男くさいRockが聴きたい。そんな時はギターを持った渡り鳥、曲も書けて歌も歌える凄腕ギタリストであるMike Pineraが参加したアルバムの登場だ。Pineraが参加したIron Butterflyはどうだろうか。本作は正確にはIron Butterfly With Pinera & RhinoとCreditされている。69年にアルバム『Ball』をリリース後、ギタリストErik Brannが脱退したIron ButterflyはBlues ImageのMike Pineraと後にCaptain Beyondに参加するEl RhinoことLarry "Rhino" Reinhardtという2人のギタリストを迎えて本作を録音する。Iron Butterflyは68年のヒット曲“In-A-Gadda-Da-Vida”で知られるようなHeavyでPsychedelicなOrganとギターの演奏を前面に出したバンドというイメージがあるけれど、Organを弾きLead Vocalも担当するDoug Ingleの声は男くさく、BluesyでR&BでSoulなフィーリングを持つPineraの音楽性にもピッタリではある。それに加えてPineraとRhinoのツイン・ギターなわけで、そうなればギターが前面に出てきてガンガン攻めまくりと想像してしまう。ところがアルバムは直球一本勝負の男気Rockではなく、一筋縄ではいかない、ある種冒険心に満ちた作品を目指したようである。One-Hit-Wonderから抜け出そうとしたIron Butterflyの意欲作といえるかもしれない。またTalk BoxをRockの世界で最初に使ったのはAlvin LeeのTen Years Afterが70年にリリースしたアルバム『Watt』に収録された“I Say Yeah”かと思っていたら、こちらのMike Pineraによる大曲“Butterfly Bleu”の方が早かったようである。Pineraはアルバム9曲中、4曲のSongwritingにかかわっている。この果敢な実験作は商業的な成功を得ることはできなかったが充実した力作である。
『Metamorphosis』は70年にリリースされたIron Butterfly With Pinera & Rhinoのアルバム。
アルバム1発目は鐘の音をバックにギターが哀し気な旋律を弾く“Free Flight”。40秒で終わってしまう。
BluesyなギターのRiffがカッコイイ“New Day”は男気溢れるRock。SoulfulなVocalもイイ感じだし、ツイン・ギターのソロもグッときますな。
“Shady Lady”はIngle作の粘り腰のFunky Rock.。Clavinetを使ったりしているがスタイルはチョイと古くさい。
“Best Years Of Our Life”はPineraがLead Vocalをとっている。リズム・パターンも凝っていて、これは激カッコイイっす。Hammondとギターの鳴らし方もご機嫌。ツイン・ギターのRiffなんか聴くとたまらんものがあるっす。大サビもPineraらしいセンスが感じられる。
優美なArpeggioがなどAcoustic GuitarのEnsembleが極楽気分の“Slower Than Guns”。ここでもSitarなどを使って一筋縄ではいかないところが面白い。
Blues Rock“Stone Believer”。後半のChorusだけになるところが鳥肌モノ。
IngleのSoulfulなVocalが冴えるBluesyな“Soldier In Our Town”。
“Easy Rider (Let The Wind Pay The Way)”は気合の入ったSlideが炸裂する爽快なナンバー。
アルバム最後をシメるのは14分越えの長尺曲“Butterfly Bleu”。上述のTalk Boxを使ったプレイは、最初何やら念仏みたいな始まり方で何じゃコリャといった感じだが、しばらく我慢するとPineraのFunkyな音使いを楽しめる。
◎Butterfly Bleu/Iron Butterfly
(Hit-C Fiore)