【横瀬2003】

「アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどそれぞれ国の英語表現があるが、これらの国で英語が活字になると、どの国の人が書いたものか色別には難しい。ところが話したりするとすぐわかる。

 イギリスの学者が教養あるレベルで比較した場合、オーストラリア英語とイギリス英語との間に存在する顕著な文法的差異は、きわめて僅少であると述べている。しかしながら、細かな点で、特に口語レベルではイギリス英語とはかなり違ったものが見られる。

 

she:標準語ではitと言うべきところ、sheを盛んに使う。概して好ましいことを表す。

 例:She'll be all right. (万事オーケーよ)

 

us: 例)Give us me bickies. (俺の金をよこせ)

 このusはmeの意味であり、オーストラリアの俗語では、しばしばmeの代わりにusが用いられる。次にmeは、所有格myのことである。彼らは(イギリス人も)友人同士のくだけた会話ではmyを[miː]と発音することがしばしばある。

 

your; 二人称所有格の意味を持たず、単に冠詞[a(n),the]のように使われることがある。

例:She is not your typicl librarian.

 (彼女は図書館職員タイプじゃないんだ)

  No your quietest place, is it, Pitt Street?

 (活気のあるところだね、ピッツ街は)」

 

   横瀬 弘幸『オーストラリア英語の特徴』2003

 

【資料】

●19世紀末までの英文法書では、2人称について、単数はth-系指示詞類、複数はy-系指示詞類だった。

  ALFRED S. WEST『English grammar for beginners』1895

 

●Ngramの使用率をみると、th-系のthyが衰退しyourが取って代わったことが分かる。

 

 冠詞とされるtheもth-系指示詞類ととらえれば、オーストラリア英語でyourが使用されるのも不思議ではない。指示詞類が標識化すると意味内容は漂白化するから、人称という古典語の概念にとらわれることはなくなる。「冠詞」「人称代名詞」という古典的な文法用語は、言語変化や多様性を反映した説明には不向き。