現代英語では接尾辞-lyのついた語は副詞として使われる語が大半ですが、同じく接尾辞-lyのついた語でも形容詞として使われる語もあります。接尾辞-lyは、原則として①形容詞を副詞化する(形容詞+lyは副詞)、②名詞を形容詞化する(名詞+lyは形容詞)とされます。 

 

「現代英語では,-ly が形容詞から副詞を作る典型的な接尾辞であることはよく知られている.nice - nicely,quick - quickly,terrible - terribly の類である.非常に生産的であり,原則としてどの形容詞にも付きうる.

 ところが,-ly は実際には名詞から形容詞を作る接尾辞として機能することもある.例えば,beastly,cowardly,fatherly,friendly,knightly,rascally,scholarly,womanly など.時間を表す,daily,hourly,weekly,yearly も同様である.副詞接辞にも形容詞接辞にもなりうるこの -ly とはいったい何なのだろうか.」

    堀田 隆一『接尾辞 -ly は副詞語尾か?』2009

 

 文法性を示す主なしくみには(ⅰ)屈折、(ⅱ)機能語、(ⅲ)語順があります。およそどの言語でもこの3つの方法を組み合わせて文法性を示しますが、言語によりどの方法を重視するかは異なります。

 接尾辞-lyは(ⅰ)屈折によって品詞という文法性を示していると言えます。しかし、同じ-lyを語尾とする語には形容詞と副詞の両方があるので(ⅰ)屈折という手段だけでは品詞を区別できないということになります。

 

 他にも-lyという語尾が無い無標(φ)の語が副詞となる場合があります。例えばtightという語は無標で形容詞として使いますが、そのままで副詞としても使います。さらにtightlyという屈折形の副詞も存在します。

 

1)   a. Hold on tight/tightly!  (しっかりつかまって)

  b. The jeans are too tight.  (そのジーンズはきつすぎる)

 

  (1a)では、「つかまる」という動作の様子が「しっかりと」のしていると解釈できます。よってtightは動詞holdの様態を表していると見るわけです。この場合、tightはtightlyにしても意味は変わりません。語尾-lyの有無には関わらず、動詞holdを修飾するという文中での働きは同じなので、どちらも副詞と解釈されます。

  (1b)では、「ジーンズ」というものが(はく人にとっては)「きつい」ということを意味しています。よって、tightは名詞jeansの状態を表していると見るわけです。副詞と同形のtightでも名詞jeansを修飾しているとみなせることから形容詞と解釈されます。

 

形容詞と副詞の違いを確認しておきます。

「副詞adverbは、ラテン語のadverbium(接頭辞ad(~に付加され、~を修飾する)+語幹verbum(語))から生まれた語である。verbumは、動詞が語の中で最重要語(the word of words)であったことから、「語」であった意味がのちに「動詞」の意味に変化している。したがって本来adverbは「語」を修飾するという意味を持ち、それがadverbの原義となる。

 実際、副詞は次のように動詞、形容詞、文、名詞句、前置詞句を修飾することが可能である。(岡田1985)

2)a. She sings well.

  b. Your work is very good.

  c. Probably, John hit the ball.

  d. We based our argument on precisely those grounds.

  e. Much to my surprise, the box was empty.

 

田畑 圭介「古英語から現代英語に至る ly 副詞の歴史的発達について」2017

 

  a.(彼女は上手に歌う)

  b.(あなたの仕事はとても良い)

  c.(多分、ジョンがボールを打ったのでしょう)

  d.(私たちの議論はまさにその理由に基づいていた)

  e.(驚いたことに、その箱は空っぽだった)」

 

  副詞は、他の語を修飾する働きをする語の総称といったところです。副詞と同じく修飾語である形容詞は、名詞を修飾することに特化した品詞です。名詞を修飾する働きをするのが形容詞で、名詞以外を修飾する働きをするのが副詞ということになります。

  品詞を区別する見方には形態、意味、働きなどがありますが、現代英語は形態だけでは区別できません。基本的には文中の働きによって決まるとみなすのが妥当です。しかし、その働きは必ずしも明確とは言えない面があります。

 

形容詞を基幹として、それに-lyという接尾辞を付けて副詞を派生させるという立場をとるKjellmer (1984)は、-ly形の副詞の生成に関して、形容詞の範疇として、-able, -al, -anなど主なものを50個選び、Lancaster-Oslo/Bergen Corpus にもとづいて、その分布数と、さらに、対応する語彙化された -ly 形の副詞の分布数をもとめた。これによって、-ly 形の副詞の生成力には違いがあり、その比率のもっとも高いもので、-ful→-fully の 41%、もっとも低いもので、-oid→-oidly の0%であり、平均は13%と報告している。

 Kjellmer (1984)が-ly形の副詞の生成に働く決定的な要因として挙げている[±dynamic]  という素性は非常に相対的なものである。例えば、tallという形容詞は[-dynamic]のグループの中に見出される。確かにtallに対応する*tallyは語彙的に存在しないが、tallと同じ[-dynamic]に属すると思われるrichやbuxom等の場合は、語彙的にはそれぞれ対応する-ly形の副詞richlyやbuxmolyは存在している。

 形容詞から副詞を派生させるという前提に立って試みられたKjellmer (1984)の一般化は、統計学的に依拠できるデーター値が低すぎる点、意味論的基準として挙げた[±dynamic]という素性が相対的なものであり、副詞生成力に関して決定的な要因となり得ないという点で、不十分なものであり、結局のところ、「形容詞を基幹にして副詞を派生させる」という前提そのものが誤っていたと結論せざるをえない。」

  山内 信幸『「形容詞てきなもの」と「副詞的なもの」』1991

 

 現代英語において、形容詞と副詞が語尾の無い無標(φ)と語尾-lyのある有標の単語の間で揺れを起こします。その理由は文法的仕組みの歴史的変遷の中で見ていくと分かります。

 

  品詞を示す主な文法手段には(ⅰ)屈折、(ⅱ)機能語、(ⅲ)語順がありますが、英語は歴史的にその手段が大きく変化しました。

  古英語では、屈折が豊富で(ⅰ)屈折を文法的仕組みの最優先でした。中英語期には語尾の屈折が衰退し、(ⅰ)屈折によって品詞を示すことが困難になってきます。近代英語では屈折のほとんどが失われて、(ⅱ)機能語の発達と(ⅲ)語順の固定化が起こります。結果として英語の文法的仕組みの優先順位は(ⅰ)屈折<(ⅱ)機能語<(ⅲ)語順ということになります。

  接尾辞-lyと形容詞、副詞に関する変化を英語史の大きな流れの中でみていきます。

 

「古英語の対応する接尾辞は -lic である.licは単体としては「形,体」を意味する名詞である.これは現代英語の like 「?のような,?に似た」の語源でもある.-lic が接尾辞として他の名詞に付くと,「(名詞)の形態をした,(名詞)のような」という形容詞的意味が生じた。現代英語では,-like の付く形容詞も存在するが,成り立ちとしては -ly とまったく同じだということがわかるだろう(例:businesslike,childlike,lifelike).実際,形容詞語尾としての -like は -ly 以上に生産的であり,事実上どんな名詞にも付き得て,形容詞を作ることができる(例:doglike,jerry-like,sphinxlike).

 以上で,-ly ( < OE -lic) がまず最初に形容詞語尾であることが分かっただろう.それでは,副詞語尾としての -ly はどこから来たのか.古英語では,形容詞は与格に屈折させると副詞機能を果たすことができた.-licの付く形容詞の与格形は,語尾に <e> を付加するだけの -lice であった.ところが,中英語期にかけて起こった語尾音の消失により,与格語尾の <e> が落ち,結果的に形容詞語尾の -licと同形になってしまった.さらに,恐らく古ノルド語の対応する形態 -lig- の影響により,中英語後期までに -lic の最後の子音が弱化・消失し,現在のような -ly の形に落ち着いた。」

     堀田 隆一『接尾辞 -ly は副詞語尾か?』2009

 

 英語史を扱う時には、18世紀の標準化以前には各地域で多様な表現があり得たということを踏まえておくことが大切です。だから、古英語期、中英語期の歴史的事実は点であり、それを線で描くことは細部を見るのではなく、大きな視点で見ることになります。

 

  古英語期は(ⅰ)屈折によって形容詞と副詞は厳密に区別できていたと考えられます。その典型例として、形容詞であることを示す語尾-lic、副詞であることを示す語尾-liceがあったということです。

 ところが中英語期にはその違いを示す副詞語尾のeは消失し、形容詞と副詞は(ⅰ)屈折という形態の違いによって区別することが困難になります。さらに-licが消失する過程で無標となった語や-ly語尾に変化した語などに分かれていきます。

 

「古英語期には形容詞の語幹に-eをつけて副詞を作る派生が見られていたが、副詞派生辞-eは弱音化の過程を経て15世紀には消失し、つづり上も脱落して形容詞と同型の単純形副詞(flat adverb)が誕生する。

単純形副詞が生まれたことの類推によりラテン系形容詞がそのまま副詞として用いられるようになった。16世紀には他の形容詞も同形で副詞として用いられるようになっている。

 古英語期に形容詞に-eがついて形成されたものが、中英語期に-eが脱落して、形容詞と同型となった副詞。

 deep, fast, slow, hard

 

 中英語時代に副詞を作った接尾辞-lyは、古英語のliceに由来する派生接辞で14世紀に一般的となった。uglyのように現代英語では副詞用法がなくなり、形容詞用法のみとなった語もある。

 kindly, nobly, ugly, lively, ably, firstly, blessedly

 

-ly接辞には、副詞を派生する接尾辞とは別に、形容詞を派生する接尾辞-lyや-liがあった。13世紀にNorthとEast&West Midlandsで用いられはじめ、15世紀には全方言で一般化されている。(中尾1972)

 

 goodly, manly, kindly, homely, yearly, daily, weekly, lowly, sickly」

 

 田畑 圭介「古英語から現代英語に至る ly 副詞の歴史的発達について」2017

 

 歴史的経緯から言えば語尾-lyは元々副詞専用ではなかったのです。現在のように、屈折語尾-lyが副詞であるという意識づけは自然に出来たわけではありません。それは屈折によって単語の品詞を厳密に区別するラテン語文法を範とする規範文法によって創り出されたのです。

 

「15世紀以降になるとly副詞が広範的に使われるようになるが、ly副詞は動詞を頻繁に修飾するのに対し、単純形副詞は形容詞、副詞を収束する語として相補的に使われるようになった。

 また本来は形容詞であったものが、同形のまま副詞として用いられるようになる。括弧内は副詞用法のOEDにおける初例年を示している。

 

 burning (1475)  grievous (1596)  mighty (a 1300)

 dreadful (1682)  horrible (c 1400)  monstrous (1590)

 exceeding (1535)  indifferent (1583)  passing (1387)

 excessive (1569)  intolerable (1592)  tolerable (1673)

 extreme (1593)  marvelous (c 1330)  wondrous (a 1557)

 

 本来形容詞であったものが、同形で副詞として一般に餅られる時代が、18世紀中ごろまで続くことになるが、18世紀末頃には規範文法(prescriptive grammar)が確立される。規範文法はly副詞こそが正しい副詞であり、単純形副詞は形容詞に過ぎないとされ、単純副詞はその後口語として生きながらえるが、多くの単純形副詞は衰退の一途をたどることになる。

 荒木・宇賀治(1984)はLowth(1762)の次の言葉を引用している。

 

 Ajuctives are sometimes employed as Adverbs: improperly, and not agreeable to the Genius of the English Language.

 

 規範文法による副詞の厳格化により、副詞は-lyの語尾をもつ語という定式化が確立された。ly副詞が副詞の大部分を占める現代英語のはじまりである。」

    田畑 圭介「古英語から現代英語に至る ly 副詞の歴史的発達について」2017

 

 ここにある語の中でburningについて、辞書の扱いを紹介します。

 英英辞典のCollins CobuildとLongmanでは形容詞adjの他に副詞advとして用例を載せています。

Also an Adverb  He touched the boy's forehead. It was burning hot.  ――CCED1995

CCEDではburning hotという句で、形容詞のhotを修飾していることから副詞としています。

  また『ウィズダム英和』2003ではburningを形容詞としてだけ扱い、副詞とはしていません。形容詞の用法のその1つに次の用例を挙げています。

It was a burning hot day in August. 8月の燃えるように熱い日だった

――WED2003

 WEDではa burning hot dayという句で、名詞のdayを修飾しているみなして形容詞としています。このときWEDの品詞の扱いを考えてみましょう。

 

 a very hot dayという句では、veryは形容詞hotと名詞dayのどちらを修飾しているでしょうか。veryには、形容詞を強調して「非常に」の意味で用いる副詞と、名詞を修飾して「ちょうど」という意味でも用いる形容詞があります。

 He died on that very day. 彼はちょうどその日に亡くなった――WED2005

 a very hot dayのveryは、名詞dayではなく、形容詞のhotを修飾して「非常に暑い」という意味に解釈するのがふつうです。よってこのveryは副詞とされます。そうすると、a burning hot dayのburningも、hotを修飾して「燃えるように熱い」という意味を成すので、副詞と解すこともできることが分かります。

 

 無標の英単語は語形だけで品詞を特定するのは困難で、語の配列など他の要素を考慮する必要があります。burningという語の品詞は、[burning+名詞]なら形容詞、[burning+形容詞]なら副詞というように語の配列によって変わります。だから、[burning+形容詞+名詞]という配列では、形容詞と名詞のどちらとより関連があるかで品詞の解釈が変わります。

 現代英語は屈折を失ったために形態によって品詞を明確に区別できません。だから語の配列に頼って品詞を示すようになったのです。このような事情から、無標の形容詞が同型のまま単純形副詞として使用されたということになります。

 

 標準化を志向したラウスは、形態と品詞が一致せず不統一なことから、「形容詞を副詞として使うことは、英語本来とは異なる」と記しているのです。その「本来」の意味するところは「現代英語」ではなく、屈折という形態によって品詞を厳密に区別した「古英語」のことを指します。しかし、屈折を失った現代英語の自然言語としての本来の文法的仕組みは、(ⅰ)屈折<(ⅲ)語順です。

  18世紀以降に形態と品詞の不統一を準化教育によって矯正したのです。20世紀のhigh schoolの教科書を引用します。

 

『Complete English grammar for common and high schools』1907

 

  無標の形容詞adjectiveとly副詞Adverbを対比させて、形容詞+lyの形にすると副詞になることを示しています。18世紀中ごろから20世紀にかけて長期にわたる標準化教育は、かなりの効果があったことが示されています。

  20世紀末にかかれた論文の記述を引用します。

 

「Opdahl (1989) がおこなったイギリス英語およびアメリカ英語を対象とした directly と direct の生起にかんするコーパス調査にもとづいて、-ly 形のつく副詞 ←→ ly 形のつかない副詞 ←→形容詞という3つのパラダイムのなかで、-ly 形のつかない副詞が、形態上、-ly形を失ってしまったため、次第に形容詞としての範疇にくみこまれつつあるという仮説を提案する。

 イギリス英語としては Lancaster-Oslo/Bergen Corpus (以下、LOB)を、アメリカ英語としては Brown Corpus (以下、Brown)を利用し、それぞれの副詞の生起数および生起率を集計したところ、次のような結果がえられた。

   

  従来、この direct のような -ly 形をつけない副詞は、とりわけ、口語の場合、アメリカ英語に顕著な語法とされてきたけれども、まったく逆の調査結果が生じていることは注目に値する。

   口語体の慣用表現としてしられる‘Take it easy.’において、大多数の辞書は、この easy を副詞として記述しているけれども、Collins COBUILD English Dictionary (1995) においては、「動詞+形容詞」の組みあわせとして表記されていることをあげることができよう。この事実は、あきらかに、easy が形容詞の範疇にはいっていることを示している。」

山内 信幸『-ly 接尾辞の扱いをめぐって―文法化(grammaticization)の観点から―』1998

 

 この論文は20世紀のものです。今世紀に入って、規範的文法規則は見直される傾向にあります。

  Swan2016にある記述を紹介した論文から引用します。

 

「clean  The adverb clean means ‘completely’ before forget(informal)and some expressions of movement.

  Sorry, I didn’t turn up – I clean forgot.

  The explosion blew the cooker clean through the wall.

 

direct  Direct is often used informally as an adverb.

  The plane goes direct from London to Houston without stopping.

 

American English

 In informal American English, many other adjective forms can also

be used as adverbs of manner.

  He looked at me real strange.  Think positive.

Swan(2016:§194)

土屋 亮『Direct and indirectly:英語の-lyを伴う副詞の等位接続に関する一考察』

 

 Swanは単純形副詞をinformalあるいはdirectとして紹介しています。それは英語の歴史的経緯から見ると、18世紀の標準化が始まる以前は広範に使われていたものです。無標の英単語の文法性を語の配列に頼って解釈するというのは現代英語の文法的仕組みの根幹なのです。

 

 デビット・セインは、単純形副詞と-ly副詞の用法に関して「単純形副詞を使ったほうが自然と思われる場合」について記述しています。

 

Think different.  は1997年のアップルコンピュータの広告キャンペーンのスローガンとして使われました。ここで単純形副詞について説明します。

 これはいわゆる -ly のつかない副詞です。上の例では differently も副詞ですが、different も副詞として用いられます。そしてここでは、Think differently. を不自然と思うネイティブが明らかに多いでしょう。

 ただし、単純形副詞は「口語的すぎる」、人によっては「誤用である」と見なす学者もいますし、実際この Think different. の different もイギリスではあまり使われません。辞書はこのあたりのことを十分に考えたうえで、「使って問題ない」というものを掲載し、説明していますから、単純形副詞はこれまでなかなか取り上げられませんでした。ですが、最近の辞書にはこうした単純形副詞も副詞として定義されていることがあります。

 Think smart.

 ほとんどのネイティブは自然だと感じるでしょう。smartlyは文法にこだわる人の言い方に聞こえてしまい、どこか不自然です。

  Make sure you drive slow.確実にゆっくり運転しよう。

 文書作成ソフトの Wordでは slow に二重線が示されて、An adverb works better here. とご親切に提案してくれますが、「ワードくん、この slow は形容詞ではなくて、副詞だよ。」

  デイビッド・セイン『ネイティブが教える英語の副詞の使い方』2020

 

 ここに出てくるslowは中英語以来副詞として使われてきた語です。you drive slowでは、動詞driveの直後に配置され、他に修飾するような語など無いので、動詞を修飾する副詞と分かります。英語は屈折という形態よりも語の配列が文法性を示すのです。数百年間使われ続けてきた用法を英語話者が自然に感じるのは当然のことだと言えます。wordが二重線で文法的に問題があると示すのは英文法が伝統的に屈折を重視してきたからです。

 セインはこの他にも英語ネイティブがly副詞よりも単純形副詞を使う方が自然だと感じる例として他にも以下の用例を挙げています。

 Think positive.

 Heʼs acting strange today.

  彼は今日はおかしな振る舞いをしている(挙動不審だ)。

 You did right by telling her the truth.

  彼女に真実を伝えたのは正しいことだ

 

 自然言語としての現代英語の品詞表示の優先順位は(ⅰ)屈折<(ⅱ)機能語<(ⅲ)語順

です。規範文法は屈折語尾lyを副詞とみなして標準化を図ってきましたが、現代英語の文法的仕組みは屈折よりも語順は優先です。無標の語を形容詞や副詞に使い回すのは文法にいい加減だからではありません。英語ネイティブの文法感覚は、無標の英単語を語の配列によって自在に使い回すという自然言語の原理に従っているのです。

 ly副詞にまつわる問題は、屈折を優先するラテン語文法の原理を重視する規範文法と、語順を優先する現代英語本来の文法的仕組みとの違いに基づくものです。今後どのように変化していくかは注視していくことが必要だと思います。

 

 今回は、ly副詞について歴史的な変遷を概観しましたが、詳細な用法は回を改めて記事にする予定にしています。