仙骨及び周辺部への照射線量、時期が決定。

・2008年10月1日から21日までの12回照射。
・線量は4.8GyE×12回=57.6GyE
・背中側正面、右、左斜め後ろ側からの3方向照射。

照射患部の大きさは約70mm×50mm×80mm。大きい方だが照射範囲には充分入る。
私が希望した70GyEは却下。理由は、

・呼吸器の癌への最大照射量は縦隔部への12回、54GyE。
 大腸癌の再発骨転移や骨肉腫への照射が16回、70GyEなのは、
 原発の癌細胞が放射線に対して感受性が低い事による。

・一般的に転移巣は原発の癌細胞と同レベルの放射線感受性を持つとされる。
 従って54GyEでも充分と考えられるが、骨転移への実績が不十分な事から、
 1段階高レベルな57.6GyEとする。

 ちなみにこれまでの私の照射実績は
 原発巣:12回、54GyE 9ヶ月間局所制御中。
 肺転移: 4回、53.8GyE 5ヶ月間局所制御中。
 と一応、良好な経過を辿っている。

・直腸までの距離が狭い所では5mm以内。それなりにリスクも心配。

一般的に(同線量なら)照射回数は少ない方が効果は高いと考えられている。
16回、70GyEと比較して12回、57.6GyEは決して「弱い」値では無い。
そもそもリニアックのX線を30Gy照射する事に比べれば格段の違いがある。

ちなみに等価線量率GyEとはリニアックでの放射線量Gyに対し、「3倍」の
生物学的効果を乗じたモノ。つまり、物理的なエネルギー量に換算すると

1[GyE]=0.33[J/kg]しかなく、X線の場合の1[Gy]=1[J/kg]に比べると1/3。

これ程「少なくても効く」理由は重粒子線の持つ直接効果などが考えられ、
「3倍」が本当に適切かどうかは細胞レベルの照射実験などを含め現在も
議論が続いているところである。

私の経験と理解、及びこの1年半に見てきた他患者の「実際の経過」から
非常に大雑把な推定をすると、もしかすると臨床的には「3~5倍」が
適切?ではないかと期待している。

今考えると、8回、54GyEを依頼すべきだったかな?とも思うが、
初期的なアプローチとしては適当なモノかも知れない。

肺癌の単発骨転移に重粒子線治療を考えてる方に御参考頂ければ幸いである。