今世紀に入って情報環境が変わり、従来の学習文法は見直しが進んでいます。使役構文と言われてきた文法事項も、その俎上に上がっています。

 使役haveの見直しをした論文から引用します。

 

 「have は依頼を表し『〜してもらう』の意味を持つ」( LovEng English Course I,2006)のような説明が与えられているが、必ずしも納得のいく説明にはなっていない。ある時は使役、またあるときは受身というように全く異なる概念を当てているという統一感に欠ける説明になってしまっている。

 学校文法に限らず、英語学者の間、 OEDをはじめ、ほぼすべての英語辞書は have にcausative(使役)の意味を認め、先行研究では使役の意味を前提にしている。しかしながら、従来の説明では、学習者にとって理解しやすいとは言えない状況であり、have を使役動詞として扱うことが本当に正しい意味を表しているのかどうかを根本から見直す必要がある。

 本研究では have 構文の具体例として映画のスクリプトからの事例を使い、それらを詳細に検証することによって、英語のネイティブスピーカーが実際どのような意味でこの構文を使っているのかを明らかにし、従来の「使役」に替わる、より適切な概念を提示することを目的とする。」

           林 信行『“Have 構文”における使役性について』2006

 

 学校文法、文法書、辞書は、20世紀のころは規範文法を基本としていました。規範は規則によって言葉使いを標準化するものです。旧来の文法記述は、先行研究と称して先例の範囲を超えないような用例をもとにしていたわけです。

 今世紀に入り、情報環境が大きく変化し、英語のネイティブスピーカーが実際に使っている用法が、旧来の文法説明とは違う実態が明らかになってきています。その流れを受けて、英米では保守的な文法書や辞書も使用実態を容認し始めています。専門に研究する人にとっての常識と日本の学校文法との乖離が進んでいます。

 

 単数のtheyや状態動詞進行形や主語が特定された語のthere構文などは、数百年前から今日まで普通に使われをふつうに使います。これらは、単文を見ただけで誰でも簡単にわかります。(詳しくは、過去記事のリンクから)

 

【単数のthey】

「日本では、中学生や高校生向けの文部科学省(MEXT)承認の教科書ではtheyを厳密に複数形の代名詞としてラベル付けしており、大学や会話学校で人気のある会話や批判的思考に関する書籍でもST(Singular They)はほとんど取り入れられていない。」(Cynthia 2022)

 

 A magician never gives away their secrets.

                    ――Ben and Holly's Little Kingdom

 (マジシャンは決して秘密を洩らさないものなんだ)

 

theyは「彼ら」とは全く別の語―theyは三人称複数を指す語?ー | しんじさんの【英文法を科学する】脱ラテン化した本来の英文法はシンプルで美しい! (ameblo.jp)

 

【状態動詞進行形】

「英語学習の初期段階で、進行形には使えないと習う状態動詞feel、want、love、like等が進行形に用いられることは、実際には特に稀ではない。進行形になることはないと言われてきたbelong、possess、own、know等も、近現代自然な英語では進行形に使われているが、決して誤りなどではなく意味があって使われており、驚くことでもないのである。」樋口2017

 

 Never thought I'd be seeing it this close.

                        ――The Berenstain Bears

 (こんなに近くで見ていられるなんて思ってもみなかった)

 

状態動詞進行形の現状③感情動詞I’m loving他 | しんじさんの【英文法を科学する】脱ラテン化した本来の英文法はシンプルで美しい! (ameblo.jp)

 

【主語が特定された語のthere構文】

「There構文は聞き手にとって新情報を担う要素を導入するという機能を持っているので、There'sに後続する名詞は不定冠詞が使われます。しかし、新情報を担う要素であれば、不定冠詞ではなく、定冠詞が使われます」(小間坂2013)

 

 Look! There's the Yellow Brick Road.

                    ――The Wonderful Wizard of Oz

  (見て。黄色いレンガの道があるよ)

 

There構文は定冠詞the、固有名詞とも共起する―リスト文など― | しんじさんの【英文法を科学する】脱ラテン化した本来の英文法はシンプルで美しい! (ameblo.jp)

 

 ここに挙げたのは以前の記事で紹介した子供向けアニメの用例で頻繁に出てきます。単数を受けるthey、状態動詞の進行形、特定主語のthere構文などはふつうに使うのは、専門家はもちろん、データベースやネット上から情報を取る人にとっては常識です。これらは単文の見かけで分かります。

 

 ところが、抽象性が高い文法説明や、生きて使われる文脈の中で検証しないと分からない用法の見直しは容易ではないです。

 

【be going toをその場で決めたときに使う】

 文法書には、willは「その場の決意したこと」を表し「be going toは「前もって決めたこと」を表すとします。しかし、実際にはbe going toは「その場の決意したこと」を表すときにも使います。

Peppa  “I did it. I did it.”

Daddy  “Well done, Peppa.”

Mummy “Yes, you did brilliantly.

Peppa  “I’m going to do it again.” 

                 ――Peppa Pig | Skateboarding

ペッパ 「できた。わたしできたよ。」

パパ「よくやったね、ペッパ。」

ママ「ほんと、やったね、すばらしい。」

ペッパ「わたし、もう1度やる。」

 

will とbe going toーコーパスで拾えない文脈は生きて使われる実例で探るー | しんじさんの【英文法を科学する】脱ラテン化した本来の英文法はシンプルで美しい! (ameblo.jp)

 

 このような用法は、単文だけでの見かけではわかりません。前から決めていたわけではないということが明白であることが分かるのは話の流れの中です。こういった用例をいくつも見つける作業をして、はじめて従来の説明が実態に合っていないと言えるわけです。 

                

 今回取り上げるhaveとgetの違いも単文だけでは判別できません。前後の文脈を含めてみていく必要があります。シナリオのある映像作品の中から対象になる文法事項を見つけて、前後関係など文脈をくみ取って分析するのは容易なことではありません。例えば、辞書に載っていない用例を見つけても、それを使っているのは英語に堪能ではない人という設定での発話である場合もあります。   

 上に挙げた(林2006)「具体例として映画のスクリプトからの事例」を使い丹念に分析しています。また、(石川2015)では、コーパスデータから382用例を抽出して、使役haveの用法を分析しています。自分で採取した用例をもとにした論文は、どこにでもあるような用例を解説しているだけといった類のものよりも信頼できます。

 

 これらの論文を中心に使役動詞はhave、getについて検討していきます。

 (石川2015)の分析を紹介します。

  石川 真衣『原形不定詞と共起する迂言的使役動詞 have の意味役割について

       ― 使役行為に対する使役主・被動者の意志性を中心に ―』2015

 

 このデータでは[S(使役主)+have+O(被動者)+V]として、S、Oのnそれぞれを人間、動物、無生物に分類して、haveの用例を分析しています。

 全382例中336例が、[S(人間)+have+O(人間)+V]の型です。同論文では、使役はhaveについて「最も中心的な組み合わせは、「人間の使役主・被動者の下、意志をもって行う動作を被動者に行わせること」である」としています。少数の用例Oが無生物の場合は、そもそもOが何かの行為を行うことはないので、「SがOに何かを行わせた」という使役に該当しません。

 「Sが意思を持ってOに行わせた」といいことを使役とするなら、Oも意思を持った存在であることが前提になります。つまり、文字通りの使役という用法は、[S(人間)+have+O(人間)+V]の型について、見ていくことが前提になります。この点では、使役makeは使役の典型で、Sの意思があり、その過程に具体的にかかわり、結果としてOに行わせたことを含意します。このとき、「強制」という説明がされことからも分かるようにO意思は考慮されません。

 

本題の使役動詞let、make、have、getの違いについて次の4点を検討します。

 (Ⅰ) OにVを行わせるというS自発的意思

 (Ⅱ) Vを行うというOの自発的意思

 (Ⅲ) OがVを行う過程でのSの具体的な関与

 (Ⅳ) Oが結果としてVを行う

 

 この中で使役let、make、have、getで一致しているのは(Ⅳ)で、ふつうは過去形であれば結果として行われたことを含意し、否定すると行われなかったことを含意します。

  make(Ⅰ)意思有り (Ⅱ)意思無し、不問 (Ⅲ)関与有り(強制)

 

  let(Ⅰ)止めないという消極的意思 (Ⅱ)意思有り (Ⅲ)黙認・放任(許可)

 

  get(1)有り (Ⅱ)意思無し、不問 (Ⅲ)関与有り(説得・対価)

 

 もちろん語感は人によるという面はありますが、以上の3語は概ね違いがはっきりしています。これをもとに用例をあたれば問題ないでしょう。

 結局、haveとgetの使い分けの問題は、haveの分かりにくさにあると考えられます。使役haveは(Ⅰ)について、Sは結果として受益者にはなりますが、makeと比較して自発的意思は弱いとされます。(Ⅱ)については、Oの自発性というよりも、雇用関係にあるなどSとの関係に依存します。人を雇ったり、対価を払ったりする場合は、結果としてgetとも重なります。

 そうすると、使役haveとgetの違いは、(Ⅲ)の過程での具体的な関与が焦点になるのではないかと思います。

 

 使役という以前に、内容語としての動詞haveは「持っている」という結果をコアとします。これに対してgetは「手に入れる」という過程と結果を含むコアを持ちます。

 この2語の違いは進行相に変えたときの意味合いの違いに現れます。be havingは「今その状態にある」という持続的な状態を含意し、be gettingは「だんだんその状態になっていく」という変化する過程にあることを含意します。

 完了形have doneは、結果としてそうなった状態を示します。完了という呼び方自体が結果が出ていることを含意します。また、have+O+doneの型は、have以下の補文が結果としての主語の状態を示します。

 

 機能語として意味が広がってはいますが、haveのコアは結果として主語の置かれた状態を表すことが基本です。結果として同じことを述べていても、getは説得や対価の支払いなどの過程を意識した表現となり、haveは過程については不問で結果にだけ焦点を当てる表現ととらえるのは理に適うと思います。

 つまりSの意思に関わらず、またSがその過程に関与するかしないかに関わらず、「OがVをすることになっているという状況があり結果として行われた」ということ文脈にhaveが適するのです。 (Ⅰ)~(Ⅲ)はとくに考慮しないでよく、実際に使役という過程には関与したかというのは不問で、結果としての状態(Ⅳ)だけを表すがhaveの基本というわけです。

 

 映画のスクリプトの分析した(林2006)から用例とその分析を紹介します。

 

1) His friends in high places had me kill it.

                    ――Pay It Forward, 2000

 (1)では、知事の友人(His friends)が新聞記者の話者に圧力をかけて記事を書くのをやめさせたという流れになっているが、諦める決心をしたのはあくまで話者(me)の自発的な行為であり、His friends が直接の原因とは認められないことがわかった。また、His friends は‘me kill it’という行為によってスキャンダルを暴露されずに済んだという、一種の恩恵を受けた関係になっている。

 

2) And you had George lie to us.

                        ――Stuart Little 2, 2002)

 (2)では、主語の you が George に対して「嘘をつかせる」という何ら物理的な行動は行っておらず、また、youと George は同じ場所には居合わせないため George の自発的な行動に任せ

ている。そして you は‘George lie to us’という行動のおかげで自分の目的を果たすことができたというように話者に認識されている。

 

3) You had me worried there for a moment.

                     ――Anne of Green Gables, 1985)

 (3)では、教え子の緊張した姿を見て、気にかけてあげたという教師の思いやりの気持ちを述べており、主語のYou が意図的に話者に心配させたという使役の意味は全くない。

            林 信行『“Have 構文”における使役性について』2006

 

 これらの用例分析では、haveは(Ⅲ)過程には関与しない、もしくは不問であることを裏付けています。(Ⅲ)過程に関与することを含意するgetとの違いが分かります。

 

 もう1つ、別の論文の用例を紹介します。

 

4) On Christmas morning she … had all the men on the place come in to

    get their presents and their Christmas drink. 

                                                                           ――Cather 1940: 220

 「クリスマスの朝、彼女(主人)はプレゼントとクリスマスドリンクを受け取らせ

   るために、屋敷の全ての人間(召使い)を部屋に入らせた。」(石川2015)

 

 この文について、筆者は次のように分析しています。

「使役主・被動者が共に人間であるものは意志動詞と共起し、「使役主が被動者に使役行為をさせる」という使役的意味を保持する文として現れた。」(石川2015)

 

 この(石川2015)の分析ではhaveの使役性を認めています。しかしこの用例は、主人が召使いに命じたものですから、人間関係に依存しています。とくに使役性を想定しないでも毎年クリスマスには「そうすることになっている」と推測できます。実際に命じたかどうかはhaveの使用不使用には関係ないのです。

  この点について、詳細な用例分析を行った(林2006)では、人間関係に依存したhaveの使役性を否定しています。次のように(a)~(c)のように結論していますが、とくに(a)の視点はhaveの用法をつかむためには重要だと思います。

 

a)主語と事態との間に直接の因果関係はない。「誰かに何かをさせる」というような物理的、直接的な行動は意味されておらず、結果的に主語が事態の発生に関与していても、直接の原因である保証はない。使役の解釈は社会的な人間関係などの文脈から推測されたものにすぎない。

 

b) 主語と事態とが相互に関わり合っている。本来の使役であれば、主語から対象へと、事態を発生させるようなエネルギーの伝達があるが、have 構文ではそのような一方向の働きかけというよりも、主語と事態とが相互に絡み合う関係になっている。そして発生した事態が主語にとって何らかの意味を持つものとなっている。

 

c) have 構文の話者の意図は、実際に起こる(起こった)出来事や事実を描写するというよりも、主語と事態とがどう関わっているのかについてのコメントを話者の視点から語る、というところにある。

 

以上のことから、have 構文の意味をより正確に表す統一的な概念として、従来の「使役」や「受身(経験)」に替わって ‘Involvement’(「関わり」)という概念を提唱する。

                                   林 信行『“Have 構文”における使役性について』2006

 

 使役haveは、基本的にSの意思は不問であること、文脈上過程に関わっていたとしても本来的な使役性はないことは、次のような事例によって傍証できます。

 

5) I’ll have someone come repair this immediately. 

                                                ――The Great Gatsby,2013(田畑・山縣2022)

   「 すぐに誰かにこれを直しに来させるよ」

 

6) When I fly, I will have you know that my crew and my plane come 

    first.                                                        ――Top Gun, 1986 (林2006)

    「飛行する際、私は乗組員と飛行機を最優先と考えています」

 

7) My husband, I'll have you know, died happy. 

                                                                           ――COHA(石川2015)

  「私の夫は幸せに死んだのだと、あなたにわからせてやる」

 

  これらの用例ではwillという意思を示す語が共起しています。もしhave自体が意思を示すのならwillは不要です。wantやhopeなど意思のある動詞はwillとは共起しません。have自体に意思や使役性はないので、自らが過程に関与するときはwillで示すと考えれらます。

 

(6),(7)では、SとOの間に雇用主と雇用人などの関係性があって当然そうなるような文脈ではありません。「当然の結果としてそういうことになる」ということを含意して使っているととらえれば、使役というより結果を表すhaveの範囲に入ります。

 このSとOの関係性によらない使役haveの用法は比較的最近多用されるようになった用法のようです。

  

 英語は名詞の格や動詞の語形変化を失った言語です。主語に他動性があることを示すのは能格言語です。英語は有生物、無生物に関わらす主語を区別しない体格言語ですから、意思の有無は単語ではなく文脈依存です。

 The stone moved. He moved the stone.では前者に意思はなく、後者は意思を持ったとします。それはmove自体の特性ではなく、文脈でそう推測できるのです。このときmoveに他動性があるなら前者の説明がつきません。現代英語の動詞は無標であり、その多く能動・他動は文脈次第です。使役haveの使役性が他動性とかかわっていることは容易に想像できるでしょう

 

 使役haveに他動性が無いことは、その受動態を許容しないことからも分かります。

また、本動詞haveは受動態が容認できる例が限定的です。

 

8a) This book can be had for ten dollars.

8b) Breakfast can be had at nine.

8c) A good time was had by all.

8d) I'm afraid you've been had by Tom.

                林 龍次『英語の受動態に関する制約』

 

 canを伴って(8a)「手に入れる」、(8b)「食べる」のように動作の意味を帯びるとき、(8c)はhave a good timeという成句に限り受動態が容認されます。(8d)の「だます」の意味に使うときには、ほぼ唯一普通に受動態が容認されます。

 動詞haveが非常に限られた特殊な用法でしか受動態にできないのでは、基本的に他動性が無いということです。文脈依存といってもmakeのように、ふつうに受動態にできる動詞に比べるとその差が分かります。

 

 以上の検討から使役haveは、実際にはSの自発的意思は希薄で、OにVをさせるような過程に関与するというようなことは考慮されないことが分かります。基本は「そうなるようになっている」ときに適していて、結果的にOがVをするといことを表します。実質的な意味としては「使役」というよりも「関わり」という方が適しています。

 これに対して使役getには、Sの自発的意思があり、説得や対価を払うなどOにVをさせる過程に関与することを含意します。結果は同じでも、そこへ至るまでの経緯に関与していることを含意する点でhaveとは異なるということです。

 

9) Mary did her best to get him to give up smoking, claiming he had promise to do so before they married. ――Caught in the Web of Words

(メアリーは彼に禁煙をやめさせるために最善の努力をしました。結婚前にそれを約束したと主張した)

 

 用例(9)はタバコをやめさせる過程で、労力を使っていることからgetが適しています。

 

10) where I took a furnished room, the most dismal I have ever seen, in the house of Mrs, Ratz. I might have looked farther, but the idea of having my mail come in care of Mrs. Ratz decides me. 

                      ―― j. Steinbeck, Johnny Bear.

(私は家具つきの部屋を借りたが、それは私が今まで見た中で最も陰鬱なところ、ラッツ夫人の家でした。もっと探し続けてもよかったかもしれませんが、郵便物がラッツ夫人気付で届くという理由から決めました。)

                    高野英治『使役の動詞let, make, get, have』

 

 (10)では、Oは無生物ですが、郵便物は配達人が届けるもので、結果として届くことになっています。結果として「そのようになっている」ことなので、haveが適しています。

 

11) Batman: If I get him to you, can you get him to talk

      Harvey: I’ll get him to sing. 

                                      ――The Dark Knight『ダークナイト』  

  バットマン:「もし彼をあなたのところに連れてきたら,彼に話させることは

        できるのか。」 

  ハービー:「彼に白状させるよ。」

 

  「get の構文では相手側に承諾の最終判断を委ねる ことから、行為の遂行には努力が伴うことになる。sing は「(警察に)たれ込む」という俗語表現である」

(田畑、山縣2022)    

 

  このように、実際に使われる用例にあたっていけば、haveが基本的には過程には関与せず、結果を述べていることがわかります。業務などあらかじめ決まっている「するべき人に ... する」というだけです。主語が過程に関与する場合はwillなどを使って表す場合もありますが、この用法は使用が限定的です。

 一方getが意思を持って過程に関与します。主語が自ら労力を使うことを含意します。ここがhaveと決定的に異なる点です。

       

 用例(11)は、映画に出てくる用例を当たった論文からの引用です。同論文の結びには次のような記述があります。

 

「本稿では、それぞれの構文が使用されている実例を映画・TV シリーズのセリフから引用しながら、映像作品における構文の役割 について考察を行った。スクリプトライターが通常の文と異なる、ある種特別な構文を使用するの は、その背後に何かしらの意図があるためだと推測できる。構文ごとの基本的な役割に加え、映像 作品では、いかに視聴者の注意を引きつけるかが 重要となり、各構文は特有の役割をはたすために 自然なかたちで、あるいは視聴者をくぎ付けにするために用いられる。

  使用されている構文に着目することは、当該構文の本質的機能とともに語用論上の発展的なふるまいの探求 につながることになる。映像作品に基づく構文研究は、各構文の実践的な役割を明らかにしてくれる研究手法といえる。」

        田畑圭介、山縣節子『映画における英語の文法構文』2022

 

 言葉は変化するものです。実際の用法は生きて使われる用例から学び、情報更新していくこは必要なことです。今後の学習文法では、実際に使われる表現を取り込んで、より妥当性のある文法説明をしていくことが望まれます。