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BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Edgar E Os Taisのこのアルバムは、もうジャケットが最高過ぎる。多分、昭和の日本にも共通するだろうけれど、TVの歌謡番組から登場しました!みたいなこのジャケットが、いかにも古き良き60~70年代的Retroな雰囲気を醸し出していて良いのである。子供の頃、祖父母といる時はニュースにプロ野球、ボクシング、落語、時代劇なんだけど、両親といる時は、この手の歌謡番組を見ていたような記憶がうっすらとあるのであった。歌番組では指揮者がいて、Chorus隊Horn隊を含む生バンド、時にはOrchestraがバックで演奏していた時代。時代の変遷と共に生の演奏者やChorus隊雇うよりお手頃な打ち込みの時代になって、かつてのCarmen Dragon率いるThe Glendale Symphony Orchestraのような初見でどんな難易度の高い譜面でも、なんなく演奏できてしまう恐ろしく演奏能力の高いMusicianの梁山泊のような集団は今どうなっちゃっているんだろうと脱線してしまったけれど、さてBrasil名ギタリスト/作編曲家Antônio Edgard Gianullo率いるGroup Edgar E Os Taisの話。60年代にJoão Gilbertoが、Bossa Novaを演奏しその名を轟かせる前に、São Pauloで神童と謳われたGuitaristがいた。それが(Antônio) Edgard Gianulloである。TVを中心50年代から活動を開始し、TV番組CM音楽の仕事の傍らSession MusicianとしてもJacóの名前でWalter Wanderleyなどと共演、そしていよいよ自己のGroup Edgar E Os Taisを結成する。超絶技巧なんだけど、難易度の高いChorusをさりげなくキメまくる男女混成Chorusが炸裂している。中でも紅一点の女性VocalAna Roselyが基本Cuteで愛らしいのだが、時に妖艶で神秘的な面も垣間見せ、これが素晴らしい。Os Poligonaisからピアニストで、ここでは鍵盤にContrabassも弾き、Arrangemo手掛けるVicente De Paula SalviaにSax、Fluteを演奏するVidal Sbrighi、加えてOrganにCelestaも弾くContrabass奏者Sergio Barrosoをはじめ、ドラムスのToniquinhoらの演奏も最高に素晴らしいが、Scatがキレキレ60年代ダヴァダヴァダの魅惑の世界に惹きこまれてしまう。

 

 『Cantárida』はEdgar E Os Tais70年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目は“Estou Dez Anos Atrasado”はErasmo Carlosの70年作『Erasmo Carlos E Os Tremendões』の冒頭を飾るナンバー。勢いはそのままにTempoを落として男女Chorusのユルさがイイ感じ

ギターのカッティングで始まるこの時代らしいインストのJazz RockQueen Aparecida”。まるでGeorgie Fameのあの曲のようだけどHammondBrassが、これまたイイ感じ。後半のソロの展開も良き。

Não Deixo Você Ir Embora”も男女Vocalがマッタリご機嫌でバックのFluteがイイ味を出している。

Dela”はErasmo Carlosの名作『Sonhos E Memórias 1941 - 1972』収録“Sorriso Dela”のCover。小洒落た男女Chorusから入り最高としか言いようがない。

A Primeira Vez”は女性Vocalがしっとり歌い上げ寄り添う男性Chorus雰囲気タップリ

Vou Me Pirulitar”はEmbalo RMilton Banana Troで知られるJorge Ben作のナンバー。これまたCuteな女性Vocalに絡む男性ChorusHorn隊のEnsembleがキレキレで最高。

Prólogo”は高速Scatが炸裂する三保敬太郎伊集加世子岡崎広志の『11PM』のOpenigもビックリのダヴァダヴァダの世界

Foi Tão Bacana”も可憐な女性Vocal男性ダヴァダヴァダChorusの共演が微笑ましい。

Humorousな男女Vcalのかけ合いA Morena Lena (La Ballena Nena) (Mairzy Doats)”もホンワカして楽しい。

Quem Vem Lá”もキレキレの男女ChorusSaxソロが絡むあたりは最高に心地良い

Trio MarayáHilton Accioli作“Bambê-Lô”は神秘を湛えた女性Vocalがバックの演奏と共にMysteriousな香りを運ぶアルバム一番のお気に入り。

アルバム最後をシメるのは奇才Nonato Buzar作の“Alô Helô”。心地良くも難易度の高いChorusを涼しい顔してキメるあたりが最高。

(Hit-C Fiore)

Nothing Can Come Between Us/Sade

 SadeはPunk一辺倒の中学生だった自分がPaul Weller兄貴によってJazzSoulFunkBossa Novaに興味を持つようになってきた頃に出会った。そして、一時浴びるほど聴きまくったものだった。同時期に知ったTracey ThornBen Wattの音楽も自分にとって大きな影響を与えてくれたものだ。大人になっていくということは色んなことを経験して全く思いもよらなかったさまざまな事を知ることではあるけれど、10代の頃のPunkやバイクで悪ガキどもと騒いでいた自分がまさか、それよりも遥かに面白くて心地良くて夢中になるものができるなんて想像もできなかった。女性と交際した経験のない自分が、初めて異性と一緒に二人だけで映画を観たり食事したり喫茶店で会話するような日々がやって来るとは全く予想していなかった。野郎とツルんでバカやっているのが好きだったけれど、こういうのも悪くないなぁなどと思っているうちに深みにはまっていくのであった。そんな甘酸っぱい日々と共にSadeは、その音楽はそこにあった一緒にやっていたバンドの仲間も、自分の音楽の嗜好が変化して、さまざまな出会いと別れがあり、色んな連中と演奏で接して少しずつ、大事なことを学んでいったように思う。そして親元を離れ一人暮らしを始めるようになると、音楽仲間以外にも付き合いができるようになり、社会のことも少しずつ学びながら大人になっていく。Sadeは、そんな間もずっと自分の部屋で静かに淡々と、そして凛として生命感に満ちた心地良い音楽を奏で続けているのであった。

 

Stronger Than Pride/Sade 

 “Nothing Can Come Between Us”はSade88年にリリースしたアルバム『Stronger Than Pride』に収録されている。Sade AduことHelen Folasade AduLead Vocalに擁するバンドSade82年Londonで結成された。少女時代のSadeは、Curtis MayfieldMarvin Gayeを好んで聴いていたという。84年Debut AlbumDiamond Life』、翌85年には英米でChart首位を獲得した『Promise』をリリースして世界中でヒットさせ、3rd Albumとなる『Stronger Than Pride』は3年ぶりのアルバムとなった。ProduceはSade自身となっている。

(Hit-C Fiore)

 AzymuthAzimüthという名前で75年にリリースしたDebut Albumから始まり70年代に世に出したアルバムは全て名盤であるが、80年代の作品も中々どうして負けず劣らずの傑作揃いである。また彼らがMarcos Valleとリリースしたアルバムやさまざまな変名で参加していたアルバムもご機嫌な出来であることはいうまでもない。躍動感に満ちて心地良く独特の浮遊感でImaginativeな音世界をCoolに描き出す彼らの作品は、暑い夏に聴くにはもってこいなのだが、本日ご紹介するのはジャケットからして暑さを吹き飛ばしてくれる82年にリリースされたアルバム『Cascades』。ジャンルや国、世代を越えて多くの人々を魅了してきた彼らではあるが、上述の1st Albumのリリースから半世紀たっても、その名作の数々は決して古びることのないTimelessな魅力を持ち続けている。80年代というと、Gated Reverb Drum SoundとDigital Synthesizer、そして打ち込みが幅を利かせるようになり、多くの英米のRockやSoulがSound的に今聴くと、かなり時代を感じさせてしまう作品を残してしまうようになっていく時代でもあるが、そんな時でもAzimuthは、José Roberto BertramiFender Rhodes Electric Pianoは相変わらず永遠に煌く続けている。そしてAlex Malheiros低音でウネるFletless BassSlapIvan ContiSharpで懐の深いBeatEvergreenの輝きを放っている。時に空間を生かしたりマッタリSaudadeな心地良いユルさも感じさせるところもAzymuthの魅力であり、80年代に入ると洗練と完成度を高めながらも、ある種の余裕も感じさせるようになり、VocoderGentleで気怠げなScat極上の心地良い空間を生みだしているのが素晴らしい。本作はBertramiのエレピのみならず隠し味的なHammondやGuestのMauricio EinhornによるHarmonica、Vocoder、Percussion最高に心地良い、これまた名盤中の名盤である。

 

  『Cascades』はAzymuth82年Milestoneからリリースしたアルバム。

アルバム1曲目は“Club Morocco = Marrocos Clube”。ぶっとく低音でウネりまくるFretless Bass冷ややかで心地良い響きで魅了するFender Rhodes Electric Piano、そしてIvan Contiの躍動感に満ち溢れたDrumming、いきなり全開である。根底にSambaのBeatを感じさせつつSnareを叩くPointを変えながら疾走感に満ちたしなやかなBeatを叩き出すContiに脱帽。

作者のMalheirosが弾くAcoustic Guitarが心地良い“Cascade Of The Seven Waterfalls = Salto Das Sete Quedas”は気怠げなScatがイイ味を出している。このマッタリSaudadeな心地良いユルさもAzymuthの魅力のひとつである。

Ivan Conti作“Through The Window = Entrando Pela Janela”も16分音符ひとつ前にSyncopateしたSnareが叩き出す心地良いBeatにのったContiのGentleなScat Vocalが素晴らしい。

Milton Nascimentoに捧げられたJosé Roberto Bertrami作の“Remembering Milton = Lembrando Milton”はPercussionから始まるCosmicで幻想的なイントロから惹きこまれてしまう。

Festa Nativa”はPercussionとFender Rhodes Electric Pianoが涼し気に響き、低音でぶっとくウネるFretless Bassも実に心地良い。

Azymuthらしい独特のタメとすき間を生かした音作り極上の味わいの“A Woman = Uma Mulher”。Hammondとエレピも最高だし、なんといってもMauricio Einhorn切ないHarmonicaの響きがたまらない。

アルバム最後をシメるのはVocoderが炸裂するCosmic SambaIndian Pepper = Pimenta Malagueta”。

Club Morocco = Marrocos Clube/Azymuth

(Hit-C Fiore)

 The Undisputed TruthというGroupに辿り着いたのは、Joe "Pep" HarrisというFunkyなSingerを追いかけていた時であった。大好きなPhiladelphiaのSoul Disco Vocal Group Double Exposureのメンバーであり、85年にリリースされたGeorge Clintonの『Some Of My Best Jokes Are Friends』、86年の『R&B Skeletons In The Closet』、89年の『 The Cinderella Theory』に参加し、Jimmy G. And The Tackheadsの85年の傑作『The Federation Of Tackheads』、88年のIncorporated Thang Bandの『Lifestyles Of The Roach And Famous』といったP-Funk関連作に参加していたJoe Harrisとはいったい何者?というわけで、60年代Detroitで結成されたVocal Group The Fabulous Pepsのメンバーであったり、なんと大好きなOhio Players、その前身のOhio Untouchablesにも参加していたツワモノなのであった。そして、あのNorman WhitfieldPsychelic Soul路線を極めるために結成したThe Undisputed TruthにHarrisはLead Singerとして迎えられるのであった。そういえば、これまた贔屓にしているFunk Group Rose RoyceのNorman WhitfieldがProduceしている80年代の2枚のアルバムにもHarrisは参加していたのであった。さて、The Undisputed TruthはLos Angelesを拠点に活動していたThe DelicatesのメンバーであったBillie Rae CalvinBrenda EvansがDelicates解散後にDiana RossFour TopsのBacking Vocalを経験した後、Joe Harrisと共にNorman Whitfieldが企画したGroup結成となるのだが、男女混合3人組として71年Gordyから『The Undisputed Truth』でアルバム・デビュー、本作はそれに続く2nd Albumとなる。ベースにJames Jamerson、ドランスにAndrew SmithRichard 'Pistol' Allen、ギターにDennis CoffeyMelvin "Wah Wah" Watson、鍵盤にJohnny GriffithというThe Funk Brothersに加えドラムスにMotownお馴染みAaron Smithという演奏陣もバッチリで、後のP-Funk化していくこのGroupの作品も嫌いではないが、個人的には本作で脱退してしまうBrenda EvansのVocalが好きなこともあり、こちらの方が好みである。

 

 『Face To Face With The Truth』はThe Undisputed Truth71年Gordyに録音したアルバム。

アルバム1曲目は“You Make Your Own Heaven And Hell Right Here On Earth”。淡々と静かに始まりJoe HarrisDeepなVocalが女性Vocalと共にSoulfulに盛り上げていく。あくまでもCoolに、熱いSoulを秘めた激渋なナンバー

What It Is?”はBrenda EvansのSoulfulなVocalがいきなり炸裂する勢いのあるFunk鳴り響くPercussionギターのRiffとカッティングギターとのMinimalなEnsembleをバックにVocalとChorusが盛り上げる。

グッと腰を落としてド渋なギターのRiffで始まるUngena Za Ulimwengu (Unite The World) / Friendship Train”。EffectをかけたVocalも雰囲気を出している。SoulfulなVocalの絡みも絶品。ここでもDennis Coffeyギターがイイ感じ

Organイナタいギターのフレーズで始まる“Superstar (Remember How You Got Where You Are)”。ここでもHarrisとBrendaの絡みがカッコイイ。

Take Me In Your Arms And Love Me”はJoe Harris絶品のDeepでSoulfulなVocalで始まり、女性Chorusが優しく寄り添いジワジワと盛り上げていく。ここでのHarrisのVocalは最高としか言いようがない。バックの極限まで音を選んだ渋い演奏も実にイイ感じ。EndingのHarrisのVocalとChorusだけになるところは鳥肌モノ。

アルバム最後をシメるのは“What's Going On”。勿論、Marvin Gayeの名曲のCover。ここでも、敢えてEmotionalな高まりを抑え淡々としたVocalと演奏が素晴らしい。男っぽいHarrisのVocalとEroticな女性VocalのContrastが素晴らしい。

You Make Your Own Heaven and Hell Right Here on Earth/The Undisputed Truth 

(Hit-C Fiore)

 Stéphane Grappelliのアルバムを引っ張り出しては、ご機嫌な気分になることがある。また、時々ふとしたきっかけでGrappelliの軽やかにSwingするViolinを外出先で聴いたりすると、思わず気分が揚がるのだ。Grappelliは70年代に数多くのアルバムを残していて、それらの作品は緑に囲まれたカフェのテラスで夏の心地良い風を感じながら聴くと最高である。気分は70年代おフランスはParisの街角みたいな感じで、柄にもなく気取っちゃったりして。本作は60年代後半に設立された贔屓にしているFranceのLabel Black And Blueからリリースされた作品で、タイトルからわかるようにStephane GrappelliがJazz Bassist Slam Stewartと組んだアルバムで、30年代から40年代にかけてSlamとSlim Gaillardが結成していたDuo Slim and Slamにかけてある。ちなみにSlam Stewartは20歳でBassistになる前はViolin奏者であったという。本盤は正にGrappelliの優美で流れるように軽やかに歌いまくるViolinにピッタリなStandardを中心に自作曲もまじえ実に心地良く気分爽快になるアルバムに仕上がっている。本当に70年代のStephane Grappelliは充実しまくっていて、とても還暦越えとは思えない、伸びやかで生命感に満ち溢れたViolinに魅了される。もしかして、この時期こそがGrappelliの全盛期なのではと思ってしまうほどである。NostalgicでElegantなSwingというStyleから、さまざまなジャンルのMusicianと共演してHard BopJazz Rockにも挑戦していったこの時期のGrappelliであるが、本作のような作品は、やっぱり心が落ち着き和むGrappelliの持ち味が十分に発揮されたもので自然と手が伸びる。Stewartのベース、ピアノにJohnny Guarnieri、ギターにJimmy Shirley、ドラムスにJackie Williamsというメンツとの相性もバッチリ。

 

 

 『Steff And Slam』はStephane Grappelli75年にリリースしたアルバム。

アルバム1発目はArt Tatumの名演で知られNat King Coleも歌ったStandardI Would Do Anything For You”。軽やかに小気味よくSwingするご機嫌なOpener。

Deed I Do”もNat King ColeやElla FitzgeraldPerry ComoBlossom Dearieらの名唱でも知られる大好きなStandard。これまたStephane Grappelliの小粋なViolinにピッタリである。

42年公開の映画『Casablanca』で有名になったStandard“As Time Goes By”。RomaticなGrappelliのViloinが Johnny Guarnieriのピアノと共に雰囲気タップリで思わず浸ってしまう。

20年代のBroadway MusicalHold Everything!』で使われた“You Are The Cream In My Coffee”。心弾むピアノで始まり、GrappelliのViloinもご機嫌に歌いまくりJimmy Shirley鯔背なギター・ソロも良き。

Sysmo”はGrappelli自身が弾く優美なピアノの演奏。これがまた実に心地良い。

お馴染み“It's Only A Paper Moon”はSlam Stewart得意のBassを弾きながらのScatも絶品である。

Louis ArmstrongChet BakerBetty CarterElla FitzgeraldBillie Holidayの名唱で知られる大好きなStandard“You Are Driving Me Crazy”もStwartのScatやGuarnieriのピアノもSwingyで思わず指パッチンのご機嫌な仕上がり。

数多くの映画に使われた大好きなStandardIt Had To Be You”。StewartのMoodyなScatも良き。

My Blue Heaven”も大好きな曲だが、心ウキウキするSwingyな演奏ギター・ソロピアノ・ソロArcoソロもキマって、いつ聴いても最高。

アルバム最後をシメるのは典雅な自作曲Flonville”。気持ち良すぎ

As Time Goes By/Stephane Grappelli

(Hit-C Fiore)

 Jerry's KidsMassachusetts州Braintree80年代初頭に結成されたHardcore Punk Band。彼らもまたBoston Hardcore Sceneの初期から活動を開始した連中であり、70年代末Bostonに設立されたModern Method RecordsからリリースされたCompilation AlbumThis Is Boston, Not L.A.』にGang GreenFU'sThe Freezeと共に楽曲が収録されていた。A面の冒頭を飾り6曲の楽曲が収録されていたJerry's KidsはGang Greenと共に荒削りでヤンチャな悪ガキっぷりを思う存分発揮している。Boston Hardcoreといえば、なんといってもBoston Crewであり、限度知らずの享楽主義に反発したStraight EdgeがこのSceneの主流となっていったのだが、Gang GreenやJerry's Kidsは馴染むことは出来ずアホ丸出しで突っ走る。Gang Greenなど、とうとうHenry Rollins飲酒癖の悪さでガッツリシメられるわけだが、そういったお馬鹿で子供っぽさ全開怖いもの知らずで闇雲に爆走するところが彼らの魅力でもあったのだ。案の定、Compi盤でスカスカで扇情的な明日なき暴走をみせつけたJerry's Kidsから足を骨折し両親にダメ出し喰らったVocalのBryan JonesとギターのDave Aronsonが早々に脱退してしまう。しかし、Bryanの弟でベースのRick JonesがVocalを担当、ギターにGang GreenのChris Dohertyが加入しドラムスのBrian Betzger、ギターのBob Sensi4人組Debut Albumとなる本作を83年にBostonのLabel Xclaim!からリリースするのであった。Hoardcore界のBill WardことBrian BetzgerRollしまくりながら暴走機関車のように突っ走るドラミング激しくカッティングされる歪んだギターが爽快ですらある。Straight Edgeに馴染めず向こう見ずな暴れっぷりを繰り返しCompi盤の演奏から格段の進歩を遂げた本作でのJerry's Kidsは、開き直ったふてぶてしささえ感じさせる。Gang GreenがMetal化して失っていったものが、ここでは悪ガキどものMosh PitStagedivingと共に生き生きと当時のSceneを目の前に蘇らせるのだった

 

 『Is This My World?』はJerry's Kids83年にリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はいきなり爆走する“I Don't Belong”。ShoutするVocalと激しくかき鳴らされるギター、何より疾走感なんてもんじゃないBrian Betzgerの暴走機関車のように突き進むドラミングに圧倒される。

Cracks In The Wall / Tear It Up”も容赦なく激しいBeatを叩きこむ。ギター・ソロもイイ感じだが短く音が小さいのが残念。

イントロのギターのキメから胸騒ぐ暴走TuneCrucify Me”。

これまたギターのRiffが激カッコイイBreak The Mold”。ひたすら明日なき暴走で扇動するドラム叫びまくるVocalも爽快である。

重々しくEvilなギターのRiffがSabbathっぽくてご機嫌な“Raise The Curtain”。決してSpeedだけではなく、聴かせるバンドである。

Chris Doherty作の“Vietnam Syndrome歪みまくったギターで始まり荒々しく突っ走りまくる野郎Chorusもイイ感じ。

Build Me A Bomb”もギターのRiffが最高にカッコイイ自棄のやん八なVocalNoisyなギター・ソロも最高。

New World”はギターのRiffがやっぱりカッコイイ。これはDoherty効果か。

腹の底から絞り出すようなVocalがイイ感じの“Lost”。横ノリのギター・Riffが先導しSpeedを落としてドッシリ迫る。

No Time”もギターのRiffと、ここぞとばかりにRollをぶち込みながら暴れまくるドラミングが最高。

アルバム最後をシメるのはタイトル曲“Is This My World?”。しかし、ドラムのBrian Betzgerは疲れないんか?Vocalの精一杯振り絞ったShoutも良し。

I Don't Belong/Jerry's Kids  

(Hit-C Fiore)

 Kebnekaiseは現在も活動を続けるギタリストKenny Håkanssonが率いる70年代初頭に結成されたSwedenのRock Bnad。バンド名はSwedenで最も高い山Kebnekaiseからとられた。彼らのDebut Albaum70年代最後の2枚のアルバムKebnekajseという綴りのバンド名表記になっている。Dance Band Mecki Mark 5から発展したMecki Mark MenというPsychedelic Rock Group再編されて69年にアルバム『Running In The Summer Night』がリリースされ、71年に次作『Marathon』をリリース、未発表(後に発掘される)に終わったピアニストLars Johan Werleとの『Stonehorse』の録音が行われるとバンドは解散、Leader Mecki Bodemarkを除くバンドのメンバー全員がKebnekaiseを結成する。LeaderでギターのHåkanssonにベースのBella Linnarsson、ドラムスのPelle Ekman、そしてギタリストRolf Scherrerを加えた4人編成で『Resa Mot Okänt Mål』をSilenceから71年にリリースする。本作は73年にリリースされた2作目のアルバムで、ギターのRolf Scherrerが脱退、ベースのLinnarssonに代わりTagesのGöran LagerbergThomas Netzlerが加わり、Guinea生まれのPercussion奏者Hassan Bah、ギタリストIngemar Böcker、Violin奏者でMulti-InstrumentalistのMats Glenngård、Harmonica奏者でViolin、Multi-InstrumentalistのPelle Lindströmが加わった。前作のSweden郊外の旅をThemeにしたPsychedelicでHard Rock路線の音楽性は大幅に変わり、バンド名を思わせるような、北欧の民族音楽を大胆に取り入れたFolkyでProgressiveな作品に仕上がっている。

 

Kebnekaise II』はKebnekaise73年Silenceからリリースしたアルバム。新たに6名のメンバーが加わり、派手さこそないが、徐々に目の前に大自然が拡がっていくようなSoundscapeは圧巻である。アルバムは1曲を除き、すべてTraditionalな楽曲で占められている。

アルバム1曲目は“Rättvikarnas Gånglåt”。FiddlePercussionの響きがPastoralで心が和む。女性Singer-Songwriter Turid Lundqvist気高く清らかなVocalをFeatureした心地良さに満ちた極楽気分のOpener。

Horgalåten”は複数のギターが奏でるArabicな調べ6/8拍子にのってPsychedelicで無国籍風の香りを運び、ゆったりとして淡々とした展開ながら、ジワジワと惹きこまれていく魅力に満ちている。民族音楽をTrippyに展開する彼らの本領発揮である。

Skänklåt Från Rättvik”はTraditionalなFiddleの響きPercussionによるPriitiveなRhythmがゆったりマッタリした中で雄大な音像を描き出していく。ギターは自由奔放にImproviseされた旋律を弾き、ある意味Grateful DeadAllman Brothers的なジャンル越境のJam Sessionを思いおこさせる。

Barkbrödlåten”は心地良いCongasの響きが続く中、ギター奏者が旋律を重ね思い思いに飛躍していく。短い曲ではあるが伝統的な旋律を現代的な解釈で再構築してTripを誘う彼らの特徴が良く出ているナンバー。

アルバム最後をシメるのはアルバム唯一のOriginal曲Comanche Spring”。メンバーのギタリストIngemar Böcker作のナンバーでFiddleとギターが絡み合い疾走感に満ちたリズム隊にのって躍動していく様は、Caravanを思わせる。ここでもPercussionが果たす役割は大きくPolyrhythmicなリズム隊にのってImprovisationが展開していくところは、SantanaAllman Brothers的な味わいすら感じさせる。

◎ Rättvikarnas Gånglåt/Kebnekaise

(Hit-C Fiore)

 Iron Butterflyは大好きなMusician Mike Pineraが在籍していたバンドだ。曲も書けて歌も歌えるFloridaTampa生まれのギターを持った渡り鳥、Mike Pineraも昨年、とうとう星になってしまった。Mike Pineraといえば77年にリリースされたソロ・アルバム『Isla』のイメージが強いが、“Ride Captain Ride”のヒットで知られるBlues ImageIron Butterfly、女性ギタリストApril Lawtonで知られるRamatamCactusから発展したThe New Cactus Bandといったバンドに参加し、Alice Cooperのバンドでも活躍していた。PineraはGibson ES-335を艶っぽく鳴らしBluesyでFunkyなギターと男くさいVocalが魅力であるがComposerとしても優れた才能を持ったMusicianであった。名義上Guest参加とはいえ、Iron ButterflyにPinerraが加入した時、68年に“In-A-Gadda-Da-Vida”という大ヒットを放った時のメンバーである鍵盤奏者のDoug Ingle、ベースのLee Dorman、ドラムスのRon Bushyの3名は残っていたが、既にかつての輝きを失ったバンドの立てなおしを、もう一人の新加入のギタリストEl RhinoことLarry Reinhardtと共に担うことになったのであった。70年4月には、2人が参加する前のギタリストErikk Bran在籍時のLive Album『Live』がリリースされ、8月にはアルバム『Metamorphosis』がIron Butterfly With  Pinera &  Rhino名義でリリースされている。本作はアルバムのPrimotionとして欧州をTourした時の模様を収録したLive Albumである。新加入の2人のギタリストによってバンドは完全に別バンドのごとく勢いを取り戻し、この時期既にTalk Boxを使ってEmotionalなソロを披露するPineraは、VocalでもRhinoとのツイン・ギターでもバンドのLeaderのごろく圧倒的な存在感を発揮したのだった。また、RhinoのSlideを使ったTrippyなプレイもイイ感じで、実はこの時期こそがIron Butterflyが最も魅力的であったともいえる。

 

 『Live In Copenhagen』はIron Butterfly71年1月15日に行われたDemarkCopenhagenThe Falkoner Theaterでの演奏を収録したLive Album。

アルバム1発目はアルバム『Metamorphosis』から“Best Years Of Our Life”。いきなり唸りを上げるツインギターと男くさいPineraのVocalが最高である。ツイン・ギターに圧倒されるが、PsychedelicなOrganもイイ味を出している。

タメの効いたリズム隊にのってDoug IngleがSoulfulに歌うSoldier In Our Town”。

Funkyなリズム隊にのったご機嫌な“Stone Believer”。Ingle、そしてPineraと分け合うVocalもご機嫌だけど、中間部のChrusもバッチリ。

Easy Rider (Let The Wind Pay The Way)”もツイン・リードが炸裂しRhinoが弾くSlideがWildに鳴り響く。短いながらもEndngでのPineraとRhinoのソロの掛け合いも良し。

23分越えの大曲“Butterfly Bleu”。Organが鳴り響き、Psychedelicに彩られたサウンドにTripさせられてしまう。途中からShuffleに展開し、ツイン・ギターが幻想的な空間を生みだしていく。Sllideを駆使したRhinoのTrippyなギター・ソロから勢いのあるBoogie、そして再びRhinoのソロ、PineraのTalk Boxソロへと続いていく様は圧巻である。

そして必殺の“In-A-Gadda-Da-Vida”が登場。お馴染みのRiffにOrganが極採色のPsychedelicな世界を生みだし、PineraのRhythmicalでBluesyなギター・ソロ、お約束、Ron Bushyのドラム・ソロOrganソロへと続く。

最後をシメるのは、なんとYesのメンバーとの“Goodbye Jam”。

Easy Rider (Let The Wind Pay The Way)/Iron Butterfly

(Hit-C Fiore)

 Jody GrindTim HinkleyBernie Hollandという自分が贔屓にしているMusicianが在籍していた英国のバンド。Tim Hinkleyという英国の鍵盤奏者は自分の大好きなバンドやMusicianのアルバムで度々登場していて、その鍵盤さばきが結構気に入っている存在であった。中でもお気に入りのR&B色の強いModなバンドBo Street Runnersを追いかけていくと、Mick FleetwoodMike Patto、Ifを結成するDave QuincyといったMusicianと共にHinkleyの名前を目にする。Hinkleyは大好きなGraham Bell72年にリリースされた1st Solo Album、Alvin Lee & Mylon Le Fevreの『On The Road To Freedom』やChapman-WhitneyStreetwalkersSnafuの『All Funked Up』、Henry McCulloughの『Mind Your Own Business!』、Boxer76年にRecordingされていながらお蔵入りになって79年にリリースされた『Bloodletting』にも参加しているのだった。Hinkleyは60年代初頭からYouth Club Bandで演奏活動を始め、Davy Jones(後のDavid Bowie)のバンドThe Konradsへの加入も断るくらい売れっ子Musicinになっていた。Mike PattoChicago Line Blues Bandを結成するもRecording契約を獲得できず、消滅。そして65年にTime Boxでギターを弾いていたIvan Zagni、DrummerのBarry Wilsonと結成したのがHammond Organ TrioのJody Grindである。69年Transatlantic Recordsから1st Album『One Step On』をリリースする。本作はドラムスがHinkleyとAl Stewartの70年作『Zero She Flies』で一緒にやっていたPete Gavin、ギターがBernie Hollandに交代している。このTrioがJazzやClassicalな要素もとり入れながら展開していくHard Rockは、時代を考えると相当にレベルが高い演奏と楽曲に仕上がっている。隠れた名盤である。Hollandは後Hummingbirdを結成し2枚のアルバムに参加しLinda Lewisの作品でも彼らの素晴らしい演奏を聴くことができる。

 

 『Far Canal』はJody Grindが70年Transatlantic Recordsからリリースしたアルバム。残念ながら彼らの最後のアルバムとなってしまった。

アルバム1曲目は“We've Had It”。Bernie Hollandが奏でるClassicalなAcoustic Guitarが素晴らしい。GentleなVocalもイイ感じ。泣きの入ったギター・ソロも登場して徐々に盛り上がっていく。

BluesyかつEvilなギターのRiffで始まる“Bath Sister”。Hollandの唸りを上げるギター・ソロがキマっているBlues Rock

Jump Bed Jed”はイントロのギターのカッティングから激カッコイイお気に入りの曲。Hammondも最高だが、ここでもHollandのギター・ソロが素晴らしい。後半のHammondソロ、ギターとの掛け合いもご機嫌である。Endingのこれでもかの弾き倒しのギター・ソロは圧巻。

O Paradiso”はPercussionが鳴り響きBluesyなギターのRiffが炸裂すると、Hammondが唸りを上げ、る大好きなインスト曲。

Plastic Shit”はLed ZeppelinもビックリのHardなHard Rock。これまた最高。リズム隊もガッツリ引き締まって実にカッコイイ。

Vegetable Oblivion”もHollandのギターとHunkleyのHammondeが熱い掛け合いで盛り上がっていくインスト曲

BluesyなギターのRiffHammondから始まり、これまたギターとHammondが自由奔放、思う存分に暴れまくるインスト曲Red Worms & Lice”。それにしてもBernie Hollandも過小評価されまくっているギタリストである。

アルバム最後をシメるのは“Ballad For Bridget”。これまた優美なピアノがご機嫌なJazz Waltzで、本当に器用な連中である。Hollandのギター・ソロも素晴らしい。

(Hit-C Fiore)

 Barre Phillipsは昨年12月28日にNew Mexico州のLas Crucesで90歳の人生の幕を閉じた。それにしても、このEuropean Improvisation Centerを設立した偉大なるContrabassの巨人は、未来へと繋がっていく自由に時間と空間を行き来する静謐にして豊穣な音世界半世紀以上も前から世に出していたのだ。それは、ありとあらゆるFormatで、Solo(多重録音Soloを含む)であろうとDuoであろうと、ComboであろうとOrchestraとの共演であろうと、常に一貫して響きやEnsembleを冷静に俯瞰し、時間と空間の中で生み出されていく音世界を自由に操っているように感じられる。それはFree Jazzとか、Improvisationといった言葉が、もはや意味を持たなくなるような、ジャンルや主張といったものとは縁遠い、孤高の自己探求と創造意欲に満ちた旅の物語がずっと続いてきたようなものを感じさせる。また、それは自己鍛錬を続けてきた圧倒的な演奏技術を持っていたからこそ続けられてきた物語なのだ。BarreはCalifornia州San Franciscoに生まれ、Classical Musicを学びSan Francisco SymphonyのAssistant Principal BassistであるS. Charles Sianiに短期間師事した。50年代末に出会ったOrnette Colemanの影響で62年にNYに移り、SpainでPablo CasalsのWorkshopに参加して米国に戻るとNew York Philharmonic出身でCharles Mingusを教えたFrederick Zimmermannにも学んだ。Gunther Schullerを通じてEric Dolphyに出会い、Don Ellisに影響を受け作曲するようになると、Archie SheppGeorge RussellJimmy Giuffreらと共演したBarreは67年に渡欧し、思いつきから始まり教会で68年に録音された最初のFree Solo BassのアルバムJournal Violone』が翌年リリースされている。そしてBerlinのJazz Clubで演奏するBassistのManfred Eicherと出会うのであった。Dave HollandとThe Trioの『Conflagration』を録音中にEicherと再会してECMからHollandとの『Music From Two Basses』がリリースされたのは71年の事であった。

 

 『Mountainscapes』はBarre PhillipsECMから76年にリリースしたアルバム。BarreとドラムスとSynthesizerのStu MartinとSoprano/Baritone Sax、Bass ClarinetとSynthesizerを演奏するJohn SurmanというThe TroのメンツにDieter FeichtnerのSynthesizer、1曲のみギターのJohn Abercrombieが参加している。

アルバムは神妙なBarre PhillipsArco独奏から始まる“Mountainscape I”で幕を開ける。BarreとStu Martinによるスリリングなリズム隊にDieter Feichtnerが弾く妖しげなSynthesizerをバックにJohn SurmanのSaxが暴れまくる。

Syntheをバックにした多重録音された幽玄なJohn SurmanのSaxが印象的な“Mountainscape II”は3分足らずで終わってしまう。もっと聴きたいが、このバランスがBarreらしい。

Mountainscape III”はSynthesizerをバックに呻き、静かに叫ぶようなBarreのArcoが神秘的な世界を描き出している。

Mountainscape IV”はSurmanのSaxがゆったりとした中にどこか哀感を感じさせる欧州的な旋律を吹く中、Barreのベースがドッシリ支える。

SpacyでMinimalなSynthesizerが鳴り響く中、Barreのベースが蠢き、SurmanのSaxが炸裂する“Mountainscape V”。

Mountainscape VI”はFeichtnerが弾く妖しげなSynthesizer浮遊感に満ちながら、BarreのArcoと夢の中を歩いていくような謎めいた音世界を描き出していく。

SequencialなSynthesizerBass Clarinetの牧歌的な音と鮮やかなContrastを成す“Mountainscape VII”。

アルバム最後をシメるのはBarreのFreeなソロで始まり青白い炎を燃やすリズム隊をバックにJohn Abercrombieが弾き倒すMountainscape VIII”.。

(Hit-C Fiore)