前回記事は抽象的過ぎるので、評価法の1例を挙げる。
詳細は「癌データベース」の中で別途議論する。このテーマは本ブログの目的地の1つである。

患者が治療法を選ぶとき、必要な情報は「その治療法がどのくらい効くのか?」であり、
「単位時間における腫瘍の画像上の体積変化σV/σtを最大径Rのべき乗で規格化したもの」である。
平たく言えば「癌が小さくなったか?大きくなったか?」であるが、少なくとも以下の様な補正
が必要と考える。実験やサンプル調査の根本は「いかに条件を揃えるか?」にある。

・腫瘍サイズ:以前私は腫瘍サイズの変化をまとめる際、癌流出量を「表面積に比例」と仮定した。
       (抗癌剤治療(腫瘍縮小)の記事参照)しかし実際には隠れたパラメータがある。
       腫瘍径のピッタリ2.0乗では無く、1.8乗だったり、2.2乗だったりする。

・腫瘍部位 :肺、骨、肝臓、脳、、。患部により「流出係数」は異なるはずである。
       直感的には血管の配置から類推すると肺、脳、肝臓などは2乗から2.5乗の範囲?
       骨などは1.5乗から2乗の範囲かな?などと想像している。
       しかし相対比較では部位ごとに分類すれば良いので、最初は仮定しても良い。

・位置効果 :厄介なのは同じ「肺」と言っても末梢部や肺門近く、胸膜近く、など場所により、
       条件が異なる事である。この「位置依存性」についても係数を設ける必要がある。
       これは評価に個人差が入りやすい上、係数も0.5~1.0程度ぐらいのバラツキが
       あると思う。難しいパラメータだと思える。

・水分、酸素量:放射線でも抗癌剤でもこのファクターは大きい。最終的には細胞組織と血漿成分、
       及び末梢血管の径やコレステロール値なども関係してくるはずであるが、最初は
       分化と癌腫の分類、年齢、ぐらいで規格するのが適当だろう。

・その他  :採血から電解質の値、pH、など。酸素飽和度、職歴、肥満度、など。気になる
       パラメータは多い。どの程度をデータベース化すべきか、が最も重要な課題である。

様々な要因を規格化する事で、個々の患者におけるデータはやっと比較の対象になりうる。
これを治療中、治療後の定期検診で把握してゆき、多数の症例を重ねることで、各治療法の
「効き具合」を公平に評価することが可能になる。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-db090109

治療期間や定期検診の間隔、並びに観測期間を決め、体積変化の径時変化を調べることで
各治療法の「制御期間」や「貢献した度合い」も判断できる。前回記事に例示した生データと、
上図の様な治療効果の推定ぐらいは本来ネットで検索できて当然である。

繰り返しになるが、ただでさえ高齢者に偏りがちな癌治療の効果を現す尺度として
「○年生存率」や「×年制御率」を用いるのは(例え正直なモノであっても)的はずれである。

データベース化の目的は癌治療において「何が重要か?」を新たに発見する事にある。
通常の科学では、判らない問題にぶつかった時、先ず最初に取られるべき手法である。

癌治療において個人差は誰もが認める現象だが、「個人の何が差を生み出すのか?」
を追求することが癌研究の根本であるし、活路もまたそこにあると確信する。

データベースの設計にはセンスが必要だが、技術的・コスト的な問題は殆ど無い。
最近流行の言葉で言えば、まさに医療従事者と医療行政の「矜持」の問題である。
放射線治療の奏効率は手術や抗癌剤のそれとは質的に異なる。

そもそも治療効果の一般的な評価法として「生存率」や「制御率」が用いられるが、
率直に言ってこの指標がどういう意義を持つのか私には全く判らない。

「当科のI/II期の肺癌(腺癌及び扁平上皮癌45症例)の5年生存率は70%、I期に限れば85%」
などである。誤解を恐れずに言えば、科学や情報がこれだけ発達した現代社会において、
・どうしてこれ程までに役に立たない指標を使い続けるのか?
・その程度の評価能力しかない業界が何故存続し続けられるのか?、が判らないのである。

コンビニやファミレスですら、商品1つ1つについての消費動向を常にチェックしている。
「閉店舗数」や「閉店率」だけに注目して経営判断することなどまずあり得ない。

大昔は、「手術の成功or失敗」だけが議論の対象になる時代もあった。
効く抗ガン剤など1つも無く、放射線はやれたとしても2次元照射がせいぜい、、。
確かにそういう時代には「5年生存率」も1つの指標にはなっていたかも知れない。

しかしながら、少なくとも現在では大多数の癌患者は下図の様な経過を辿る。
データは私の創作だが1つの典型例で、悪夢の様なダメダメ病院ぶりである。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-eval090109

T2N0M0もしくはT2N1M0というところで見つかり「有名大学病院の呼吸器外科」で手術。
病院側の立場に立つと本症例はどのようにも評価できる。しかも最終的には、
「ご自宅近くの医院」を紹介しており「追跡出来なかった」と除外すら可能である。

本来、全癌患者の診断・診療過程は第3者の公的機関でデータベース化すべきである。

詳細は別途議論する予定であるが、添付図の様なデータが検索できれば施設や治療法の
「実力」は一目瞭然である。「術野近くの再発、もしくは転移」も闇に葬られずに済む。
「中古車検索」で簡単にやれる事が30兆円産業の医療業界で出来ない理由は無い。

とりわけ、放射線治療の効果は前後の治療の流れの中で個々に判断せざるを得ない。

なぜならば「体調が悪い」からと言って放射線科を受診することはまずあり得ず、
グロスの実力は最初に例示した「手術不能もしくは拒否したI/II期症例」などから
外挿する以外に無いからである。お叱りや御批判を覚悟であえて言い変えるならば、

再発や転移を抱えた癌患者は「そもそも制御出来て当たり前の」症例結果の中から、
最適な放射線手法や施設を選ばねばならない状況にある。
リニアックによるフォトン(X線)照射は症例も多く理解が進んでいる。
下図は放射線治療計画ガイドライン・2004に添付された部位別耐容線量で、
1991年にまとめられたNCIの調査タスクフォースの集計結果である。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-tole090106

参考値とはいえ、この表を作成する為のコストと患者の協力、の総和を考えると
粗末には扱えない。だが、しかしこの表の解釈には注意が必要である。

「耐容」の位置付けは個々の治療や患者の状態によって、かなり異なるし、
晩発リスクの評価もその後の治療の蓄積により少しずつ変化して来ている。
特に食道など消化器系の耐容線量は最近ではもっと低めに考えられていると思う。

あくまでも「ここまではOK」という意味ではなく「これ以上は危ない」という捉え方を
すべきであるし、恐らく殆どの症例でこの表の水準以下の線量を照射していると思う。

もしも有害事象が心配ないなら照射量はさらに増加できる。
「90GyE以上の放射線にさらされると(癌を含む)全ての細胞は再生できない」
という、1つの「信仰」もある。が、高線量照射のコンセンサスは未だ得られていない。

90GyEを目指した治験は既に行われており、2009年はある程度症例数のまとまった報告
も出てくると期待はしている。が、個人的には結果は芳しくないだろう、と想像する。

多分、「癌は確かに制御出来ました。けれど適応できる症例は限られると思います」
といった結論になるのではないだろうか?
日本放射線腫瘍学会(JASTRO)が2005年にまとめた放射線治療に関する定期構造調査から、
下図に国内の放射線治療受診患者、放射線腫瘍医、施設数、などを抜粋する。
転移性肺癌の1寛解例に関する研究、のブログ-jastro2007

放射線治療を受けた年間患者数:約19万8千人(肺癌、乳がん原発がそれぞれ約20%ずつ)
施設数           :推定735施設(医療法人、個人病院は104施設)
放射線腫瘍医        :実質774人(JASTRO認定医426人)、とのこと。

・1人の放射線腫瘍医が診る患者数は年間平均253人
・1施設あたりの放射線腫瘍医は平均ギリギリ1人程度しかいない。
など、国内の放射線科医の現状が「お寒い」状態にある事は明らかである。

ちなみに粒子線治療はこの統計に含まれていない。
学会内での「扱い」がどのようなものか推し量れる様な気がする。

勿論「定期調査」であるので「連続性の観点から統計から除外した」と言い訳
も聞こえてきそうだが、例えば抗癌剤の教科書で「イレッサ」を除外して議論
している本は無いハズである。

国内で粒子線治療を受けた患者数は
兵庫県立粒子線医療センター :陽子線465人、炭素線125人(2007年実績)
放医研病院         :炭素線641人(2007年実績)
国立がんセンター東病院   :陽子線503人(1999~2007年合計)
静岡県立がんセンター    :陽子線570人(2003~2007年合計)
筑波大学病院        :陽子線1172人(2001~2007年合計)
若狭湾エネルギー研究センター:陽子線49人(2002~2007年合計)

(若狭湾はまあしょうがないとしても、、)数え方が違うのかも?知れないが、
患者数の比較からは国立がんセンター東病院の貢献が著しく低いと言える。

国立がんセンターについては、その位置づけ自体について議論が継続中ではある。
すなわち「臨床センターとすべきか研究センターとすべきか」論争である。
が、その議論は別途行うにしても「少なすぎる」と私には思える。

奏効率を気にするあまり、適応患者を絞りすぎていないか?
がんセンター中央病院での周知・広報は充分か?
治療効率を下げている理由は何か?
「ナショナルセンター」としての自負があるならば、率直に現状を見直し、
正当な理由の開示、もしくは改善をすべきである。

また、建設中の粒子線施設として、
南東北がん陽子線治療センター:陽子線 年間450人以上を目標 2008年より開始
群馬大医学部        :炭素線 2009年より稼働予定
福井県立病院        :陽子線 2010年より稼働予定
指宿メディポリス医学研究財団:陽子線 2011年より稼働予定
などが診療を開始する予定である。

「年間20万人」の需要は夢の様な特効薬でも開発されない限り今後20年間は続く。
それが倍増することはあっても、減少する事は無いと考える。
以下は重粒子の会に宛てて、私から寄せたコメントの写し。
日頃の病院での私の様子も少し書いています。
長文な為、読むのを推奨は出来ませんが、、、。

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HICさん

先ず念のため弁解しておきますが、私は病院で他患者の治療内容や経過についてあれこれ「こちらから」口を挟んだ事は1度も有りません。私の理解では癌は複雑な病気で、ちょっとした治療方針の違いや考え方の相違で経過に大きな不利益を及ぼす事も珍しくありません。本やネットでちょっと調べた程度の情報や商品を他患者に気楽に推奨するような恐ろしい事はとても出来ないからです。

日頃から出来るだけ他患者とコミュニケーションすることを避け、話さないようにはしているのですが、どうしても治療について相談されることがしばしばあります。そういう場合は「患者同士の世間話」と重々断った上で必要最小限度のアドバイスはすることもあります。

そうして知り得た他患者さんの採血や画像データ、インフォームドコンセントの説明書のコピー、などによりますと、HICさんのご質問にありますような、「説明不足」の例は1例も知りません。

巷のクリニックなどでは独りよがりで能力の低い医師による、いいかげんな治療や診断、説明がなされていると耳には入りますが、抗癌剤などと異なり、放射線治療を行える程度の施設であれば、必要最低限の設備と体制はあると考えています。

少なくとも私の通っている国立がんセンターと放医研では、放射線照射はおろか造影剤CTやMRI、輸血、ですら、文書及び口頭での説明と同意書の作成を行い、それなしに一切の診療行為は行われません。それらの説明文は1患者の私から見ても必要充分な内容になっていると考えます。

もしも放医研でHICさんの仰るような事例が本当に発生したのであれば、たとえ1例であっても非常に重大な問題と考えます。インフォームドコンセントにおいて文書を交わす法的根拠はありませんが、放医研なら恐らく間違い無く、その患者さんも文書「でも」説明された書類を渡されているはずですので、早急に確認し、有害事象の説明が抜けている旨、病院に抗議すべきと思います。

ただ、残念ながらここまでのHICさんの記述からは私が問題だと思う「医師の説明不足」が本当にあったのかどうか確認出来ません。判った事は、
・肺臓炎で苦しんでいる患者の声がある。
・その患者さん(達?)は副作用の説明をされていないと言っている?。
の2点が繰り返し述べられているだけです。
(残念な事なのですが、これに類する状況はそれほど珍しい事ではありません。)

長々と主張しましたが、HICさんが仰る様な「説明不足」が起こるのは国内の医療状況を考えると(放射線治療に限って言えば)かなり稀な事だと言えます。

一方で、私の経験では「医師の説明不足」よりも「患者の理解不足&軽率な同意」の方が問題の原因になっている場合が遙かに多く見受けられます。

例えば放射線治療における有害事象についてもネットや書籍で一般向けの懇切丁寧な説明がいたるところに明記されております。勿論どこでも誰でもアクセスできます。それが入手・理解できない患者さんには医師が個別に繰り返し説明しています。

「患者会」の存在意義の一つは、具体的に、どの様に問題(この件の場合は説明不足)が起こったのか?責任は誰にあったのか?を事実関係を元に明らかにし、どうすれば再発防止が可能なのか?などを具体的に提案する事にあると思います。

全くの私的な患者ブログならば私もスルーするだけですが、仮にも放医研の掲示板に募集を掲示し、売店に申込書を置いている「会」ということになりますと無視する訳にもいきません。

私はHICさんの主催する会に入るつもりは有りませんが、一般論として、かつ、重粒子治療を経験した1患者として申し上げます。
・事実の確認を怠り、あるいは根拠を示さず、患者側からだけの一方的で整合性の乏しい愚痴や不満を増幅するのは問題があります。
・「誤った患者の声」はいくら多数を集めてみても「正しく」はなりません。

貴ブログの様な姿勢と考え方で会を運営、意見を流布し続け、それを「患者の立場」と称するのは説得力が無いばかりか、他の癌患者にとってデメリットの方が大きいと言わざるを得ません。
study2007 2009-01-03 22:51:57
今後数回にわたり、放射線治療について私の理解をまとめてゆく。
それに先立ち、放射線被曝による国内の死亡例を紹介したい。

放射線被曝は全身被爆の場合、1GyEを越えると死亡の危険が生じる。
8GyE以上の全身被爆ではほぼ100%が死に至る、とされている。
1999年の東海村JCOの臨界事故では10~20GyEの全身被爆により2名の作業員が死亡した。

死因は「多臓器不全」とされ、放医研病院や東大病院での治療も功を奏さなかった。
結局、全身の主要器官の細胞死を食い止める事は出来なかった。

それに対し放射線治療では局所とは言え1度に10GyE程度の照射を行うこともある。
(重粒子線による肺癌治療やリニアックのフォトンによる骨転移の疼痛緩和など)
通算線量は30~70GyEに達する。

手術や抗癌剤もそうだが、放射線治療も極めて危険な手法である事に違いは無い。
他の癌治療同様、医師も患者もリスクと利益を慎重に検討すべきであるし、
インフォームドコンセント(IC)による説明と合意が不可欠である。


ーーー本論とは少しそれるが、ある患者会に寄せた私の「コメント」を次回記事に
   紹介する。「放射線治療のIC」等に関する私の見方を示したものである。ーーー

重粒子線治療を経験した患者さんを中心とした会で「重粒子の会」(旧 HIMAC友の会)
が運営されている。私はその会員ではないし、今後も加入するつもりはないが、
最近「インフォームドコンセントが不十分だった」と受け取れる記述があった。

放医研のシステムや昨今の状況を鑑みると、通常考えにくい事ではあるが、
もしも訴えが本当だとすると、患者は計り知れない不利益を被ったことになる。
時々報道される「輸血の血液型ミス」や「過剰線量照射」と並ぶレベルと思える。

「コメント」中では患者側に向かって厳しい立場を取っている。なぜならば、
癌治療において医療側が提示・提案できるのはあくまでも「情報」でしかない。
全ての「判断」は患者側が行わねばならない、からである。
study2008に改名するか迷っているうちに2009年を迎えてしまった。
今更呼び名を変えるのも面倒なので、今後も「study2007」で行くことにしたい。

年末年始の体調は良かった。
・個人的に転移を疑っているポイントもむしろ改善?傾向にある。
 (右手首の骨、左肩甲骨、左鎖骨もしくは周辺のリンパ、左仙骨など、、)
・体重は1kg増。
 (71.7kg→72.8kg。標準体重は65kgだが抗癌剤に備え日頃は70kg以上を維持)
・安静時脈拍数低下。
 (安静時110回/分→75回/分。年明け後、だいぶ楽になった)
・痛み:どこにも無し。ただし右臀部の痺れはまだ残留。

イスに座れる時間は車運転時で最長約2時間。(昨年11月頃は1時間程度)
ただしゴルフはまだ自粛中。

大晦日と元旦に近所のコースを予約した。が、もしも骨盤骨折したら入院確実。
しかも病院は正月休みで結局放置?、、、。などと想像すると、やはり断念。


ブログは書きかけのテーマが山積みの為、継続する。目的は当初の通り、
・癌患者とその関係者の役に立つこと。
・自分の治療に役立てること。であるが、
今年は癌及び癌治療以外の話題にも触れてゆきたい。

病院や医療、医療制度に関する問題点も取り上げることになると思う。
「医療問題」というと一般的には医療者や病院側の不備が指摘される事が多いが、
患者側に問題があるケースも少なくないと私は思っている。

癌患者は病気そのものが「気の毒」な為、被害者として取り上げられがちである。
家族や関係者は(ネットも含め)そういった「哀れな」対象に遠慮する傾向がある。
「既得権益」でも得たかの様にワガママを助長させる患者も珍しくない。

が、そういった「特別扱い」は結局は患者の利益を損ねると考えるし、
本質的には、先行き短い患者を「邪魔者扱い」している事に他ならない。

幸い?私の病状は癌患者の中でも最も「哀れ」で「気の毒」なグループに入る。
(元々の性格もあるが)いまにも死にそうな癌患者に向かっても遠慮無く意見を
述べる事ができる。今年も可能な限り「公平で」、「定量的な」記述に努めたい。
2008年は1月、2月は快適に過ごせたものの、3月くらいから骨転移が
増悪し、その原因究明と対策に殆どの体力と気力を費やしてしまった。

残しておきたかったシスプラチンも「時間かせぎ」の為だけにドブに捨てる様に
使い切ってしまった。そのムダさ加減は殆ど麻生内閣の景気対策にも匹敵する。

しかし2009年を乗り切るのは今年の10倍は難しいと予想している。
来年あたり「全身転移」という時期が来ても良い頃である。
(この辺りも来年の世相とフェイズが合っているような気がする)

癌治療も景気対策と同様、質+量に加え「時期」が効果に大きく作用する。
私の治療経過とそれぞれの局面での選択、その結果などを来年も出来る限り
ブログ上で整理してゆきたい。

それに加え、来年はできるだけ癌以外の話題にも触れてゆきたいと思う。

本ブログは「堅い話ばかりで面白みが無い」と自負しているが、
最近、私に負けず劣らず「カタイお話」をごり押ししているブログが
feynmanさんのブログで紹介されている事を知った。

今年7月に大腸癌の為亡くなられた、
戸塚洋二 前高エネルギー加速器研究機構(KEK)機構長のブログである。

ほんの一部をかいつまんで読んだだけであるが、癌の話題のみならず、
論ずる説の豊富さ、高精度な議論の進め方、公平性、勇気、、、等々、
故人の研究者としての有能さと人物としての厳格さが随所に滲み出ている。

私のレベルでは、この域に達するにはどんなに努力しても、あと20年はかかる。
なんとか戸塚先生の「足元」ぐらいには及ぶ事が出来るよう、長期生存を続け、
研鑽を積み重ねようと考えている。
寛解への切り札として個人的に考え続けている案がある。同種移植を応用し、
一歩進めたアイデアで移植2回法というものがある。これを更にもう一歩進める。

先ず「移植2回法」とは、
主に?小児白血病や小児固形癌に対して「ごり押し」で寛解を狙うモノで、
1回目は自家移植、ダメな場合、2回目に同種移植、という具合である。

骨髄移植は白血病の世界で発展してきた技術であるが、近年イマチニブが
導入され、白血病では移植無しで治癒する例も出るようになってきた。

私はこれを「もうひと捻り」し、是非自分に対し実験したいと考えている。

手順は、
1.同種移植を行いGVHDによる抗腫瘍効果で癌を叩く。
  現状では固形癌の場合、寛解に至ることは困難とされている。

2.その後、数ヶ月程度の間隔をおき、予め保管しておいた
  「自己の幹細胞」を再移植する。元々の宿主の細胞な為、副作用は少ないはず。

白血病の場合、宿主の造血細胞が癌化している為、こういう「復旧」は出来ない。
固形癌の場合も血液中にいくらかの癌細胞は浮遊している恐れはあるが、選別し
取り除く処理(パージング)を行えばリスクは下げられる。

この
「同種移植」→「自家移植による復旧」を数コース繰り返す事で、
固形癌についても寛解導入が図れないだろうか?

しかも最終的に「自家移植」で終了すれば慢性的な副作用に悩まされる
リスクも少なくなると期待できる。

勿論それぞれの「移植」にリスクが伴う。体力がどこまで保つのかも想像出来ない。
しかし、近年ミニ移植や免疫抑制剤を利用した移植技術なども発展してきている。

いろいろ検索してみても、実施例はおろかアイデアとしても出てこない。
仮に世界初の例だとしてもなんとか実現できないかと検討中である。
一番のネックは、協力してくれる医師を見つけるのが難しい事。

成功した場合はScienceでもNatureでも余裕で載るはずである。し、
「風のガーデン」より面白い、「治るドラマ」の題材になると思うのだが、、。
免疫療法で固形癌に効果が期待できるとすれば「同種移植」との事。
私の「治療計画」でも一応、最後の手段として位置づけている。

前処理に大量抗癌剤や全身放射線を施すのは自家移植と同じであるが、
他者(ドナー)から幹細胞をもらい、移植する。

移植片と宿主との間で起こる「拒絶反応」を利用するアイデアで、
この効果は正常組織よりも癌組織に強く現れるという説もある。
しかも化学物質である薬剤とは違い、脳転移にも効果が期待される。

上手くいけば、まさに「究極の癌治療法」である。
しかしながら移植にはつきものの移植片対宿主病GVHDがほぼ確実に起こる。

通常、骨髄移植はHLAと呼ばれる白血球の型(6座あるとの事)が全て一致
するか、せいぜい1座違いの場合に行われる。この確率は兄弟で約30%
とされ、できるだけ適合したドナーから移植を行う。

一方、固形癌にぶつける場合は、適度に「外れた」ドナーの方が抗腫瘍効果
は高い。しかしあまり外れ過ぎるとGVHDが強まるだけでなく移植の正着その
ものが上手くいかない事もあるようである。

現状ではとても他人に勧められるモノではないし、私自身なかなか手を出す
気分にはなれない。

理由は、
・固形癌に対する効果は(抗癌剤と比べても)それ程強力でないこと、と
・移植後に癌治療を継続する場合、そんな体力が残されるか不安。な為。

同種移植は現状「治験」で行われており、それなりに適格条項がある。
難治癌や、患者に体力が有ること、少しは抗癌剤に反応がある事、など。
あくまでも「実験する側」の条件である。

「完治を目指す患者」としては、もう一つ重要な条件がある様に思う。
それは「腫瘍径が最大でも1~2cm以下であること」。

私の全くのフィーリングであるが、薬物や自然縮退で3cm以上の塊を削る
のは通常かなり難しい。患部の数は多くても構わない。脳にあっても良いかも
知れない。しかし同種移植に踏み切る場合、1カ所辺りの癌細胞数は極力減らす
べきだと思っている。

本来なら2009年1月か2月が私には最後のチャンスなのかも知れない。