、良好な経過を辿っている。

・直腸までの距離が狭い所では5mm以内。それなりにリスクも心配。

一般的に(同線量なら)照射回数は少ない方が効果は高いと考えられている。
16回、70GyEと比較して12回、57.6GyEは決して「弱い」値では無い。
そもそもリニアックのX線を30Gy照射する事に比べれば格段の違いがある。

ちなみに等価線量率GyEとはリニアックでの放射線量Gyに対し、「3倍」の
生物学的効果を乗じたモノ。つまり、物理的なエネルギー量に換算すると

1[GyE]=0.33[J/kg]しかなく、X線の場合の1[Gy]=1[J/kg]に比べると1/3。

これ程「少なくても効く」理由は重粒子線の持つ直接効果などが考えられ、
「3倍」が本当に適切かどうかは細胞レベルの照射実験などを含め現在も
議論が続いているところである。

私の経験と理解、及びこの1年半に見てきた他患者の「実際の経過」から
非常に大雑把な推定をすると、もしかすると臨床的には「3~5倍」が
適切?ではないかと期待している。

今考えると、8回、54GyEを依頼すべきだったかな?とも思うが、
初期的なアプローチとしては適当なモノかも知れない。

肺癌の単発骨転移に重粒子線治療を考えてる方に御参考頂ければ幸いである。